現代医学はAllopathy(逆症療法)と呼ばれていますが、症状に対して反対の作用を持つ薬剤を投与するというところからその名がつけられました。例えば、高血圧の患者には血圧を下げる薬剤を投与し、細菌感染した場合は細菌を殺す薬を処方します。また、同種療法と呼ばれているホメオパシーは現代医学とは真逆で症状に対して同じ症状を引き起こす物質をごく少量含むレメディー(成分を含ませた砂糖玉)を投与します。

一方、オステオパシーは現代医学のように症状自体にフォーカスする対症療法ではなく症状の原因を探ることに重きを置きます。痛みの原因は必ずしも痛みがある場所にあるとは限りません。そのため、オステオパシーではホリスティックな視点から体全体を見て症状の原因を探っていきます。これがオステオパシーが「病気(症状)を中心とした」治療ではなく「人(体全体)を中心とした」治療法であると言われる所以です。

1. The body is a unit.
体は1つのユニットである。
2. Structure and function are interrelated.
構造と機能は相互に関係する。
3. The body possesses self-regulatory mechanisms.
体は自己制御機構を有する。
4. The body has the inherent capacity to defend and repair itself.
体は固有の防御力(免疫力)と自己修復能力を有する。

これらは、1953年、カレッジ・オブ・オステオパシックメディスンにおいて発表されたオステオパシーの基本原理で、構造の化学である解剖学、機能の科学である生理学、そして病気の科学である病理学を基礎として作られています。

オステオパシーではこれらの原理をもとに、筋骨格系のアンバランスは血流、リンパの流れ、神経の伝達、脳脊髄液の流れ、ホルモンバランス、呼吸などに悪影響を与え、この構造の変位による機能低下によって体の制御機構と免疫機能が損なわれた結果、様々な病気や不調が引き起こされると考えられています。このように筋骨格系のアンバランスにより体の正常な機能が損なわれた状態をSomatic Dysfunction(体性機能障害)と呼び、多くの病気や不調の原因であると考えられています。

すなわち、「できる限り薬や手術に頼らず、手技を用いて筋骨格系の変位をあるべき場所に戻すことで体の機能が正常化すれば、自己制御機構、免疫力、自己修復能力が回復し、体自らの力によって多くの病気を治すことができる」という治療哲学そのものがオステオパシーであると言えます。

また、様々なオステオパスによって多くの手技が開発され、同じ症状でも使うテクニックが全く違うということがあります。関節をボキボキと鳴らす高速低振幅手技、いわゆるスラストを多用するオステオパスもいれば、一切ボキボキはせずに治療するオステオパスもいます。中には頭蓋仙骨手技(クラニアルオステオパシー)と呼ばれる一見ほとんど動きのないテクニックのみを行うオステオパスもいます。前述したように「不調の原因となる筋骨格系のバランスを整えることにより体自身が回復し始める」という哲学そのものがオステオパシーであるため、そのテクニックや方法論は施術者により様々です。

オステオパシー創設者のアンドリュー・テイラー・スティルはテクニックに関する書物は一切残していません。その代わりにオステオパシーに対する思想や哲学を残しました。その中でスティルがこんな言葉を残しています。
 

Find it, fix it and leave it alone.
原因を探し出し、それを正しい位置に戻したら、あとは体に任せなさい。

 

不調の原因を取り除くことができればその方法論は重要ではありません。私が大学在学中も教師陣からは「テクニックなんてどうでもいい、診断(原因の追究)こそが重要である」とことあるごとに叱咤されたのを覚えています。オステオパシーの真髄は哲学こそにあり、このスティルが残した言葉のように、人体の構造と機能を深く理解し、症状の原因を見つけて取り除き、最後の仕上げは体に任せることこそがオステオパシーであるといえます。そして次の言葉の通り、病気を見つけるのではなく、患者の健康を見出すことがオステオパスの使命なのです。
 

Anyone can find disease. The osteopath should find health.
病気は誰にでも見つけられる。オステオパスは健康を見出すべきだ。