謹賀新年。今年もよろしくお願いします。

まず最初に雑談を。

元旦から地震か、今年も先行きが思いやられる。

昨夜、たまたまTVをつけると、紅白歌合戦をやっていた。それを眺めて感じたことを簡単に。私は地上波のバラエティー番組や歌番組を殆ど見ないから、最近の歌や歌手を全く知らない。そのせいか、最近の歌はリズムは優れているが、印象に残る歌詞やメロディーは全くないと感じた。歌が続いている間は心地いいが、終わって5分か10分たつと全て忘れている。私が学生だった頃には、印象的な歌詞やメロディーを持つ歌が多く、今でも記憶に残っている。ただ単に私が年寄りで若者の感性が理解出来ないだけかもしれないが、最近のリズムだけ優れている歌が10年後20年後にも大衆の記憶に残っているとは思えない。あるいは、逆にそれが真の目的で、リズムに優れているがすぐ忘れる歌を次々に発売して購入してもらい、全体としての売上が伸びればいい、というビジネスモデルなのだろう。つまり歌を大量生産し大量消費する歌の使い捨て時代だとも言える。

先月、自宅に入居以来23年間そのままだったCATVを更新し、セットトップボックス(STB、HDD内臓ではなかったので録画用に6TB USB HDDを購入し接続)を置き換えた。それでネット経由のストリームが視聴可能になったのはいいが、CATVの視聴可能なチャンネルが10個減って、FOXが見れなくなった。そこで以前と同じチャンネル数となるような契約に戻して、ストリーム(J:COM STREAM)は別途契約した。その契約により月千円近く料金が高くなったが、STAR TREKの新作Strange New Worldsや三体(Three-Body、原作はThree Body Problem)が楽しめている。

前回の記事で紹介したSF小説"三体"が中国でTVドラマ化されたらしく、今回私も初めて知った。まあ普通のTVドラマだが、その原作や続編や遥かな未来を含む補完版を含め既に全冊読んでいるので、改めてTVドラマとして見ると新鮮に感じる。その意味ではGame of Thrones(略してGoT)やHouse of the Dragonと同じパターンだ。ただGoTはTVドラマが先に終わり原作はまだ未完のはずで、TVドラマの続編の形式でもいいから続きを読みたい。

GoTの原作者はジョージ・R・R・マーティンで短編集としては"サンドキングズ"等のSFも書いている。私もそうだが、SFやファンタジーの物語シリーズつまりサガが好きな人には、ロイス・マクマスター・ビジョルドもオススメ。ヴォルコシガンやペンリックのシリーズが面白い。まだ未読で今後読みたい本も多い。ざっと書名を調べるにはamazonのサイトで著者名の検索をすればいい。既に廃刊になっている本が大半なので、電子版でダウンロード可能なKindle本があればそれを購入。勿論、スマホにKindleアプリをインストールする必要がある。

参考までに書くと、GoTの原作の最初の本は"七王国の玉座"で、ヴォルコシガン・シリーズの最初の本は"戦士志願"。ペンリックの最初の本は"魔術師ペンリック"。この三冊は全てKindle版で購入可能。"戦士志願"の代わりにこのシリーズの主人公のマイルズが生まれる前の母親コーデリアの活躍を描いた"名誉のかけら"と"バラヤー内乱"をこの順番で読むのもいい。この親子は魅力的な人物に仕上がっている。私は昔読んだが、この二冊は廃刊状態でKindle化もまだのはず。

正確を期すと"名誉…"のコーデリアは独身で"…内乱"の中で結婚しマイルズの出産直前に内乱に巻き込まれる。

私は文章をじっくり味わって読む方で読書のスピードが遅い。今は"三体"と同じ著者の"三体0 球状閃電"を読んでいるが、次は"魔術師ペンリックの仮面祭"の予定。""三体0…"は同じ名前の物理学者が登場する以外は"三体"との物語上の関連はなさそう。

ちなみに"三体"の著者の劉慈欣はアジア圏初のヒューゴー賞を"三体"で受賞した。

なおマーティンは"サンドキングズ"でヒューゴー・ネビュラ両賞受賞。ビジョルドはペンリック三部作を含む五神教シリーズでヒューゴー賞受賞。ヴォルコシガン・シリーズの"ヴォル・ゲーム"、"バラヤー内乱"、"ミラー・ダンス"でヒューゴー賞、このシリーズ全体でもヒューゴー賞受賞。"自由軌道"でネビュラ賞受賞。ヴォルコシガン・シリーズの短編"喪の山"でもヒューゴー・ネビュラ両賞を受賞している。

ヒューゴー賞は全米の読者の人気投票でネビュラ賞は作家協会での投票なので、他国の作家の場合、"三体"のように英語に翻訳し出版されないと評価対象にならない。

それでも毎年数多く出版されるSF小説のなかから、実際に両賞にノミネートされるだけでも大変なことで、その意味でもビジョルドは人気実力ともに兼ね備えた女流作家と言える。アーシュラ・K・ル=グウィンやコニー・ウィリスと並び称される女流作家でもあろう。私は上記の全作品は"仮面祭"以外全て既読、実に面白かった。

ビジョルドは五神教シリーズの中の"影の棲む城"単独でもヒューゴー・ネビュラ両賞を長編小説部門で受賞している。つまり長編小説部門だけでヒューゴー賞を4回、ネビュラ賞を2回受賞。ただ私はペンリック以外のビジョルドのファンタジー作品は読んでない。その大半が既に廃刊になりKindle化もまだなので、中古本で買って読む必要がある。

そこで五神教シリーズの第一作"チャリオンの影"の中古本をamazonで買って、平行して読み始めたのだが、ビジョルドの精緻な構成力を改めて感じた。なおこの作品もヒューゴー賞にノミネートされた。

日本の作家は読まないのか?、という質問に答えるとすれば、一人のファンタジー作家以外は読みません、というのが回答。無論、若い頃に読んだ純文学の安部公房や大江健三郎を除いての話。そしてその作家が上橋菜穂子。"精霊の守り人"シリーズ、"獣の奏者"、"鹿の王"等のKindle本になっている作品は殆ど読んだ。ただ最近の"香君"はまだ読んでいない。読む予定には入っているが、読みたい本が多すぎて、いつ順番が回ってくるかは未定。

Strange New Worlds(略してSNW)についても触れておこう。DiscoveryとPicardの2つの新作シリーズでは、一つのシーズンを通じて長い物語を完結するスタイルだったが、SNWは一話完結になっている。またウーラ、チャペル、カークと名乗る人物が登場するが、多分一世代前の設定、つまりTOSの同名の登場人物の親だと思われる。なおバルカン人は長命なので演じる俳優は異なっても全てのSTAR TREK作品に登場するスポックは同一人物。冒頭のナレーション(Space is final frontier…)もTOSやTNGとほぼ同じ内容で、SNWは古いスタイルのSTAR TREK。勿論、船名はNCC-1701 Enterpriseで指揮官はTOSやDiscoveryやJ.J.Abramsの映画にも登場したパイク船長。ただしJ.J.Abrams映画3作品と旧作映画10作品を含むTVシリーズとは異なるタイムライン上にあるという設定になっている。

なおTOSはThe Original Seriesで、TNGはThe Next Genaration。

STAR TREKもヒューゴー賞のTVドラマ部門を、TOSで1回(episode:The City on the Edge of Forever)、TNGで1回(episode:The Inner Light)受賞している。


さて今回は、物理ネタシリーズの4回目です。

前回まで、以下の項目を取り上げて来ました。

* 量子力学
* シュレーディンガーの猫
* 量子もつれ
* 隠れた変数の理論
* デコヒーレンス理論
* ベルの定理

そして積み残し項目は、以下の3つです。

* 弱値と弱測定
* Qビズムと多世界解釈

まず弱値と弱測定を説明しますが、新たな概念を理解するのは難しいので、科学に興味を持つ一般大衆を対象にした雑誌の記事を参照するのがいいと思う。この概念については、幸いにも以下の雑誌に解説が掲載されていた。私はこの会社のサイトの記事ダウンロードから、以下の2014年1月号の関連した記事3件を購入。

4. 日経サイエンス 2014年1月号 特集:量子世界の弱値         日経サイエンス社

これらの記事から引用すると、弱値と弱測定はアハラノフ(Yakir Aharonov)とアルバート(David Z. Albert)、ヴァイドマン(Lev Vidman)が提唱した概念で、光や電子等の素粒子の量子状態を出来るだけ乱さず影響を最小限にとどめて行う測定を弱測定といい、弱測定で得られた測定値を弱値という。

まず弱測定を以前に紹介した本の数式を使って説明しよう。

3. 量子力学の解釈問題 SGCライブラリ-161          和田純夫 著  サイエンス社

この本の103ページの数式 |ψ>Ψ(X) → e^-ig~PA|ψ>Ψ(X) を使う。勿論、説明は私の我流。

状態ベクトルを|ψ>、波動関数をΨ(X)と書く。位置Xに共役な運動量をPとし観測する量を演算子Aで表現すると、測定の相互作用を表現するハミルトニアンは gPA となる。ハミルトニアンとはエネルギーであり、弱測定で波動関数に加えるエネルギーに該当。gは相互作用の大きさを表す定数で、測定の継続時間をΔtとすると、その測定が状態ベクトルに及ぼす影響は、ハミルトニアンに継続時間を掛けて指数関数の肩に載せた e^-igΔtPA となる。上記の式では、g~=gΔt と簡潔に表現している。つまり e^-igΔtPA=e^-ig~PA ここでiは虚数単位(i=√-1)。

弱いエネルギーを微小な継続時間Δtだけ加える測定なので、弱測定となる。

有名なオイラーの公式e^iθ=cosθ+isinθを使い、cosθとsinθを級数展開して、

cosθ= 1 - θ^2/2! + (-1)^nθ^(2n)/2n!       + …
sinθ= θ - θ^3/3! + (-1)^nθ^(2n+1)/(2n+1)! + …

Δtが微小量なので、g~=gΔtも微小量。さらに-g~PAも微小量と言える。

cosθとsinθの級数展開で、θが微小量なら、θ^2やθ^3等の累乗はさらに微小になってゼロと置ける。つまり級数の最初の項だけ取り出して、cosθ=1、sinθ=θとなる。さらにcos(-θ)=cosθ、sin(-θ)=-sinθも使うと、結局、

e^-ig~PA = cos(-g~PA) + isin(-g~PA)
         = cos(g~PA)  - isin(g~PA)
         = 1 - ig~PA

さて観測演算子Aを状態ベクトル|ψ>に作用させると、

A|ψ> = ai|ψ>

と観測値aiが得られると想定する。aiのiは虚数単位ではなく、観測値aの添え字で、i=1~nを動く。つまりaiはn個の観測値を代表している。n個の観測値の重ね合わせで、観測Aを実行するとn個の観測値aiのどれかが得られるという意味だ。状態ベクトル|ψ>に作用する行列Aの固有値がaiであると捉えてもいい。観測値aiを含む状態ベクトルを|ai>と表現することもある。

次に恒等演算子Σ|ai><ai|=Iを導入する。Iは単位行列で、勿論、Σはiについての総和。規格化された状態ベクトル|ai>の絶対値の2乗が観測値aiが観測される確率となり、それらの確率を全て加えると1になることを意味する。

以上により、

e^-ig~PA|ψ>Ψ(X) = Σ|ai><ai|(e^-ig~PA)|ψ>Ψ(X)
                  = Σ|ai><ai|(1 - ig~PA)|ψ>Ψ(X)
                  = Σ|ai><ai|ψ>(1 - ig~Pai)Ψ(X)

勿論、最後の等号=は、A|ψ> = ai|ψ>から。

次にP=-i∂/∂Xと共役運動量を演算子で表現する。

なお量子力学では共役運動量をp=-ih~∂/∂xとするが、この本のこの数式ではh~が存在しない。そこでh~を省略した。場の量子論では光速cとプランク定数h/2π=h~を1と置く自然単位系(c=h~=1)が普通に使われるが、この本の他の部分ではh~が顔を出すので自然単位系ではないと思う。

仮にP=-ih~∂/∂Xが正しくて、h~が抜けている場合は、g~=h~gΔtと、g~を定義しなおすことによって、以下の議論がそのまま成り立つ。

これにより、

e^-ig~PA|ψ>Ψ(X) = Σ|ai><ai|ψ>(1 - ig~Pai)Ψ(X)
                  = Σ|ai><ai|ψ>(1 - g~ai∂/∂X)Ψ(X)
                  = Σ|ai><ai|ψ>(Ψ(X) - g~ai∂Ψ(X)/∂X)

となる。上の2番目の=では、-iとPの中の-iを掛けるとi^2となり、i^2=-1を使った。

さらに始状態|ψ>に対して、終状態<φ|を想定し、弱測定を完結するには、左から<φ|を掛ければいいから、

<φ|e^-ig~PA|ψ>Ψ(X) = Σ<φ|ai><ai|ψ>(Ψ(X) - g~ai∂Ψ(X)/∂X)

ここでΣ|ai><ai|ai=Aと書ける。これは可能な観測値を全て集めた場合に相当して、観測Aの定義となっている。この観測Aの定義を使うと、

<φ|e^-ig~PA|ψ>Ψ(X)
  = Σ<φ|ai><ai|ψ>(Ψ(X) - g~ai∂Ψ(X)/∂X)
  = Σ<φ|ai><ai|ψ>Ψ(X) - g~Σ<φ|ai><ai|ai|ψ>∂Ψ(X)/∂X
  = <φ|ψ>Ψ(X) - g~<φ|A|ψ>∂Ψ(X)/∂X
  = <φ|ψ>(Ψ(X) - g~<φ|A|ψ>/<φ|ψ>∂Ψ(X)/∂X)
  = <φ|ψ>(Ψ(X) - g~Aw∂Ψ(X)/∂X)
  ≒ <φ|ψ>Ψ(X - g~Aw)

となる。上記の数式では、()で囲んだり()を取って開いたりするので、注意が必要。勿論、Σ|ai><ai|=I と Σ|ai><ai|ai=A を使っている。

上式で Aw = <φ|A|ψ>/<φ|ψ> と定義した。このAwを弱値という。

以上で、弱値と弱測定の説明が終わった。

なお最後の≒は、弱測定による影響をΨ(X)本体に組み入れたもの。

最後の式からわかるように弱測定では、波動関数Ψ(X)に-g~Awという弱値に関連した影響を及ぼすだけで、波動関数を収縮させない。つまり重ね合わせ状態やコヒーレント状態を壊さずに与える影響を少なくして測定を実施しようという概念である。

その為、得られた観測値である弱値は正確でない場合が多いが、その対策として弱測定を多数回繰り返し実行して、なるべく正しい値を得ようとする

弱測定は一種の非破壊検査とも言える。また別のたとえを持ち出すと、医師が患者の症状を判断する際に尿や血液を採取したりレントゲンを撮ったりするのにも似ていて、それらにより得られたデータは弱値に相当する。逆に死体を解剖して死因を特定する手法は弱測定とはかけ離れている。

なお説明のために持ち出した非破壊検査や医師の診断はあくまで古典力学の世界の話で、弱値や弱測定は古典力学とは根本的に異なり非決定性や非局所性が成り立つ量子力学の世界の概念であることを理解しておく必要がある。

私的な物理ネタの最初の記事の数式は、線形微分方程式の解き方みたいで、あまり量子力学的ではなかったが、今回の数式の変更はまさに量子力学を勉強しているという感じで、私好みの数式処理と言える。

さて日経サイエンスの記事に従って、もう少し弱測定の説明を続けよう。

量子力学の実験の一つに、有名な2重スリットに関する実験がある

2重スリットの実験とは、ファインマン物理学の量子力学で詳しく説明されているように、光源からの放射された光が、2つのスリットを通過した後、スクリーン上に到達すると干渉縞が発生する実験を指す。

実験技術の進歩により、光を弱めて光子を1個ずつ順番に発生させることが可能になった。光子の計数測定管をスクリーン上にぎっしり並べ、光子1個がスクリーンのどこに到達したかを測定すれば、当然ながら光子1個を発射するたびに1個の計数管だけが光子の到達を観測する。これは光子が粒子の性質を持つことを意味する。そして光子の発射を繰り返して、スクリーン上の計数管に到達した光子の数を調べると、その数値分布はやはり干渉縞を再現する。つまり光子1個は波の性質も持つ。

光を構成する無数の光子が粒としての性質と波としての性質の両方を持ち、光子が持つ波の性質が確率波と解釈されるから、干渉縞が生じる。つまり光子1個の確率波が両方のスリットを通ってスクリーン上に到達するから、1個の光子がスクリーンに到達した際の位置の頻度確率が干渉縞の分布パターンになる。

以上を、図を書くと、以下のようになる。

光源 スリット               スクリーン
          |                               |
          |                               |
         =                               |
 +-----|------------------------|
         =                               |
          |                               |
          |                               |

+に1個の光源がある。=がスリットで2個ある。

スクリーン上に現れる干渉縞を光源の側かスクリーン後方から見ると、以下のようになる。スクリーンの上下の状態を表現した図と見てほしい。

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***が光が強い場所で、---が光が弱い場所、空白が光が届かない場所を示す。干渉縞の幅は、光源が一点なので、スリットの幅より少し広くなる

2重スリットの実験で、光子が2つのスリットのどっちを通ったのかを確認する為、2重スリットの片方に光子が通過したことを確認する為の測定器を置けば干渉縞は発生しない。これは片方のスリットを閉じた場合に等しい。

次に、弱測定を利用して、片方のスリットだけに細工してみよう。光は上下両方のスリットを通れるが、上下両方を同等ではなく不平等に設定する。片方に微妙な差を加えるのだ。

その設定の一つが、一方のスリットの後に透明なガラス板を斜めに追加して、厚さが一定のガラス板を通過した光が回析して斜めに進むように変更する。ガラス板はスリット全体を覆うので一方の光は必ず回析するが、もう一方のスリットには何も追加しないので光がまっすぐ進む。

もう一つの設定が、光源をガラス板を追加したスリット側に少し移動して、ガラス板を通る光がより強くなるようにする。

このような状態で2重スリット実験を行うと、面白い干渉縞が現れるらしい。その図を以下に示す。

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⊂型のような独特の形状だが、干渉縞から離れた場所にも一部の光が届く。

この状態を数式で計算すると、離れた場所に届く光の確率はマイナスになるという。ただし全ての確率を合計すれば1になる。勿論、状態ベクトルを規格化した後の話で、確率の全体的な整合性を維持する為にマイナスの確率も必要になるのだろう。

場の量子論では理論の整合性を保つ為に、実際には観測されないゴーストと呼ばれる仮想粒子が導入される。特にファデエフ=ポポフゴースト(Faddeev-Popov ghost)が有名で、経路積分の計算でゲージ固定する為に追加される作用の1つ。作用全体のユニタリ性を保つ為にも必要らしい。

しかし弱測定による2重スリットの干渉縞から出てくるマイナスの確率を考えると、ファデエフ=ポポフゴーストも実数以外の虚数の領域に存在するのかもしれない。

いずれにせよ始状態の列ベクトルと終状態の行ベクトルさらに観測に相当する行列の全てが複素数で表現され、純虚数の2乗がマイナス(i^2=-1)という特性が根本にあるのは明らかだ。実験や観測では実数値のデータしか得られないにもかかわらず、量子力学で表現される我々の宇宙が実際には複素数の世界であるという紛れもない証拠と言える。

次回の物理ネタは、Qビズムと多世界解釈を取り上げる予定です。