ラストです
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ノコルが話してくれた内容はこうだった。
以前テントの構成員がテロ活動中に亡くなった。
彼は天涯孤独だと聞いていたが実は2年ほど前までは一緒にくらしていた靴職人の父親とまだ10歳に満たない息子がいたことが最近になって判明。
ずっと探していたけれどここ数日で二人の居場所がわかり。
昨夜父親に会ってその死を知らせてきたと言う。
テントの構成員だったことは知らされていなかったようで。
だから。
そこは隠して・・・事故で亡くなったと告げた。
「信用してくれたんですか?事故で亡くなったなんてそんな嘘。」
「チンギスが一緒に来てくれたからな。信じてくれたよ。」
「そうですか。」
「知らせたことに礼を言われたよ。泣きながら。ありがとうございます・・・と。」
「・・・。」
ふっと。
笑うその笑顔が切なくて。
嘘をつかなくてはいけなかったノコルの心の内を思うと。
胸が痛む。
「息子にもその場で知らせていた。父親はなくなった・・・と。」
「・・・。」
「わんわん泣くあの子を見ていたら辛くてな。どれほど悲しいかと。そんなこと思ってたらお父さんが死ぬ夢を見た。」
「・・・。」
繊細なノコル。
いったいその心に。
いくつの悲しみを背負っているのか。
「少し間をおいて・・・来週また。行くつもりだ。」
「なぜ?」
「金を受け取ってもらう。」
「・・・金・・・?」
「昨夜も持って行ったんだが。受け取ってもらえなかったんだ。」
「なんて言って渡そうとしたんですか?」
「昔世話になったから・・・と。香典のつもりで渡そうとした。」
「・・・それで?」
「辞退されたよ。額も大きすぎた。」
「・・・。」
「今度は額を減らして持っていく。不本意だがしかたない。」
「・・・。」
「テントの名を出し名誉の死をとげたと言えば大金も渡しやすいんだが。」
「・・・。」
「本人が隠していることを俺が言うわけにはいかない。」
「・・・。」
こういうところ。
義理堅いと思う。
自分の思いではなくて・・・人の意思を尊重できるところ。
ノコルの尊敬できる部分だ。
それにしても・・・チンギス。。
かなりノコルが世話になってるんだな・・・と。
ありがたいようなちょっと寂しいような。
そんな気分になる・・・けど。
この国で。
表の世界で生きるノコルにはこれほどの味方はいないはずだ。
やはりチンギスの存在はありがたいと思わなくちゃいけない。
「お供します。」
「俺も。」
俺の言葉にフウマも続く。
ノコルは。
一瞬意外そうにフウマを見たけど。
わかった・・・と言いつつ。
でも余計なことは言うなよ・・・と釘を刺していた。
「それにしても・・・。」
「・・・?」
「黒須。お前の歯ぎしりはひどいな。」
「・・・ぇ///。」
「明け方。あまりのひどさに頬を引っ張ったんだが。」
「え///。」
俺は。
頬をさする。
・・・心なし・・・痛む感じがする///。
て言うか・・・俺。
一睡もできていないと思ってたけど。
寝てたのか・・・///。
「それで。止まりました///?」
「一瞬だけな。」
「・・・///。」
「すぐまた再開した。」
「・・・すいません///。」
「ちょっと。歯見せろ。」
「・・・え。」
「いいから。早く。」
いやそんな。
歯なんて・・・あんまり。
って言うか医者以外・・・親にもがっつりは見せたことないと思う・・・けど。
ノコルは見る気満々で。
だから。
ちょっと強めにお茶でゆすぎ。
俺は・・・軽めに唇を開けた///。
じっと見るノコル。
俺は・・・ちょっと恥ずかしくて。
目をぎゅっと閉じていた。
「歯並び。悪いわけではないな。」
「・・・。」
「歯医者を紹介するから。診てもらってこい。」
「歯医者・・・ですか。」
「キライとか言うなよ?ガキじゃあるまいし。」
「・・・いや・・・確かにあんまり好きじゃないですけど・・・。」
「あ。」
「・・・はい?」
「もしかして。」
「・・・え///。」
ぐいっと。
俺に近づくノコル。
そのまま・・・上目遣いに俺を見上げる。
いや・・・その///。
あなたの上目遣いは破壊力満点なので。
ちょっと・・・やめてもらっていいですか・・・///?
「ストレスなのか?」
きゅっと。
眉根が寄るノコル。
切なそうに寂しそうに軽く口をとがらせて・・・俺に言う。
ぇ・・・ストレス・・・?
俺が?
それはない。
それはないでしょ・・・。
「それは・・・」
「ないっすよね。」
なんでお前が言うんだ・・・と言うタイミングで。
俺の言葉に続いたフウマの声。
「そうなのか?」
「この人がストレスとか。ないっす。」
「・・・。」
かちん・・・とくるけど。
とりあえず・・・今は。
ノコルには誤解してほしくないから・・・だから。
「ないですよ。ストレスはないです。」
「・・・いつでも・・・。」
「・・・はい?」
「いつでも。日本に帰っていいんだからな。」
「帰りません。」
「・・・。」
「帰りませんから。」
「・・・。」
「だからそんな・・・」
顔しないでください・・・と言いかけて。
俺はどんな顔してるんだ?と。
ご機嫌斜めになってもいけない・・・と思い。
「・・・そんなこと言わないでください。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・わかった。」
「・・・。」
「今日は午前中は調べものをするから。」
「はい。」
「フウマ。あとで・・・」
「コーヒーっすね。」
「・・・そうだ。頼んだぞ。」
そう言うとノコルは。
ゲルを出ていった。
テーブルの上の食器を二人で片付けながら・・・言う。
「フウマ。」
「なんすか。」
「さっきのなんだよ。あれ。」
「あれって?」
「とぼけるなって。ストレスないとか。俺より先に言うとかさ。」
「ノコルが不安そうだったから。」
「・・・。」
「早く言わなくちゃって。」
「・・・。」
「あんなささいなことで。あんな不安そうな顔するんすね。」
「・・・。」
「ダメっすよ。ノコル不安にさせちゃ。」
「・・・。」
「マジ歯医者言ってください。その歯ぎしり。止めないと。」
「わかったよ。」
「びびってる場合じゃないっすよ?」
「びびってないし!」
へらっと。
俺を見て笑うフウマ。
ホント・・・こいつは。
遠慮がなくて腹が立つ。
先輩。
ノコルは・・・全方向へ心配りをしています。
表ではフローライト採掘と政府内での分配方法の確立。
裏ではこうしてテントのことで。
一つ一つ丁寧に向き合っています。
ノコルが。
心穏やかになる日は来るんでしょうか。
可能であればそれまで。
俺は・・・ノコルのそばで・・・。
「って言うかマジで。昨夜とか。何にもなかったんすか?」
「昨夜・・・?ぁ・・・///ないよ!ない!」
「マジで?」
「マジで!」
「よかった・・・俺。眠れなかったんすからね。朝まで。」
「・・・と思ってるのは自分だけってこと。あるぞ。」
「は?」
「寝れてるってこと。案外さ。」
「・・・そう・・・かな・・・。」
きゅっと眉根を寄せるフウマ。
その顔が幼くて笑いそうになる。
もう・・・多分。
ノコルを殺そうなんて思ってないはず。
でもちゃんと。
話をしておいた方がいいな・・・と。
そんなこと思いながら。
片づけを続けた。
あ・・・。
今夜もまたもしかして。
同じベッドで眠るかもしれない。
・・・。
・・・。
歯医者・・・行っておくか・・・///。
…to be continued…
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ご訪問ありがとうございました。
テント構成員が亡くなった件で。
ご実家に再訪問するお話は・・・ちょっと長くなってしまったので。
来週に続きます///。
今回は来週のアップも・・・お約束させていただきますね///。
三人の暮らしも長くなってきました。
相変わらず黒須はノコルにドキドキですが・・・///。
楽しんでいただけていたら嬉しいです♪
ではでは。
来てくださってありがとうございました。
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