こちらは「暁」「三日月」「Japonesque」の続編でございます。
もしまだ未読の方がいらっしゃるようでしたら。
「暁」「三日月」「Japonesque」を先に読んでいただきますようにお願いいたします♪
↓
大宮さんBL前提のお話です。
苦手な方はご注意を///。
〜* 〜* 〜* 〜* 〜* 〜* 〜*~
昨夜の激しさのせいだろうか。
まだ明るい日の光が降り注ぐ中なのに。
和也は・・・その身を舞台に横たえ。
寝息もたてず眠っている。
ここは・・・あの山の中。
竹林のすぐそばの・・・この舞台。
森の精に言われ。
和也にも・・・連れて行ってくださいと請われ。
ここに二人でやってきた。
しかし。
さっきから精霊たちの声が聞こえない。
篝火を小さくたいて・・・器に水を注ぎこんだが。
それでも聞こえなかった。
こんな事は初めてだったけど。
もしや昼間だから。
だから聞こえないのか・・・と。
そんな事もあるのか・・・と思い。
ぼんやりと空を見ていた。
つい先ほどの出来事を思いだす。
和也と二人あの貴族の屋敷に行った時の事。
久しぶりに会ったあの貴族の顔には死相があった。
もう・・・長くはないだろう。
彼は・・・和也に3年前の非礼を詫び。
そして・・・私に改めて和也を託した。
それから。
私だけに耳打ちをした。
・・・私がなくなったら・・・金子を受け取って欲しい・・・
・・・と。
和也へ遺産を渡すつもりのようだった。
受け取りにくい金子だが。
これが・・・きっと。
この方の・・・和也への愛情表現なのだろう。
死にゆく者の願いならば。
何が何でも聞いてやるべきだ。
私は安心させるように。
わかりました・・・と申し上げた。
眠る和也を見下ろす。
あの貴族と・・・こんな約束をしてしまって。
和也は怒るだろうか。
この・・・小さな口をとがらせ。
少しとがめるように・・・私を見つめる和也が想像できる。
ふわっと。
その和也の髪をなで。
そして・・・その頬に触れた。
それにしても纏う空気が重い。
あの・・・貴族の屋敷を出てからだ。
町を覆っている雲も。
心なしか昨日よりも厚みを増しているように感じる。
そして。
この身にまとわりつく重い空気。
肩にずっしりと重さを感じる。
まさか。
いや・・・もしや。
・・・。
・・・。
よもやの想像に。
急に息苦しさを感じる。
なぜ・・・今まで気づかなかったのか。
精霊たちの声が聞こえない不自然さに・・・どうして気づかなかったのか。
私は。
両手を合わせ。
急いで・・・小さく念を唱え始めた。
亡くなった父親に最初に教わった。
この・・・悪霊退散の念。
難しい念だったが。
これで・・・ほとんどの悪霊は払えるはずだ・・・と。
教わっていた。
足を組んで手を合わせ。
目を閉じ心を静め。
一心不乱に。
念を唱え続けている・・・と。
次第に空気が軽くなり。
肩の荷が下りたように楽になった。
そして。
・・・智!・・・智!・・・
・・・聞こえますか?・・・
・・・おい!返事をしろ!!!・・・
精霊達の。
大きな声が聞こえた。
・・・まさか・・・憑りつかれるとはな・・・
・・・ええ・・・でもよかったです・・・
・・・びっくりしたよ・・・呼んでるのに返事しないから・・・
火の精の驚きの声と。
水の精の安堵の声と。
森の精の泣きそうな声。
心配をかけて・・・すまない・・・と詫びた。
眠る和也の風にそよぐ髪の毛をなでる。
無事で・・・よかった。
気づけて・・・よかった。
・・・じゃあ・・・その貴族が魔の者に憑りつかれてるって事?・・・
・・・そう考えるのが妥当ですね・・・見舞いに行った時に一部にのりうつられたのでしょう・・・
・・・でも・・・どうして私に憑りついたのだ?・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・そもそも・・・狙いは智なのかもな・・・
火の精の言葉に。
他の精霊達が息をのんだ。
火の精は続けて言う。
智には・・・大きな力がある・・・と。
その力は・・・きっと魔の者が喰らうと。
強大な力に変わり。
この世界を支配できるまでになるのだろう・・・と。
・・・じゃあ・・・あの貴族に憑りついたのは・・・
・・・智をこの町におびき寄せるため・・・という事ですか・・・
・・・そう考えるとつじつまがあう・・・
・・・決めつけるのはまだ早いでしょう・・・
・・・でも・・・
精霊たちが・・・話を進めているのを。
私は・・・信じがたく聞いていた。
正直・・・自分にそれだけの力があるとは思っていない。
私なんかよりも・・・力のある陰陽師がこの町にもたくさんいると思っている。
でも・・・そう。
先ほどの・・・あのまとわりつくような空気は。
今思うと・・・魔の者の念だったように思う。
精霊達の声が聞こえなかったのも。
それならば納得がいく。
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つづく