短編小説
タンしお部参加中
お題【制服】
※イベント参加の記事で、フィクションです
制服の呪縛
ある夏の日、一本のLINEが梨華のスマホに届いた。
昨年、10数年ぶりに再会した、中学のクラスメイト、茜だった。
LINE交換した際に、スタンプを送り合っただけで、その後連絡が続くことはなかったから、梨華は何事かと驚いた。
そのLINEの中身は、
「高校野球を見に行きたいんだけど、どうすればいいかな?よかったら、付き合ってくれない?」
梨華はちょうど、観戦予定だったので、
「いいよ。球場には駐車場があるから、そこまで来て。9時頃に、入口近くで待っているから、着いたらLINEしてね」と、待ち合わせ場所と時間を画像加工して添付して返信した。
梨華は、楽しみにしていた、当日を迎えた。
逸る心を隠し切れず、早めに待ち合わせ場所に到着した。
「あの画像を見れば、わかるよね」と、駐車場から訪れる人の波から茜の姿を探した。
「昨年会ったから、わかる筈」と、目を凝らしていた。
その群衆の中に、出場校の制服を着用した生徒も混じっていた。
やがて、その群衆の波は途絶え、観客は着席し、プレイボールの時間が迫っていた。
梨華の心は、わくわくした気持ちから、落ち着き、待ち合わせ場所は合っているのかとLINEを確認し、イライラが募ってきた。
「すぽっかされたのかも」と、梨華は落胆した気持ちのまま、観客席に向かった。生徒だった頃、トイレはもちろん何事もひとりでは行動できず、いつも誰かと一緒じゃないと行動できなかった茜のことを思い出し、涙がポツリと流れた。
「梨華!ここよ!」と、観客席の方から聞こえた気がした。
観客席は、制服姿の生徒が固まって座っていた。近ずくと、その制服姿の若者の間から手を振る人影があった。
梨華は一瞬、いや、数秒、あの頃の制服姿のあの頃のままの茜を見た。若く可愛い茜の制服姿から、昨年会ったときの年相応の姿に変わっていく茜に手を振り返す梨華は、やっと会えたと安堵した。
「茜!着いたらLINEしてって言ったじゃない」と、少々怒ったふりをした梨華。「ごめん、ごめん、生徒さんたちがいっぱいで、ついて行ったら、球場に入っていたのよ。」と茜は、笑顔だった。
その笑顔に、梨華も笑顔になり、手を取り合い再会を喜びあった瞬間、「プレイボール!」とアナウンスが流れ、ウ~と試合開始を知らせるサイレン音が響いていた。
「で、茜、入場券は買えた?券売機の場所、分かった?」
「え?タダじゃないの?生徒さんたちとここまで来たから、買ってないわ」と、茜は唇に人差し指をあてた。