妖精学園高等部2年A組所属のグレイは、
不本意にもナツと顔を合わせることが多い。
「よぉ。 朝からお熱いことで」
「グレイ!!」
「ぐ、グレイ先輩!?」
そんな冷やかし交じりの挨拶から始まり、
喧嘩に発展しそうになったところで
用事を思い出す。
ナツから早々に逃げ去り、
自分の教室にではなく、1年生のクラスへ向かう。
『1-B』と書かれた表札のクラスの前を通る。
通りすがるようにしてクラスの中を見る。
グレイの目的は、窓際最後列。
煌めく金髪と整った容姿、
才色兼備で有名の女の子、ルーシィである。
入学式で見かけて以来、
グレイはルーシィが気になって仕方がないのである。
そのため、本当はこんなストーカーまがいの
ことはせずに話しかけたいのだが……
「あっ!! グレイ様!!グレイ様よ!!」
「げっ…………」
「え本当!? きゃああぁぁっっ!!」
「うおおぉぉおおぉっ!!」
……といった具合に、
いつも何故か女子生徒に追いかけ回されるのである。
何かをしたわけではない。
(何だってンだ一体………!
俺なんかしたかァ!?)
そしてグレイは全力で自分の教室に駆け込むのである。
そんな日常。
少しさかのぼって
1年B組教室内。
「ルーちゃんルーちゃん!」
ルーシィの親友、レビィが駆け寄ってくる。
「あ、お早うレビィちゃん。
どうしたの?」
「さっき、グレイ先輩がここに来ていたみたいだよ!
相変わらずの人気ですぐに居なくなっちゃったみたいだけど」
「本当?
来てたんだぁ……あたしも一目見たかったな………」
「なんかねぇ、このクラス覗いてたって」
「うちのクラスに何で!?
お目当ての人でも探してたのかな」
「……案外、ルーちゃんだったりして」
「え!? それは無いよレビィちゃんっ」
「解らないよ? ルーちゃん美人で頭いいから
結構人気高いんだよ? 知らないの?」
「でも、グレイ先輩ならもっといい人が
そばに居そうじゃない………」
ルーシィは一つため息をつくと、
窓から空を眺めた。
(想うのは自由でも、高望みをする訳にはいかないよ)
ルーシィもまた、グレイに一目惚れである。
「そういえばルーちゃん?
『妖精祭』の相手は決まった?」
『妖精祭』というのは妖精学園伝統の夜会で、
学年問わずにパートナーを選び、
社交ダンスや料理、出し物をペアで楽しむのである。
申請すれば他校生を選ぶことも可能であり、
また一人で参加することもできる。
その気になれば選んだペアを放って
他のペアに乗り換えもできる。
「まだだけど………
レビィちゃんは? やっぱりA組のガジル?」
「えっなっ何で解ったの!?」
「だってぇ……レビィちゃん絶対ガジルが好きでしょー?」
「そ、そんな事ないってば!
ただ私は誘われないだろうし、
あっちも決めてないって言ってたから……!」
「はいはい、もー授業始まるよー」
「あっ! ヤバッ」
レビィは急いで自分の席に戻って行った。
(妖精祭かぁ………)
ふと、ルーシィの頭を
グレイの顔がよぎった。
(駄目駄目! 絶対もう相手決まってるって!!)
それから一週間。
グレイもルーシィもお互いに話もせず、
毎日ただ一人想いを募らせるだけであった。
「グレイ~あんたまだあのルーシィって娘、
誘ってないの?」
「うるせ。 いつも邪魔が入んだよ」
「有無を言わさず突き進んで、言うだけ言って
帰ってくればいいじゃないか」
「相手の都合もあんだろ。
絶対ぇもう相手決まってるだろ」
「あんたのこと待ってるかもしれないじゃないか」
「いーや、あんな奴、ほかの男が目を付けない訳ねーだろ」
話しかけてきたカナはしばらく考え込む。
「でも……その娘、今までの誘い全部断ってるみたいだよ?」
「本当か!!」
「……てか、服は?」
「はっ? ……うおぁっ!!? いつの間に!!?」
「さっさと探して来な、センセーにゃアタシから言っておくから」
教室を出て行ったグレイは、心当たりがあるところを探し回っていた。
そして、1年生のクラスがある校舎付近の中庭に、
誰かがいることに気付く。
近寄ってみると、そこに居るのは
ルーシィだった。
「あ……グレイ先輩!?」
「え、俺の名前知って……!?」
「あ、はい。 先輩は有名ですし、毎朝私のクラスに来ているようですし」
「……あ、あぁ……てかもう授業始まってんぞ?
何してんだ、こんな所で」
「こ、これ……先輩のですよね」
差し出されたのは、ついさっきまで探していた、
グレイの制服である。
「おお! 見つけてくれたのか!
サンキュ!!」
早速受け取り、袖に腕を通す。
そして気づく。
(もしかして今、チャンスじゃね!?)
周りに邪魔者はおらず、目の前には気になる少女。
心を決めて、拳を握る。
「あ、あのさ、ルーシィ!」
「えっ、あ、はい?」
(あたしの名前、知っててくれた……!)
「えっと、妖精祭、の、ペアにならないかっ?」
「えっ?」
ルーシィにとって思いがけない言葉。
望んでいた事ではあるが、夢のようなことだと、諦めていたのである。
一方グレイは、言ってしまったという思いと、
断られたらという不安でいっぱいだった。
「……よ、喜んで………」
ぽつりとルーシィは答えた。
グレイは心底嬉しそうな顔をしてお礼を言いながら去って行った。
ルーシィも、勿論同じ気持ちである。
そして妖精祭当日。
ルーシィは今までで一番気合を入れておめかしした。
その美しさに、パートナーと一緒のはずの
男性どころか、女性までも惹き付けている。
さらにはパートナーを捨てて話しかけてくる奴もいる。
「ねぇきみ、俺と踊らない?」
「………いいえ、私、パートナーがいるので……」
「いいからいいから。
君みたいな娘放って置く男なんて……」
ナンパ男が御託を並べている中、
ルーシィは待ち人の姿を確認する。
「あっ!! グレイ先輩!!
こっちです!!」
「はっ……ぐ、グレイ!?」
ルーシィは満面の笑みでグレイに駆け寄る。
「よぉ…遅くなっちまったな」
「いいえ、大丈夫です」
「そうか……?
じゃ、行くか、お姫様?」
「っっ………はいっ」
差し出された手を掴み、会場内を歩き回る。
イケメンで有名のグレイと、美少女で有名のルーシィ。
会場内のほとんどがお似合いだと感じてしまう。
そんな中、ルーシィは違和感を感じた。
グレイが、目を合わせてくれないのである。
ルーシィはずっとグレイを見ていた。
ならばグレイがこちらを見たらすぐ目が合うはず。
しかし、目があったのは最初だけで、
歩き始めてからは一度も目が合わない。
(似合って…無いのかな? この格好……
それとも、あたしが嫌い……?)
グレイから誘ってきた以上は、
ルーシィを嫌っている筈はないのだが、
どうしてもその考えに行きついてしまう。
「あ――――――!!
グレイ様!!」
突然の大声に振り返ると、そこには
グレイのそばに居たくて転校してきた変わり者、
そしてルーシィの(多分)友達のジュビアである。
友達と言っても、ルーシィがそう思っているだけで、
実際のジュビアは嫉妬の炎で燃えていたのだが。
「ジュビア、感激です!!
グレイ様のいつもと違う姿が見られてっっ!!」
「そ、そうなのか」
「そうです!!
グレイ様、ジュビアと踊りませんか!?
1曲だけでいいんです!! お願いします!!」
目を爛々と輝かせ、詰め寄るジュビア。
グレイは少し後ろに引きながら話を聞いている。
「いや俺、パートナー居るし………」
「お願いします! 1曲だけでいいんです!!」
「踊ってきたら如何ですか?
ここまで頼んでいるんですから」
全く感情のこもらない声でルーシィは
グレイをジュビアに預ける。
「おい、あんまり離れんなよ?
俺たちはパートナーなんだし」
「解っていますよ
ちゃんと近くに居ます」
いつもは嫉妬に燃えるジュビアだが、
今回はルーシィのお陰でグレイと踊れるようなものなので、
それとグレイと踊れる嬉しさで、ルーシィに対して敵意を向けなかった。
ジュビアと踊り始めたグレイを確認すると、
ルーシィは無表情のまま外に出た。
あまりにも無表情なので、話しかけるような
空気を読めない人間はいなかった。
「グレイ先輩………
私のこと、何で誘ったのかなぁ」
「そんなの、タダの気まぐれに決まっているじゃない」
独り言のつもりが、誰かに聞かれていたらしい。
振り返ると、数人の女子(全員先輩)が
ルーシィを睨んでいた。
「ふーん……あんたがルーシィね」
「胸デカっ」
「ちょっと可愛いだけじゃない、男子はこんな女の何処が良いのかしらね?」
「あれじゃない? このスタイルじゃない?」
「あと媚び売ってるとか?」
「成程、それで人が好いグレイ様が引っ掛かったってこと?」
「うわ、最低じゃん、それ」
ルーシィはただ無表情で
言いたい放題の先輩を見つめるだけである。
先輩たちは楽しそうにルーシィをバカにしていたが、
その視線に苛立ちを感じたらしい。
「何コイツー睨んでるよー?」
「先輩への礼儀がなってないよねぇ」
「普通さ、こういうチャンスは先輩に譲るものなのにね」
「そんな女は―――これでも浴びてなさいっ!」
先輩の一人がどこからともなく取り出したビンには、
透明の液体が入っていた。
ふたを開け、乱暴にルーシィに浴びせる。
中身は、硫酸。
大事にならない様に、水で薄めてはあるようだが、
それでも頭をかばった袖や裾はボロボロになってしまった。
「あっ……ママの、形見が………!」
「あんたがどれだけ可愛くてもさ、
普通そんなボロボロの服を着た女と一緒に居たくはないよね~」
「………っ!!」
「人前に出るのも嫌だよね、
これであんたはもう会場に入れない」
「じゃあね~」
先輩たちは心底楽しそうに去って行った。
ルーシィは、悔しさで顔を歪ませ、その場に座り込んだ。
遂には堪えきれなくなり、涙が出てくる。
「うっ…………う、うぅ……ひっく、グス……………」
ボロボロの袖を顔に当てながら一人で泣く。
きっとこのまま帰れば、
あの先輩たちがグレイにある事無い事吹き込むだろう。
そして、ルーシィはパートナーを捨てて帰った女だと思われる。
嫌われていると思われる可能性もある。
グレイはもう自分に見向きもしないかも知れない。
それでも、ルーシィは会場に入りたくは無かった。
今入れば、グレイのパートナーはこんな惨めな女だと思われる。
不釣り合いだと思われる。
グレイだって、こんな女と踊りたくはないだろう。
帰っても入ってもいい思いはしない。
ルーシィはただそこに留まることしか出来なかった。
「…ルーシィ?」
ふと、声をかけられた。
そこに居たのは、息を切らしたグレイだった。
「お前、何で……ここに、いんだよ………
探したじゃねぇか………」
息が切れているため、言葉が絶え絶えになる。
グレイは一度、呼吸を整えてから話しなおす。
「お前は近くに居るって言ったじゃねぇか
居なくなんなよな、行くぞ」
差し出された手を、ルーシィは掴まない。
「……どうした?」
「駄目です……このまま中に入ったら、グレイ先輩に迷惑をかけます」
「何で―――ってお前、その格好如何した!?」
グレイは今頃、ルーシィのドレスの惨状に気付いたらしい。
「何でもありません……ですが、私はこのまま帰ります。
先輩は別のパートナーを選んでください」
立ち上がり、その場を去ろうとする。
しかし、腕を掴まれ、前に進めなくなる。
「グレイ、先輩…………?」
「帰んなよ、俺はまだお前と踊ってねぇぞ」
「でも、この格好じゃあ………」
「気にすんな。
それでも駄目ならここで踊ろう
音楽も聞こえるし、まだみんな中だ」
「如何して、そこまで」
(貴方は優しいのだろう)
「え、いや、その…………好き、だから………」
「えっ?」
「ああもう! お前結構鈍感だな!!
俺は!お前に!惚れてるってことだよ!!」
「えっ……あっ……え?」
ルーシィは真っ赤になりながら困惑する。
(今、何て言った?)
グレイは真っ赤になりながら続ける。
「折角誘えたのにお前は居なくなるし、
邪魔は入るし、お前は帰るって言い出すし………」
「ご……ごめんなさい」
「いや別に良いけどよぉ………」
ルーシィはじっとグレイを見つめる。
視線に気づいたらしいグレイは、視線を逸らす。
「グレイ先輩」
「……何だ」
「私も、グレイ先輩が好きです」
「!!」
「そうじゃなきゃ、お誘いを全て断った私が、
グレイ先輩の手を取ったりはしないでしょう?」
「……それもそうだな」
ルーシィはにっこりと笑う。
さっきまでの無表情とは打って変わり、
本当に可愛らしい笑顔である。
「そういえば先輩」
「何だ?」
「何で今日、私を見てくれないんですか?」
「………お前が、あまりにも、可愛い、から………」
「そうですか♡」
「もういいだろ…
Shall we dance、姫さん?」
「…喜んで、王子様」
王子様の手を取って。
二人は優雅に舞い続けた。
~Fin~
少し遡って、ルーシィがその場を離れて少ししたとき。
「グレイ様、お気づきですか」
「何にだ」
「ルーシィがいません」
「……そうだな」
「探してください
あの子はグレイ様のパートナーです」
「行っていいのか?」
「ジュビアは1曲踊れただけで幸せです」
「……ありがとな、ジュビア」
「はい♡」
ジュビアはにっこりと笑ってグレイを見送った。
彼の背中が消えると、途端に悲しそうな顔になる。
「行っちゃってよかったの、ジュビア?」
「あんなにルーシィに嫉妬していたじゃないか」
「レビィさん、カナさん
……良いんです」
悲しみに少し歪んでいたが、精いっぱいの笑顔を作る。
「ジュビアはグレイ様が大好きだけど、
グレイ様はルーシィじゃなきゃ駄目なんでしょうね
ルーシィといるときのグレイ様は本当に素敵でした」
「そうなの?」
「そうです。
それにあの子はこの学校に来て初めてのお友達です。
ガジル君もいたけれど、
あの子はこんなジュビアを真っ先に受け入れてくれました」
「惚気話を聞かされるかもよ?」
「そこは、頑張ります。
あと、ジュビアはグレイ様を諦めた訳ではありませんからね?」
「そうなの?」
「隙あらばいつでもグレイ様を狙います」
ジュビアの眼は輝いていた。
フラれて沈むのではなく、それでも前を見て進むタイプらしい。
カナはため息を一つついて、
先生専用の席からこっそり拝借してきたらしいワインに口を付ける。
「……強いね、ジュビアは」
「そうですね…これからも、二人を見守っていきましょうね」
「だね」
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
な、長い………!!
僕はどれだけグレルー好きなんでしょうね。
まあグレイとルーシィが話している………いや、
もう同じコマに居るだけでキュンキュンします。
最後ですが、僕は
ジュビアを良い子にしたかっただけです御免なさい。
実際はこんなこと言わなそうですよね、彼女は。
そしてグレイが小説を通して
一回しか脱がない…だと……!?
原作ではありえない……!
まぁ、僕に文才が無いのはいつものことです。
見逃してください。
さて、次は誰を書こうかな。
ジェラエルも良いけれど、ミスウェンも書きたいです。
まぁ、お楽しみってことで、それでは~。