心の空~4 | ナツコのブログ

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こちらは「暁」「三日月」「Japonesque」の続編でございます。

 

もしまだ未読の方がいらっしゃるようでしたら。

 

「暁」「三日月」「Japonesque」を先に読んでいただきますようにお願いいたします♪

 

 

『「暁」はこちらから♪』

 

『「三日月」はこちらから♪』

 

 

 

 

 

 

大宮さんBL前提のお話です。

 

苦手な方はご注意を///。

 

 

 〜* 〜* 〜* 〜* 〜* 〜* 〜*~

 

 

 

 

 

 

昨夜の激しさのせいだろうか。

 

まだ明るい日の光が降り注ぐ中なのに。

 

和也は・・・その身を舞台に横たえ。

 

寝息もたてず眠っている。

 

ここは・・・あの山の中。

 

竹林のすぐそばの・・・この舞台。

 

森の精に言われ。

 

和也にも・・・連れて行ってくださいと請われ。

 

ここに二人でやってきた。

 

しかし。

 

さっきから精霊たちの声が聞こえない。

 

篝火を小さくたいて・・・器に水を注ぎこんだが。

 

それでも聞こえなかった。

 

こんな事は初めてだったけど。

 

もしや昼間だから。

 

だから聞こえないのか・・・と。

 

そんな事もあるのか・・・と思い。

 

ぼんやりと空を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つい先ほどの出来事を思いだす。

 

和也と二人あの貴族の屋敷に行った時の事。

 

久しぶりに会ったあの貴族の顔には死相があった。

 

もう・・・長くはないだろう。

 

彼は・・・和也に3年前の非礼を詫び。

 

そして・・・私に改めて和也を託した。

 

それから。

 

私だけに耳打ちをした。

 

 

 

   ・・・私がなくなったら・・・金子を受け取って欲しい・・・

 

 

 

・・・と。

 

和也へ遺産を渡すつもりのようだった。

 

受け取りにくい金子だが。

 

これが・・・きっと。

 

この方の・・・和也への愛情表現なのだろう。

 

死にゆく者の願いならば。

 

何が何でも聞いてやるべきだ。

 

私は安心させるように。

 

わかりました・・・と申し上げた。

 

眠る和也を見下ろす。

 

あの貴族と・・・こんな約束をしてしまって。

 

和也は怒るだろうか。

 

この・・・小さな口をとがらせ。

 

少しとがめるように・・・私を見つめる和也が想像できる。

 

ふわっと。

 

その和也の髪をなで。

 

そして・・・その頬に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても纏う空気が重い。

 

あの・・・貴族の屋敷を出てからだ。

 

町を覆っている雲も。

 

心なしか昨日よりも厚みを増しているように感じる。

 

そして。

 

この身にまとわりつく重い空気。

 

肩にずっしりと重さを感じる。

 

まさか。

 

いや・・・もしや。

 

・・・。

 

・・・。

 

よもやの想像に。

 

急に息苦しさを感じる。

 

なぜ・・・今まで気づかなかったのか。

 

精霊たちの声が聞こえない不自然さに・・・どうして気づかなかったのか。

 

私は。

 

両手を合わせ。

 

急いで・・・小さく念を唱え始めた。

 

亡くなった父親に最初に教わった。

 

この・・・悪霊退散の念。

 

難しい念だったが。

 

これで・・・ほとんどの悪霊は払えるはずだ・・・と。

 

教わっていた。

 

足を組んで手を合わせ。

 

目を閉じ心を静め。

 

一心不乱に。

 

念を唱え続けている・・・と。

 

次第に空気が軽くなり。

 

肩の荷が下りたように楽になった。

 

そして。

 

 

 

   ・・・智!・・・智!・・・

 

 

 

   ・・・聞こえますか?・・・

 

 

 

   ・・・おい!返事をしろ!!!・・・

 

 

 

精霊達の。

 

大きな声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ・・・まさか・・・憑りつかれるとはな・・・

 

 

 

   ・・・ええ・・・でもよかったです・・・

 

 

 

   ・・・びっくりしたよ・・・呼んでるのに返事しないから・・・

 

 

 

火の精の驚きの声と。

 

水の精の安堵の声と。

 

森の精の泣きそうな声。

 

心配をかけて・・・すまない・・・と詫びた。

 

眠る和也の風にそよぐ髪の毛をなでる。

 

無事で・・・よかった。

 

気づけて・・・よかった。

 

 

 

   ・・・じゃあ・・・その貴族が魔の者に憑りつかれてるって事?・・・

 

 

 

   ・・・そう考えるのが妥当ですね・・・見舞いに行った時に一部にのりうつられたのでしょう・・・

 

 

 

   ・・・でも・・・どうして私に憑りついたのだ?・・・

 

 

 

   ・・・・・・・・・  

 

 

 

   ・・・・・・・・・

 

 

 

   ・・・そもそも・・・狙いは智なのかもな・・・

 

 

 

火の精の言葉に。

 

他の精霊達が息をのんだ。

 

火の精は続けて言う。

 

智には・・・大きな力がある・・・と。

 

その力は・・・きっと魔の者が喰らうと。

 

強大な力に変わり。

 

この世界を支配できるまでになるのだろう・・・と。

 

 

 

   ・・・じゃあ・・・あの貴族に憑りついたのは・・・

 

 

 

   ・・・智をこの町におびき寄せるため・・・という事ですか・・・

 

 

 

   ・・・そう考えるとつじつまがあう・・・

 

 

 

   ・・・決めつけるのはまだ早いでしょう・・・

 

 

 

   ・・・でも・・・

 

 

 

 

精霊たちが・・・話を進めているのを。

 

私は・・・信じがたく聞いていた。

 

正直・・・自分にそれだけの力があるとは思っていない。

 

私なんかよりも・・・力のある陰陽師がこの町にもたくさんいると思っている。

 

でも・・・そう。

 

先ほどの・・・あのまとわりつくような空気は。

 

今思うと・・・魔の者の念だったように思う。

 

精霊達の声が聞こえなかったのも。

 

それならば納得がいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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つづく