大宮さんのBL物語です。
苦手な方はご注意を。
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そして数週間後。
買い物に出かけた四人が。
多分・・・そろそろ帰ってくる。
僕はお留守番。
引っ越しから一夜あけて・・・でもまだ届く荷物とかあって・・・だから。
まーくんがもらってきたネコと一緒に僕はここでお留守番をしていた。
さわやかな風の通る見晴らしのいい場所。
ここは・・・僕たちが住んでいた町の隣町。
あの河川敷からも・・・そして海からも近い高台の一軒屋。
そう・・・ここが。
僕たちの・・・いわゆるシェアハウスだった。
あの日。
あの・・・僕と智の号泣再会事件///から後。
居酒屋で聞いた話。
それはなんと。
五人でシェアハウスを借りよう・・・という提案だった。
提案・・・と言うよりも・・・ほぼほぼ話は進んでいて。
場所も・・・って言うか借りる家ももうほぼ決まっていて。
契約関係は翔ちゃんが。
ちょっと年季の入った一軒家だったから・・・修繕はまーくんがコツコツと。
家具なんかは・・・少し前から潤君が決めてくれていた・・・ということ。
どうして・・・サプライズだったのか。
言ってくれれば僕だって何か・・・お手伝いができたはずなのに。
なんで・・・智と僕へのサプライズだったのか・・・。
そしてその翌日。
僕たちはさっそく・・・借りる予定の家を見に行った。
もう・・・智も僕も一目で気に入って。
すぐにそこで・・・本契約をしたんだ。
そのまま・・・海の方までみんなで散策して。
買い物とかここでできるね・・・なんて言って。
まだ昼間だったけど・・・海の近くでビールで乾杯した。
智は。
なんか・・・帰国したばかりで・・・ちょっとさっぱりしたいから・・・なんて言って。
僕たちが飲んでいる間・・・すぐ近くで髪を切りに行って。
向こうでは・・・自分で髪を切ってたらしくて。
久しぶりに人に切ってもらったのがだいぶ気持ちよかったみたいで。
もうすでに飲み始めている僕たちを横目で見ながら。
しっかり切ってもらったって・・・言ってた。
少し切り過ぎた髪を・・・まーくんがいじり///。
翔ちゃんも・・・ここ切りすぎじゃね?なんて言ってて///。
でも潤君は似合うよって言ってくれて。
僕もちょっと切りすぎだって思ったんだけど。
まあ・・・スッキリしていいかなって。
そう思った。
引っ越しが終わった昨夜は・・・ちょっと部屋割りでもめたけど///。
初めての夜を五人で過ごした。
パスタ食べたり。
ビール飲んだり。
とにかく初日からにぎやかで///。
マンションとかだとクレーム来ちゃうよ///って思って。
一軒家でよかった・・・って思ったんだ。
どうして智と僕にはシェアハウスの件内緒だったの?って聞いたら。
翔ちゃんが答えてくれた。
智と僕は絶対に愛し合ってるって思ったけど。
万が一・・・再会で二人の仲がダメになったら。
この話はなかったことにしよう・・・と。
三人でそんな相談をしていたんだって。
上手くいったらサプライズってことにしよう・・・って。
そもそも。
なんでシェアハウス?って聞いたら。
五人の夢だったろ?って言われた。
そう言えば・・・うん。
シェアハウスしようって言い出しっぺはまーくんだったけど。
五人で絶対にしようねって。
約束したような気がする。
あの頃の・・・五人の夢。
叶ったんだね。
なんか・・・智は一人静かで。
ずっと静かで。
だから・・・どうしたの?って聞いたら。
こんな幸せでいいのかな・・・って。
ぼそっと言う。
それを聞いて・・・真顔になるまーくんと。
ちょっと笑っちゃう翔ちゃん。
潤君はもう・・・酔っぱらっちゃってて・・・ケタケタ笑うだけだったけど///。
いいのよ幸せで・・・って僕が言ったら。
やっと・・・幸せを飲み込んでくれたのか。
じゃあ乾杯ね・・・なんて言って。
やっと笑ってくれた。
男同士の付き合いに・・・罪悪感を持っている様子の智。
気持ちはわかるけど・・・だって僕も同じだから。
でもそれよりも。
一緒にいられる喜びの方が大きいから・・・だから。
それを感じてくれたらいいのに・・・と。
それこそこれからの僕の役目なんだろうな・・・と。
そんなこと思った。
「ただいま!」
四人が・・・買い物から帰ってきた。
とたんににぎやかになる家。
僕も・・・現実に引き戻される。
それから・・・ささっと・・・引っ越しの片づけをして。
で・・・もう。
なんかまーくんが。
変なジュースを買ってきたみたいで。
それを・・・飲みたくて飲みたくてしかたないみたいで。
全然片付けが終わらないよ///と言いつつ。
五人でリビングに座る。
座っちゃったらもう・・・終わりで///。
もうね・・・女子?っていうくらい・・・おしゃべりが止まらない///。
買ってきた変なジュースをみんなに勧めるまーくん。
僕はもう・・・匂いをかいだだけでヤバイなってわかって。
でも・・・何気に興味深そうに見ている智。
チャレンジャーな潤君は・・・トップバッター。
でも・・・かなりすっぱかったらしい。
続く翔ちゃんも。
わかっていたはずなのに・・・すごい量を口にいれるから///。
危なく出しそうになってた。
これ罰ゲームのヤツじゃん!・・・って大騒ぎする翔ちゃん///。
僕は・・・僕も飲もうと思ったら。
智が・・・和は飲まなくていいよって言ってくれて。
すっと・・・僕からコップを受け取り飲んだ。
なんか・・・飲んだ後我慢してたけど。
ホントはすごくすっぱかったと思う///。
鼻がピクピクしてたから///。
まーくんが急に・・・僕に聞く。
「そう言えばさ。和のインスタのハンドルネームって・・・なんだったの?」
って。
僕は。
・・・。
・・・。
ちょっと恥ずかしくて。
だから・・・答えようかどうしようか・・・迷ってたんだけど。
「和のインスタのハンドルネームはね・・・。」
・・・と。
智が静かに話し始めたから・・・だから。
もう・・・覚悟を決めた。
「カイト。」
「・・・え・・・?」
「カイト・・・Kite・・・で・・・カイト。」
「・・・。」
「すぐわかったよ俺。和だって。」
「・・・。」
しん・・・となるリビング。
多分みんな・・・一瞬だけど。
あの幼い日の・・・河川敷に。
あの河川敷にいた瞬間に・・・戻ったと思う。
智と同じ歳なら同じことできるもん・・・と言う負けん気の強い翔ちゃん。
すげぇ・・・とカイトを見上げる素直なまーくん。
もっと上いくかなぁ・・・と工夫をこらす潤君。
そして。
「和。はい。」
・・・と智から糸を渡される僕と。
その後ろで・・・僕を見守る智。
・・・。
・・・。
幼かった五人が。
みんな・・・同じ場所へと帰ってきた。
糸のつながった先へと。
帰ってきたんだね。
「あれ・・・カイトじゃね?」・・・と智が言い立ちあがるから。
翔ちゃんもあとに続く。
まーくんは・・・わぁ・・・と嬉しそうに声をあげ。
潤君もそれをじっと見つめる。
僕もネコを抱き・・・縁側に座った。
海岸で上げているカイトが見える。
ホントに・・・ここは。
いい場所だった。
「そう言えばさ!」
まーくんが元気に言う。
「見せてよ!お絵かき帳!リトルリーグの頃のやつ!」
「ぇ///あれは・・・ないよここには。」
「え~ないのぉ?見たかったなぁ・・・大ちゃんの描いた絵。」
「家に置いてきた。」
「ホントぉ?」
「ホント・・・マジ置いてきた。」
それは・・・ホントみたい。
恥ずかしいみたいで・・・僕にも未だに見せてくれない。
いつか・・・いつか見せてもらおうと思っているけど・・・でも。
小学生の頃に描いた絵だし。
相当恥ずかしいみたいだから・・・今回は・・・ね///。
「ねぇ智。」
「・・・ん?」
「別の絵ならいいんじゃない?」
「・・・。」
「智が書いた僕の絵・・・みんなに見て欲しいなぁ。」
「・・・そう///?」
「いい?みんなに見せても。」
「ぅん・・・じゃあ・・・いいよ///。」
照れくさそうに言う智。
僕は・・・部屋からお絵かき帳を持ってきた。
渡米中にも智が描きためていた絵。
風景や人物や・・・抽象画が多いんだけど。
いろんな絵がある中で。
ちらほら出てくる僕の絵。
中でも・・・僕の一番のお気に入りが載っているお絵かき帳を持って・・・部屋を出た。
縁側で待っている三人に見せる。
「へぇ・・・。」
「おぉ・・・。」
「和・・・だな。」
三人それぞれの反応。
それは・・・向こうで描いたんだよ・・・と言う智。
想像で描いたの?・・・と言うまーくん。
やっぱすげぇわ・・・と言う翔ちゃん。
愛だな・・・と言う潤君。
僕も。
この絵からは・・・愛を感じる。
一日たりとも・・・和のこと忘れたことはないから・・・と。
智に言われ。
それは本当なんだろうな・・・と。
だってこの絵が。
それを証明してくれているから。
智の。
優しい優しい絵。
僕も。
こんな風に・・・包み込むように智を愛していきたい。
智の夢を・・・応援したい。
智だけじゃない。
ここにいる僕の大事な人達の願いが。
あの日のカイトのように。
どんどん高く・・・空へと昇っていきますように。
そう・・・祈っている。
でも。
帰る場所はここ。
それは・・・忘れないでね。
そして帰ろう
その糸のつながった先まで
FIN
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