大宮さんBL前提のお話です。
苦手な方はご注意を///。
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Side.N
「あなたは本当に純粋で・・・。」
「・・・。」
「だから・・・。」
「・・・。」
「つまり俺は・・・。」
「・・・。」
「あなたに・・・。」
「・・・。」
「惚れています。」
ハッキリと言われ。
どきっとする。
って言うか今///?
この盛り上がりの中で告白?
一瞬・・・大野さんを見てしまって。
じっと見つめ合う。
でも・・・突然。
わぁっ!!!・・・という悲鳴にも似た歓喜の声が聞こえ。
スタンドが揺れる。
グラウンドに目を移す・・・と。
バッターだった子が手を大きくあげてダイヤモンドを一周している。
その姿を見て。
ホームランを打ったんだ・・・と知る。
僕も・・・立ち上がり。
やった・・・勝った・・・と。
同じように隣で・・・立ち上がった大野さんに思わず抱きついた。
「やったぁ・・・勝った!」
「二宮さん。」
「え・・・?・・・あ///。」
ぎゅっと抱きしめられ。
耳元でささやかれる。
「俺を・・・待っていてくれますか?」
ふるっと。
大野さんの身体が震える。
「何も・・・約束もできなくて・・・。」
「・・・。」
「ただ・・・待たせてしまうだけで・・・。」
「・・・。」
「でも。」
「・・・。」
言葉につまる大野さん。
自然に・・・その背に手が伸び。
そっとさすった。
「俺は・・・。」
「・・・。」
「あなたを・・・帰る家にしたい。」
ぎゅっと。
抱きしめられた。
もう・・・怖くなっている。
この人をなくすのが怖い。
もしこの人を受け入れたら。
仕事に出るたびに。
もう帰ってこないかもしれない・・・と。
この人を待つ日々が・・・この先続くことになる。
僕は・・・耐えられる?
そんな恐怖に・・・耐えられる?
さらには。
同性との恋愛。
どんな未来が待っているのか。
全然・・・見当もつかない。
でも・・・そう。
僕に・・・しがみつくようにして。
僕を抱きしめる大野さん。
今僕の頭に浮かぶのはこの人が「好き」という思いだけ。
どんな未来が待っていても。
そう。
ただただ。
・・・。
・・・。
純粋な・・・「好き」の気持ちだけだった。
ぎゅっと。
僕からも・・・抱きしめた。
「あなたを待ちます。」
「・・・。」
「ずっと・・・待ってる。」
ウゥゥゥ・・・と大きなサイレンが鳴る。
試合終了だ。
その瞬間。
ぶわっと・・・急に激しい風が吹く。
体ごと持っていかれそうになり・・・ふわっと傾くけど。
くいっと。
僕を抱く大野さんの腕に力がこもり。
支えてくれた。
「疾風・・・ですね。」
「はやて?」
「はい・・・疾風(しっぷう)と書いてハヤテと読みます。」
「・・・。」
「急に吹く強い風の事・・・ですね。」
「へぇ・・・。」
「今のは・・・夏疾風・・・。」
「なつはやて?」
「はい。夏の疾風なので。」
「・・・。」
夏疾風。
綺麗な言葉。
生徒たちが整列し校歌を歌う。
僕も・・・僕達も離れ・・・グランドへと目を向けたまま立ち。
隣の大野さんに話かける。
「大野さん・・・物知りなんですね。」
「・・・そうでもないです。」
「でも・・・疾風とか・・・僕全然知らな・・・」
「知らないことも多いです。」
「・・・。」
「例えば。」
きゅっと。
手を引かれ。
身体がよろめき。
トン・・・と大野さんの胸で止まる・・・と。
そのまま・・・耳元で囁かれた。
「あなたのこと。」
「・・・え・・・///。」
「もっと・・・知りたい。」
「///。」
その声のトーンとセリフに。
かぁっと・・・体の熱があがる。
・・・と。
グラウンドを走りアルプススタンドに駆け寄ってくる選手たち。
整列して礼をするから。
その姿に手を振り拍手を送る。
・・・と。
その一瞬で・・・隣の大野さんがいなくなった。
振り向いても。
どこにもいない。
まるで。
疾風のような人。
僕は・・・うん。
今日の日を忘れない。
まぶしすぎる夏の日差し。
新たな息吹を告げる風の音。
どこまでも続く蒼空。
そして。
夏疾風。
視線をグランドに向け。
手にしたキャップを嬉しそうに。
大きくアルプススタンドに振る選手たちに。
僕も・・・大きく手を振り返した。
.
つづく
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作者のナツコです。
読んでくださって、ありがとうございました。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです♪