6/22発売のFF16を始めた。物語は"Game of Throne"のイメージでFF版中世騎士物語といった感じ。操作は"Horizon Zero Dawn"や"God of War"に近いが、移動は簡単。勿論、ストーリー重視の設定で、ゆっくりのんびり楽しむつもり。
DQではレベル上げという弱いモンスターを延々と倒して経験値を稼ぎレベルを上げる手順が必要だが、FFやNieRやHorizonやGoWではレベル上げは必要ない。物語を進める間にレベルが自然に上がる。ただ強化用のアイテムを集める必要があり、無理なく可能な範囲で、敵を倒したりフィールドで拾ったり、クエストをクリアしたりして入手する。ただ強化するか強化しないかは個人の自由で、強化しなくても物語は進められる。その点がレベルを上げないとボス敵を倒せなくて、物語が進まないDQとは異なる。
FF16は以前のバージョンに比べて、多くの登場人物の顔や服装がより多彩で豊かになっているようだが、個性や会話の面白さという点ではHorizonに遠く及ばない。その点はディレクターやシナリオライターが目指す目標の差だったり、日本のゲーマーと海外のゲーマーが求める内容の相違でもあるのだろう。
日本の社会では、個性や会話の多様性がまだまだ必要とされていない、と感じる。私は常識外れの変人だが、日本は今でも、横並びで目立たないのが理想なのだ。
さて今回は、ネタ切れ対策を目的とする物理ネタの2番目で、前回の続きです。
前回は、以下の本を取り上げて、
1. シルヴィアの量子力学 シルヴィア・アローヨ・カメホ 著 岩波書店
その中から、下記の話題を説明する予定だったが、
* 量子力学
* シュレーディンガーの猫
* 量子もつれ
* 隠れた変数の理論
* デコヒーレンス理論
隠れた変数の理論とデコヒーレンス理論は、ブログの許容容量の関係で説明できなくて、今回の宿題にした。
そこでまず、隠れた変数の理論を説明しよう。
ただ私は隠れた変数の理論を理解できてないし、簡単な説明しかできない。
前回、量子力学には実在性も決定性も局所性も成り立たない、という話をしたが、この点は多くの学者にとって受け入れ難い内容であり、何とか量子力学に実在性や決定性や局所性を加えられないか、という努力がなされてきた。その一つが隠れた変数の理論だ。今まで量子力学の複数の数式を紹介してきたが、どの数式にも現れない隠れた変数が存在して、波動関数が収縮する際に実現可能な理論値が選ばれる確率を左右しているのではないか、という発想。
ただ実験での量子もつれの再現により局所実在性が否定されたので、局所実在性を量子力学に付与することを目的とする隠れた変数の理論も否定された、または必要性が低下した、と考えるのが自然な流れだろう。
次に、デコヒーレス理論を説明する。
まず前回の量子力学の説明で出てきた、x軸上を自由に運動する質点のシュレーディンガー方程式の一般解を再び書き出す。
ψ = Ae^i(kx-ωt) + Be^i(-kx-ωt)
この解でωに注目してください。ω(=E/h~)は振動数。この一般解の第1項が+x方向へ進む波を表現し第2項が-x方向へ進む波を表現していますが、どちらの波も同じ振動数で波打っている。
+x方向へ進む波と-x方向へ進む波は重ね合わせ状態にあるが、重ね合わせ状態の2つの波は振動数が同じで同時に発生したと想定すると、2つの波の位相も等しくなる。位相がそろった波をコヒーレント状態にあるという。
コヒーレントとはレーザー光に対してよく使われる表現だが、重ね合わせ状態の同時に発生した複数の波の解も同じコヒーレント状態にあると考える訳です。
自由に運動する質点の位置か運動量を人間が観測することにより、波動関数の重ね合わせ状態が消えて、+x方向か-x方向のどちらかが選択され、位置または運動量の値が得られる。それはコヒーレント状態が消えることを意味して、これをデコヒーレンスと呼ぶ。
デコヒーレンスは人間の測定以外でも、例えば、光子や電子であれば空気中の窒素や酸素の分子に衝突するとか壁に当たって吸収されるとかで、発生する。
またデコヒーレンス理論は、測定装置や環境も波動関数で表現される素粒子の集まりと見て、考察対象との相互作用を考えるという発想でもある。
つまりデコヒーレンスは身の回りで普通に自然に発生している現象と言える。
デコヒーレンス理論で、アインシュタインの発言「月は見ていなくても存在する」を考えると、光や電子等の素粒子は測定する前は位置や運動量が決まらず存在さえ確信できないが、月は無数の素粒子から構成されるので、たとえ月を構成する一部の素粒子が消滅したとしても、その他の殆どの素粒子は不変で月が消滅することはない、つまり事実上「月は見ていなくても存在する」と言える。
シュレーディンガーの猫をデコヒーレンス理論で考えると、死んでいる猫と生きている猫の重ね合わせ状態が発生しても、猫は無数の素粒子から構成されているので、空気中の窒素や酸素等を構成する素粒子の波動関数と猫を構成する無数の波動関数が、たちまち相互作用して、コヒーレント状態が解消される。つまりマクロな物体のコヒーレント状態は長くは続かないという結論になる。
このようにデコヒーレンス理論では、光子や電子等の素粒子とマクロな物体との相互作用を常識的に捉えることが出来ると共に、宇宙や自然の振る舞いも普通に説明できるという利点がある、と私は考えていて、私好みの理論でもある。
さらに言えば、観測対象や測定器や環境を含む宇宙全体を無数の波動関数の集合と考えた際には、その自然収縮であるデコヒーレンスはエントロピー増大とほぼ同じ意味を持ち、時間の非対称性を導き出す。また宇宙に存在する無数の状態ベクトルを考えた場合には、その基底ベクトルが必ずしも一致しない場合も想定されるが、デコヒーレンスの自然収縮により基底ベクトルの相互作用が発生し、その差異が少しずつ解消される場合も考えられ、その結果として宇宙の一様性をもたらしているのかもしれない。
さて次に、本をもう2冊取り上げよう。
2. アインシュタインのパラドックス アンドリュー・ウィテイカー 著 岩波書店
3. 量子力学の解釈問題 SGCライブラリ-161 和田純夫 著 サイエンス社
2.は量子もつれに関する本で、その歴史が詳しく解説されている。一般向け解説書の形式を取っているが、数式も多く登場して専門書と変わらない難しい本だ。3.は専門書で私はPDFファイルで購入。簡潔な表現の本だが、その内容は難しい。
2.の本の副題がEPR理論とベルの定理となっていて、3.の著者は2.の訳者でもある。
3.の本には量子もつれは勿論、弱値と弱測定、Qビズム、デコヒーレンス等の他にコペンハーゲン解釈以外の量子力学の解釈である多世界解釈が取り上げられている。
EPR理論は前回に量子もつれに関連して説明したが、以下のそれ以外の語句、
* ベルの定理
* 弱値と弱測定
* Qビズムと多世界解釈
について、順に説明しよう。
と思ったが、元々、ネタ切れ対策で始めたシリーズなので、長い記事にする必要はない。前回の記事が頑張り過ぎて長くなったので、今後は短めで終えて、積み残した課題は次回以降に説明しよう。
それに前回の量子力学と量子もつれの説明は、この物理ネタシリーズの中心となる内容なので、ある程度、まとめた形で説明する必要があった。
ただそれ以降は、項目一つずつ説明できるはず、という思惑もある。
そこで今回は、デコヒーレンス理論の説明で終わります。
最後に蛇足だが。
芸術は長く人生は短い(Art is long, life is short.)、という言葉がある。
古代ギリシャの医者ヒポクラテスの言葉で、ここで芸術とは医術のことで学問ともとれる。ゲーテの叙事詩"ファウスト"でも学問の意味でその最初の部分の台詞にも登場した。
私のような凡人は、物理の本を一冊読むと未知の内容が複数見つかる。それを理解しようと別の本を読むと、また新たな事柄が複数出てくる。つまり勉強すべき項目は増加するばかりだ。仕事は53歳でリタイア出来た。でも物理の勉強は大学生時代に始まり、就業中も続けたが、未だに先が見えない。
結局、死ぬまで勉強、と言える。
私の余生に於ける最大の関心事が物理の勉強であり、その為に早期にリタイアしたとも言えるが、勉強を阻む最大の要因が自分の才能不足であり、次の要因が自分の怠け者の性格だ。つまり金銭的な問題ではなく、貧乏学生だった頃と全く同じで、何も変わっていないのだ。