大宮さんのBL物語です。
苦手な方はご注意を。
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平和だな・・・と思う。
俺なんかはもう。
すでに今日上司から出社そうそうに怒られていて。
朝からずっとブルーな気分が続いている。
まあ・・・怒られてもしかたない。
営業として仕事をしている以上。
それなりに数字をとらなくちゃいけないのはわかっている。
でも俺は・・・いわゆるその数字ってやつがとれない。
押しが弱い・・・と言われていて。
それは自分でも認めている。
さらには・・・空気が読めないだの。
察しが悪いだの。
言われたい放題だった。
まあ・・・成績が振るわないから何を言われてもしかたない。
ノルマのある会社ではないけど・・・毎月成績が発表されて。
俺は・・・数人の人たちといつもビリ争いをしていた。
一流の財閥系の大手商社の営業マンではあるけれど。
我ながら・・・さえない方の営業マンだと思っていて。
自信なんてものはもうとっくにどこかに忘れてしまっている。
こんな生活・・・もう何年も繰り返していて。
同期がどんどん昇進や栄転していく中。
これから先も・・・俺にはこの生活が何十年もずっと続いていくのか・・・と。
そんな事を思ってため息をついた。
付き合っていた彼女とも。
かなり前から・・・なんとなくギクシャクし始め。
連絡が途絶えてから軽く数か月は経ってる。
もう・・・多分終わってる。
いわゆる自然消滅ってヤツだ。
同じ会社なのに不思議なくらい会わないのが・・・救いと言えば救いだけど。
それよりも今は・・・仕事の方で頭がいっぱいで。
せめて。
先月大阪へ異動になった先輩の置き土産の・・・あのA社との大口の案件だけは。
なんとかつなげていかなくちゃ。
あれだけは死守しなくちゃ・・・と。
そう思っていた。
思ったよりも早く運ばれてきたAランチのハンバーグ。
これが・・・なかなかボリュームがあって美味い。
味の事は・・・そんなによくはわからないけど・・・でも。
そんな俺でもずいぶんと手が込んでいることだけはわかった。
一度も手を止めずに全部をたいらげた俺。
空の皿が片付けられて行く。
スマートな仕草。
さっきから全然俺の邪魔をしないサービス。
水さえ・・・いつつがれたか気づかないくらいだった。
なかなか居心地がいいな・・・なんて思っていたら。
いいタイミングで。
多分俺のと思われるアイスコーヒーが運ばれてきた。
席の近くにやってきて・・・そこでやっと気づく。
ずいぶんとぎこちない子だな・・・って。
片手で持ったトレーの上に乗った背の高いグラスのアイスコーヒーが。
もうすでに・・・ガタガタ震えている。
俺よりもテーブルよりも・・・そのアイスコーヒーに気を取られている店員。
心配になって顔を見つめる。
瞬きもしないでアイスコーヒーを。
少し寄り目がちに見ているその表情は・・・かなり幼く見える。
薄暗い照明の中でも・・・その肌がキレイなのが際立っていて。
集中しすぎているのか。
口が・・・すごくとがっている。
お待たせしました・・・と俺に。
って言うかアイスコーヒーに向かって小さな声で言うと。
少し屈んで・・・アイスコーヒーより先にコースターをテーブルに置いた。
瞬間。
すーっと。
まるで。
スローモーションのように・・・斜めになったトレーの上をコーヒーが滑り。
コン・・・とトレーの縁にあたる。
ぁ・・・とその子が小さく声を出した瞬間には・・・もう。
テーブルの上にアイスコーヒーがぶちまけられていた。
幸い・・・低い位置からだったから。
テーブルに落ちてもグラスは割れなかったけど。
なみなみとつがれていたアイスコーヒーが。
まるで茶色の海のようにテーブルに広がっていく。
俺よりも。
隣のテーブルの女子が・・・きゃぁ!・・・と大声をあげた。
その声で。
やっと我に返った俺は・・・ずずっとイスをひき。
慌ててテーブルから離れた。
.
つづく
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毎日20時に更新です。
楽しんでいただけたら・・・。
ではでは。
来てくださってありがとうございました。