大宮さんの恋物語です。
毎日20時更新予定です。
劇中劇の告白シーンです///。
ではでは・・・どぞ・・・。
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Side.N
傘をさしていても・・・濡れるのを避けられないほどの雨の中。
気温が少し下がったのを感じながら走る。
水滴が顔を打つ。
走るスピードが少し早いかも・・・と思ったけど。
気が急いて足を緩めることができない。
水たまりをよけきれず・・・派手に水しぶきをあげてしまったけどそのまま走る。
カメラさんがいるであろう位置で・・・大きく傘を傾け横顔が映るようにし。
そのままのスピードで角を曲がると。
向こうに。
おーのさんがいた。
少しだけ走り寄り・・・でも距離を置いて荒い呼吸のまま立ち止まる僕。
傘のないずぶ濡れのおーのさん。
黒いパーカーにジーンズ。
キャップを目深にかぶり。
両方のポケットに手をつっこみ前かがみで立っている。
でも顔は下げてなくて。
ずっと・・・きょろきょろと周りを見ている。
ずっとずっと・・・あちこち見て。
後ろも見て。
僕を・・・ずっと。
ずっと探している。
実は。
おーのさんがどんな演技をするのか僕は知らなくて。
だってこのシーンは台本が白紙だったから。
だから。
こんなに・・・僕をずっと探しているなんて。
そんなの。
知らなかった。
ぎゅっと。
傘の柄を持つ手に力がこもる。
しばらくして。
きょろきょろしていたおーのさんが僕を見つける。
キャップから滴り落ちる水滴。
目を細め・・・降る雨を邪魔そうに見ながら。
雨でけぶる向こうで。
僕を見つめるおーのさん。
そして。
好きだっ!
雨でかき消されそうになりながら・・・も。
おーのさんが大声で好きだと叫んだ。
好きだぁっ!
また叫ぶ。
大声なのに・・・まるで歌っているかのように艶やかなぴんと張った声。
最後の「だ」・・・に。
かすかなビブラートがかかり。
雨にも負けずに声の余韻がちゃんと届く。
好きだっ!
声が心にまっすぐ届き。
ふる・・・っと体が震え。
胸元の服を・・・きゅっとつかんだ。
まるで・・・本当に告白されているみたいで。
全身の皮膚に鳥肌が立つ。
寒さなんかじゃない。
僕は・・・おーのさんの声に震えている。
雨が・・・一瞬強く横殴りになる。
風で傘が飛ばされそうになり・・・ぐっとつかむ僕。
同じ風に。
煽られ・・・顔をふいっと背けたおーのさん。
その拍子にキャップが飛んだ。
でも・・・拾いにもいかず。
ぐいっと・・・髪を。
濡れた前髪を乱暴にかき上げ。
そのまま僕を向いて。
もう一度。
好きだっ!
と叫ぶ。
さっきよりも表情がしっかりと見える。
目を細め眉を寄せ。
でも僕から目は背けない。
まるでその瞳で。
思いを伝えるかのよう。
・・・好きなんだ・・・
切なさの混じるおーのさんの声が胸に突き刺さり。
じんわりと・・・涙ぐむ僕。
台本にはないけど。
感情が高ぶり涙が溢れる。
だって何回も言うから・・・。
・・。
・・・。
もう。
走り寄りたい。
でも・・・スタッフさんのゴー待ち。
まだ。
おーのさんには近づけない。
好きなんだっ!
一瞬。
おーのさんの手が僕に伸びた。
思わず。
引きよせられるように一歩。
おーのさんへと近づく僕。
何度も繰り返される心の叫び。
思いが僕の心にどんどん蓄積され。
溢れてこぼれそうで苦しい。
ねぇ・・・まだ?
まだ近づいちゃダメなの・・・?
好・・・きだ・・・!
おーのさんの声がかすれた。
・・・と目の端で。
スタッフさんの・・・ゴーのサインが見えた。
瞬間・・・スピードをいきなりトップギアに入れて走り出す僕。
傘は高く放り投げた。
雨が強く顔を叩く中。
早く早く・・・と。
おーのさんへとまっすぐ走る。
あと少しで届く。
僕は・・・そのままスピードを緩めず。
まばたきもせずに僕を見つめるおーのさんに。
ぶつかるようにして体を預けた。
それなりの衝撃があったろうに・・・後ずさりもしないおーのさんが。
しっかりと僕を受け止め抱え。
ぎゅっと抱き締めてくれる。
僕もその背に腕をまわし抱きしめる。
しばらくして・・・おーのさんの腕が緩むから。
僕は顔を上げ・・・二人見つめあった。
降りしきる雨が邪魔なはずなのに。
微動だにせずにまっすぐ僕を見つめるおーのさんの強い瞳。
その瞳に・・・まるで焼かれるように心の奥が熱くなり。
はぁ・・・と吐いたかすかな白い息がおーのさんの唇をかすめた。
そのまま・・・降る雨に溶けるようにして二人・・・一体化していき。
何の合図もなしに・・・互いに自然と体を寄せる。
すると・・・ぐいっと。
僕の後ろ頭におーのさんの手がまわる。
すっぽりと。
とても大事なモノのようにして抱え込まれる僕の頭。
と同時にそっと抱き寄せられる背。
まるで・・・僕の全部を雨から守るかのよう。
心地いい腕の中・・・すべてがシャットアウトされて。
一瞬の無音。
ただ感じるのは。
おーのさんだけ。
・・・。
・・・。
・・・おーのさん・・・。
優しいね。
・・・。
・・・。
その背にまわった僕の手が。
おーのさんの服をぎゅっと握ったところで。
カット!
監督の大きな声が聞こえた。
つづく
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劇中劇の告白シーンは以上となります///。
みなさんがお選びいただいたシーン。
大事に大事に書かせていただきました。
ご期待に添えているかしら・・・と。
ドキドキしております///が。
アンケートにご参加くださった方々も。
参加したかったけど間に合わなかったの(ノ_<)・・・の方々も。
本当にありがとうございました。
続く二人も・・・見守っていただけたら嬉しいです♡
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