FF7 Rebirthを2月末から始めたが、God of Warの物語やHorizon Forbidden Westの武器や防具の強化と並行して、軽くのんびり楽しんでいるのに加え、ファンタジー小説の"チャリオンの影"(文庫本)と"魔術師ペンリックの仮面祭"(Kindle本)が予想以上に面白いこともあって、実はあまり進んでいない。

ブログと異なり暇つぶしのネタが多すぎて、どれを選択するか困り、あれもこれもと欲張るうちに夜更かし癖がつく、という有様だ。

それでもここまでRebirthを遊んだ状況から判明したことを書くと、前作のRemakeの最後でも登場したが、ザックスが登場する世界と登場しない世界の二つの世界が重なり合っているようで、それが今後のエアリスの生死にも影響しそうな気がする。Rebirthは三部作の二作目で、三作目の結末でこの二つの世界が融合されるのかもしれない。

上記のファンタジー小説について言えば、確かに影や魔や神や聖者といった超自然的な存在も出てくるが、それら自体が売りではなく、その状況に於ける様々な登場人物のリアルな描写と存在感が見事で、それが読者を惹きつける。

結局、SFやファンタジーやロールプレイングゲームというのは表現手段でしかなく、それらの手段の中で人間の内面を如何に表現するかが重要なのであろう。

"チャリオンの影"は、五神教シリーズの最初の本として、その独特な世界観や神や人や死や信仰の記述自体が興味深い。宗教全般に通じる概念では、神は人には理解不能な神自身の目的達成の為に巧妙に人々を利用するとか、独自の判断基準を用いて愛すべき者とそうでない者を選ぶとか。人間が家畜を使役したりペットを可愛がったりするのと類似した概念なのだろう。勿論、神が何をしたいのか人間にはわかるはずもないので、考えるだけ無駄なのだが。

なお上記の二冊は既に読み終わり、"影の棲む城"と"香君"に移っている。


さて今回の本題は、ホログラフィー原理を取り上げる。

1990年代前半に登場した原理であり日経サイエンスでも何度も取り上げられている。最近の記事では以下がよくまとまった内容と言えるだろう。

2023年11月号 ホログラフィック宇宙 時空の本質に迫った四半世紀

なお今回から実際の英語の論文も掲載することにしよう。その方が誰がどんな貢献をしたかがよくわかる。登場する学者は著名人なので敬称は省略、人名も英語表記のままとする。この中には故人も多いが、大半が現役で活躍している。

ホログラフィー原理の発端となったのは、以下の二つの論文。

gr-qc/9310026 Dimensional reduction in quantum gravity  G. 't Hooft

hep-th/9409089 The world as a hologram  Leonard Susskind

gr-qcとhep-thは研究分野の略称。

gr-qc → General Relativity and Quantum Cosmology (一般相対論と量子宇宙論)
hep-th → High Energy Physics - Theory (高エネルギー物理の理論)

gr-qc/9310026は、その分野で1993年10月に登録された026番目の論文を意味する。
hep-th/9409089も、やはりその分野で1994年9月に登録された089番目の論文。

https://arxiv.org/ サイトからPDFファイル形式で誰でもダウンロード可能。

勿論、論文自体は難解なので、私の言葉を使い、曖昧で不完全な表現になることを承知の上で説明しよう。

前回の記事で、ブラックホール内部に含まれる情報は全て事象の地平面に存在する、という発想を紹介した。ブラックホールの内部が3次元空間で事象の地平面が2次元平面であって、事象の地平面はブラックホールの境界に相当する。情報量としては3次元空間内部と2次元境界が同等となる。逆に見れば2次元境界の情報が3次元空間に投影されているホログラフィーに該当すると考えて、2次元境界の方が本質的存在で3次元空間が従属的な存在と考える。これをホログラフィー原理と呼ぶ。

次のブレークスルーは超弦理論の研究分野からもたらされた。ただこの私的な物理ネタの記事ではこれまで弦理論や超弦理論に全く触れなかったので、ここで詳しく説明しておこう。勿論、曖昧で不完全、私の誤った理解も含まれるだろうが、関連する論文も記載するので、正確な内容が必要なら原論文を参照されたい。


私が物理学専攻の学部学生だった1970年代後半、大学生協の本屋で一冊の専門書を購入した。後藤鉄男著の"広がりをもつ素粒子像"、岩波の物理学選書で1978年9月6日発行の第1刷。その第5章 紐の模型(string model)はおそらく日本語で書かれた最も古い弦理論の専門書ではなかろうか。ざっとページをめくって見ても、南部-後藤の作用やPolyakovの作用、Virasoro代数、Ramond模型、Neveu-Schwarz模型等が掲載されているようだ。参考文献欄にはM.KakuやK.Kikkawaの名前も見える。

弦理論は一本の弦の振動状態により様々な素粒子が生成されるという理論で、後藤の本ではゴムひものような開いた弦を考え、弦の太さは無視する。弦の作用を量子化する際に作用が持っていたローレンツ共変性が失われる状況が発生し、この状況をアノマリー(anomaly)と呼ぶ。そしてアノマリーを解消する為には26次元時空が必要になる。開いた弦はボゾン弦とも呼ばれて、その振動からはスピンが整数のボゾンしか生成されない。

その後、輪ゴムのような形の閉じた弦が導入され、さらにボゾンとスピンが半整数のフェルミオンを入れ替える対称性である超対称性が加わった弦理論を超弦理論と呼ぶ。超弦理論でアノマリーの解消を計算すると時空は10次元になる。閉じた弦はスピンが2で重力を量子化する際に生成されるボゾンである重力子に該当。超対称性によって超弦理論の仮想粒子の効果は摂動論的にゼロになることが示され、発散のない量子重力理論の候補として1980年代にブームを巻き起こした。


次に輪ゴムのような閉じた弦が円筒に巻きついた状態を考える。円筒の円周をRとし、円筒を細くしてRを1/Rに変化させる。輪ゴムのような閉じた弦には張力があるので、1/Rの円筒でも閉じた弦を何重にも巻いて円筒に巻きつけることが可能だ。つまり空間がR→1/Rでも弦の状態は不変で、これをT双対性(T-duality)と呼ぶ。

以下の論文が余剰次元のコンパクト化とT双対性のレビュー。

hep-th/9108022 Superstring Compactification and Target Space Duality
    John H. Schwarz

電磁場の弱結合と強結合に関する双対性であるS双対性も以下の論文で提唱された。

hep-th/9407087 Electric-magnetic duality, monopole condensation, and
  confinement in N=2 supersymmetric Yang-Mills theory
    Nathan Seiberg and Edward Witten

WittenはT双対性とS双対性等を用いて、1980年代に知られていた5種類の超弦理論(Ⅰ,ⅡA,ⅡB,E8xE8ヘテロティック,SO(32)ヘテロティック)と11次元超重力理論を一つに統一した。それが以下の論文。統一された理論をM理論と呼ぶ。

hep-th/9503124 String theory dynamics in various dimensions  Edward Witten

また以前から1次元の弦より次元の多い2次元や3次元あるいはそれ以上の空間的な広がりを持つブレーン(brane)という物体が研究対象になっていたが、多数の開いた弦の両端がブレーンにくっついた形のDブレーン(D-brane)が発見された。

DはDirichlet境界条件のDで、Dブレーンにくっついた弦の両端は振動しないという意味。以下がその論文。

hep-th/9510017 Dirichlet-branes and Ramond-Ramond charges  Joseph Polchinski

開いた弦の片方の端だけがDブレーンにくっついた状態を考えて、端は振動しないけれども自由に移動できると想定し、端が円を描いて一周すると開いた弦の軌跡は円筒を描く。この円筒はDブレーンから閉じた弦が放射されている状態と解釈可能で、閉じた弦は重力子だから、Dブレーンはブラックホールとも考えられ、これをブラックブレーンと呼ぶ。

さらにDブレーン上にくっついた開いた弦の状態数を数えることで、前回の記事で触れたブラックホールのエントロピーのベッケンシュタイン・ホーキングの公式(Bekenstein Hawking formula:S=A/4G)が再現できた。以下がその論文。

hep-th/9601029 Microscopic origin of the Bekenstein-Hawking Entropy
    Andrew Strominger and Cumrun Vafa

M理論をさらに12次元時空のF理論に拡張すべきだという論文もあった。

hep-th/9602022 Evidence for F-theory  Cumrun Vafa

M理論は点である0ブレーンが無数に集まったものから構成された集合体として表現可能で、その挙動は非可換な行列で表現されることを以下の論文が主張した。これをM理論の行列模型という。

hep-th/9610043 M theory as a matrix model: a conjecture
    T. Banks, W. Fischler, S. H. Shenker and L. Susskind

この行列模型はConnesの非可換幾何学と同等であると以下で示された。

hep-th/9711162 Noncommutative geometry and Matrix theory: compactification
    on tori  Alain Connes, Michael R. Douglas and Albert Schwarz


次がいよいよホログラフィー原理に関連した超弦理論のブレークスルーで、4次元時空のCFT(conformal field theory:共形場)とそのCFTを境界に持つ5次元時空のAdS(Anti de-Sitter:反ド・ジッター計量場)が等しいという論文が出た。

hep-th/9711200 The large N limit of superconformal field theories and 
  supergravity  Juan Maldacena

CFT場は形は保存されるが距離が定義されない共形場を意味し重力もない。AdS場は2次元平面で表現すれば馬の鞍のような曲率が負(つまり三角形の内角の和が180度より小さい)の5次元時空を意味する。CFT場が4次元時空の我々の宇宙でありその素粒子の相互作用が、我々の宇宙を境界とする5次元時空のAdS場の重力作用と等価であるという主張だ。加えてCFT場の弱結合の素粒子の作用がAdS場の強い重力作用に該当し、CFT場の強結合の素粒子の作用がAdS場の弱い重力作用に該当するとされる。

結合の強弱と重力作用の関係について、一般大衆への解説ではそのメカニズムまでは説明されないので、私個人の視点から直感的な説明を試みよう。

簡略化する為にCFT場が2次元空間でAdS場がCFT場を境界とする3次元空間と考える。

CFT場がDブレーンだと考えてDブレーン上にくっついた弦の振動を素粒子と考える。素粒子の強結合の相互作用はDブレーン上の複数の弦の切り貼りや組み換えの変形現象が頻繁に発生している状況だと言える。そのような状況ではDブレーンからその外部つまりAdS場方向への弦が伸びる現象つまり重力子の発生がまれにしか発生しない、つまり弱い重力しか働かないと想定される。逆に素粒子の弱結合の相互作用ではDブレーン上の複数の弦の切り貼りや組み換えの変形現象がまれにしか発生しない状況で、Dブレーンから外部のAdS場方向への弦が伸びる現象である重力子の発生が頻繁に起こり、強い重力が働くと考える。

このAdS/CFT対応(AdS/CFT correspondence)を用いて実際に素粒子の強結合の相互作用がAdS場の弱い重力作用として近似計算できるようになった。具定例では加速器実験で発生するクォークグルーオンプラズマの粘性率が水に近い値であることをAdS/CFT対応で計算した実績が有名。

ホログラフィー原理はAdS/CFT対応により計算に使えるまでに進歩したと言える。


M理論とDブレーンとAdS/CFT対応の発見を契機として1990年代には超弦理論の第2次ブームが発生した。

宇宙全体を一つのブレーンだと想定して、我々の宇宙の様々な現象を説明しようという理論も流行となり、これをブレーン宇宙論という。詳細は省くがブレーン宇宙論の論文を2つ紹介する。

hep-ph/9905221 A large mass hirerachy from a small extra dimesion
    Lisa Randall and Raman Sundrum
hep-phのphはPhenomenology(現象論)の意味。

hep-th/0103239 The ekpyrotic universes: colliding branes and the origin of
    the hot big bang
        Justin Khoury, Burt A. Ovrut, Paul J. Steinhardt and Neil Turok

また超弦理論とペンローズのツイスター理論を統合しようという試みもあった。

hep-th/0312171 Perturbative gauge theory as a string theory in twister
    space  Edward Witten


天文学における超新星爆発の観測から宇宙にはアインシュタイン方程式の宇宙項に該当するゼロではない微小な値の真空のエネルギーが存在することが証明された。つまり宇宙は数十億年前から加速膨張していたことになる。そしてこの真空のエネルギーを説明する為に様々な理論が登場した。超弦理論からは以下の二つ。

hep-th/0302219 The anthropic landscape of the string theory  L. Susskind

hep-th/0509212 The String Landscape and the Swampland  Cumrun Vafa

超弦理論では10次元時空のうち余剰次元の6次元空間をカラビ-ヤウ空間やオービフォールド等にコンパクト化するが、その余剰空間を磁束のようなフラックス(flux)で縛ることによって、様々な値の真空のエネルギーが実現可能で、その数は膨大になる。つまり膨大な数の真空のエネルギー値を持つ宇宙が発生可能だが、我々のような知的生物が生存できるような安定した宇宙は真空のエネルギーが微小な値を持つ宇宙に限られるという発想であり、一種の人間原理と言える。

その真空のエネルギーの値の分布は山や谷のような風景として表現可能で、それがlandscapeという名前の由来。swampland(沼地)ではさらに真空のエネルギーの値が時間の経過とともに減少する場合もあり得るとする。


なお重力や時空の量子化には超弦理論の他にもいくつか候補がある。以下に列挙。

非可換時空
hep-th/9405107 Bicrossproduct structure of κ-Poincare group and 
    non-commutative geometry  Shahn Majid and Henri Ruegg

ループ量子重力
hep-th/0408048 An invitation to loop quantum gravity  Lee Smolin

Causal Dynamical Triangulations
hep-th/0604212 Quantum Gravity, or The Art of Building Spacetime
    J. Ambjorn, J. Jurkiewicz and R. Loll


次のホログラフィー原理の進歩は量子もつれに関連している。AdS/CFT対応を量子もつれエントロピーに応用するとCFT場から盛り上がった曲面の面積が量子もつれエントロピーに比例することが判明した。これをRT公式(Ryu-Takayanagi Formula)という。以下がその論文。

hep-th/0603001 Holographic Derivation of Entanglement Entropy from AdS/CFT
    Shinsei Ryu and Tadashi Takayanagi

Shinsei Ryu(笠真生)とTadashi Takayanagi(高柳匡)は日本人。

この曲面の面積もDブレーン上の量子もつれ状態の弦の切り貼りや組み換えの複雑な変形現象の結果と考えれば納得がいく。

RT公式の盛り上がった曲面はブラックホールの極小曲面に該当することが、以下の論文で示された。

hep-th/1408.3203 Quantum Extremal Surfaces: Holographic Entanglement 
    Entropy beyond the Classical Regime
        Netta Engelhardt and Aron C. Wall

おそらくAdS/CFT対応もRT公式もブラックホールや時空の動力学に関係しているのだろう。


ここから、空想に過ぎないが、私の考えを述べる。

前回の記事で触れたER=EPR仮説を利用すると、量子もつれはミクロなワームホールで表現されるので、量子もつれエントロピーはミクロワームホールの本数及びその集団の表面積に比例すると考えるのが自然な発想。つまりER=EPR仮説を利用するとAdS/CFTの数式から直接計算するよりも遥かに簡単に直感的にRT公式が導出できる。

さらにDブレーンに両端を持つ開いた弦はその両端を円を描くように移動させると、Dブレーンに曲がったチューブを接着した形になって、Dブレーン上に生じたワームホールと解釈できる。これは弦とワームホールが置き換え可能であることを意味していると考えられ、これを弦とワームホールのSW双対性(string wormhole duality:SW-duality)と名付けよう。

素粒子を弦の振動と考える弦理論の発想よりも、素粒子をミクロなブラックホールと想定し、弦を素粒子の量子もつれを実現するミクロなワームホールと考える方が、我々の宇宙により適合した発想なのではないか、と私は考えている

ミクロなブラックホールが素粒子の対称性空間U(1)xSU(2)xSU(3)の内部で回転することにより様々な素粒子の安定した荷量や特性を実現し、その回転自体がスピンを実現すると想定するのだ。

このミクロなブラックホールは0ブレーンに該当して、より次元の高い1ブレーンの弦が0ブレーンの量子もつれを実現すると考えれば、M理論の行列模型や非可換幾何学がそのまま利用可能で、さらに量子もつれも内包できる状態になる。

量子もつれ状態の0ブレーンは弦に相当する1ブレーンが両端にくっついているのでDブレーンであり、ブラックブレーン(ミクロなブラックホール)でもある。つまり、

素粒子=0ブレーン=Dブレーン=ブラックブレーン(ミクロブラックホール)

開いた弦=1ブレーン=ワームホール=量子もつれ=閉じた弦(重力子)

と言える。

M理論の行列模型の0ブレーンの集合が3次元時空(時間と2次元平面空間)と素粒子の両方を表現してこれを一つのブレーン宇宙と考える。ブレーン宇宙の内部には余剰次元としての素粒子の対称性空間U(1)xSU(2)xSU(3)があり、素粒子である0ブレーンはその中で自転しスピンを持つ。自転する0ブレーン以外の0ブレーンつまり回転していない0ブレーンは真空を意味し2次元平面の構成単位とする。さらに1ブレーンである開いた弦が量子もつれとして0ブレーンの集合の3次元時空に無数に張り巡らされている。開いた弦は2つの素粒子を端点に持ちその端点が円を描いて移動することにより2つの素粒子の間で閉じた弦つまり重力子が交換される

つまり弦は量子もつれと重力の両方を実現する。さらに2次元平面と時間の3次元時空がホログラフィー原理によりそれを境界として持つ4次元時空に拡張される。

このモデルでは素粒子の対称性を余剰次元空間によると考えたが、素粒子を弦(1ブレーン)の振動ではなく粒子(0ブレーン)の回転と捉えたので、弦の作用の量子化の際にアノマリーを消す為に要求される26次元や10次元の余剰次元は不要となるはず(ただ閉じた弦をスピン2の重力子とする点は不明)。だから素粒子の対称性を余剰次元以外に求めることが可能で、ファイバー束や他の数学的実体を持ち出すことも面白い。

このように宇宙は0ブレーンと1ブレーンとホログラフィー原理で構築されている。

ミクロなブラックホールである素粒子の光子が反粒子の光子(粒子の光子と同等)と反応してエネルギーに変わるという相互作用が、実際にマクロ(巨大)なブラックホールの内部で発生している。素粒子の相互作用とはミクロなブラックホール同志の反応で、巨大ブラックホールの蒸発での素粒子の1回ごとの反応に対応する。

光子と電子の相互作用ではミクロブラックホールの光子がミクロブラックホールの電子に吸収されたり電子から放出されたりする。放出される場合はミクロブラックホールが分裂すると考えることが出来るが、ミクロブラックホールの電子を巨大なブラックホールと入れ替えると、事象の地平面を通して光子が巨大ブラックホールに吸収されたり、巨大ブラックホールから事象の地平面を通してホーキング放射である光子が放出されたりと、ミクロブラックホールの電子と巨大ブラックホールは全く同じ作用を行っている。

光子やレプトンやクォークは、素粒子としての0ブレーンの近傍に事象の地平面を持つミクロなブラックホールと捉えることが出来る。

ミクロなブラックホールが巨大なブラックホールと違う点は、合体だけでなく分裂が起きる点だが、巨大ブラックホールもそれ自体の重力より強力な重力を加えると時空の動力学として分裂するはずであり、本質的な違いはない。

真空中で安定な素粒子=光子と第1世代のレプトン(電子と電子ニュートリノ)及びクォーク(アップクォークとダウンクォーク)は、そのエネルギーが比較的少ないにも拘わらず何故ブラックホールなのだろう。その理由は、狭い場所にエネルギーが局在しているから。私は光子と電子ニュートリノの半径が1プランク長程度で電子の半径が2プランク長程度、アップクォークとダウンクォークの半径が3プランク長程度だと考えている。やはり素粒子は弦の振動ではなく粒子(球)の回転なのだ。

なお素粒子のスピン1は1回転すれば元に戻り、スピン1/2は2回転すれば元に戻り、スピン2は1/2回転すれば元に戻るので、かなり複雑な機能を実現している回転だと言える。

素粒子の質量はヒッグス粒子との相互作用が原因で慣性質量を意味する。慣性とはヒッグス粒子との相互作用つまりヒッグス粒子の抵抗から生まれる

上記のER=EPR仮説を用いたRT公式の簡単な導出法とSW双対性、素粒子=0ブレーン=ブラックホール等は、私個人のアイデアから出てきたものだが、もう既に何年も前にどれかの論文で明確に表現されているかもしれない。arxiv.org サイトに登録される論文の数は膨大で少数の論文しか目を通せないので仕方ない


前回の記事で取り上げたファイアウォール仮説、ER=EPR仮説、アイランド仮説を導く為のレプリカ法の論文も掲載しておこう。

hep-th/1207.3123 Black Holes: Complementarity or Firewalls?
    Ahmed Almheiri, Donald Marolf, Joseph Polchinski and James Sully

hep-th/1306.0533 Cool horizons for entangled black holes
    Juan Maldacena and Leonard Susskind

hep-th/1911.12333 Replica Wormholes and the Entropy of Hawking Radiation
    Ahmed Almheiri, Thomas Hartman, Juan Maldacena, Edgar Shaghoulian and 
    Amirhossein Tajdini


さて今回の記事には様々な学者の名前が登場した。多かったのは、以下の名前。

Leonard Susskind … 4回
Edward Witten    … 3回
Cumrun Vafa      … 3回
Juan Maldacena   … 3回

Susskindは配管工の家に生まれ、配管技術を学ぶ為に工学部に入学したが、物理学に魅了され、以来、理論物理学者として素晴らしい業績を残していることは有名。

私はパスして取り上げなかったが、Wittenは超弦理論に関連した難解で高度な数学に関する論文を数多く書いている。それらを考慮すると理論物理学の分野で参照すべき論文の数が最も多いのはWittenであろう。Wittenの両親も理論物理学者で世界最高の頭脳を持つ人とも実は宇宙人だとも言われる。

このうちVafaは私の匿名ナーヴァファの元になった名前だ。勿論、そのまま使う気はなかったので、インド風の名前のナー(na)を付けてnavafaにした。Vafaはイラン出身でインド+イランのあり得ない名前が出来上がったというわけ

なおMaldacenaは南米出身で、優秀な頭脳は世界各地で生まれるものだ、と納得させられる。