第171号 生きてゐてほしかった安倍晋三氏 | 燃え上がれ!NATTO-TIMES 21st century

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  安倍晋三氏が銃撃を受けて死亡した。呆気ない他界であった。さぞ無念であったことだらう。ご臨終の心中をお察し致す。

 

 犯人は、もと海上自衛官の41歳男性だとのことで、理由は不明だ。映像で見る限り小柄で、取り押さへられたとき無抵抗だったことからは、背後に何らかの組織が絡んでゐることが推測される。

 

 どんな理由にせよ殺すべきではなかったし、安倍晋三氏にはできる限り長生きしてほしかった。

 

 人殺しはいけないなどと言ってゐるわけではない。人を殺してはいけないなどといふのは、宗教的信条に過ぎない。そんなことを言っても人殺しは止まないし、戦争は起こるのだ。

 

 殺してはいけないといふならば、蚊も叩けないし、食べ物を口にすることもできない。法治国家では人を殺せば犯罪になり、罪を償はねばならない。例外は、戦争と死刑。それだけのことだ。

 

 重要人物の暗殺は歴史上、枚挙に暇が無い。近代日本史に残る暗殺でも、たちどころに4つもの例を挙げることができる。

 

1932年、五・一五事件での犬養毅。

1936年、二・二六事件での高橋是清。

1960年10月12日、浅沼稲次郎。

2002年10月25日、石井紘基。

 

 みな、この国の行く末のために力を尽くして殺された。特に石井紘基氏は同時代を生きた人物だから、思ひは深い。彼が総理大臣になってゐれば、この国はまともな形に変はってゐたかもしれない。

 

 しかし私が、安倍晋三氏に生きてほしかったといふのは、これとは全く逆の理由からだ。彼が8年にも亘って作り上げてしまった、この国の腐敗しきったシステムを、崩壊まで共に見届けてほしかったのだ。自分がいかに間違ったことをしてきてしまったのかに気付いてから死んでほしかったのだ。

 

 しかしもうそれは叶はぬ夢となった。これからは彼を批判することさへ憚られることにならう。今回の参院選でも自民党には追い風となる恐れもある。

 

 ところで今回の事件で、安倍晋三氏の落日ぶりが図らずも炙り出された格好だ。

 

 まづ安倍氏の演説を聞いていた聴衆がたった30人ほどだった。いまやこれしか集められない政治家に成り果てていたのか。

 

 次に、警備に全くやる気が感じられなかった。1発目と2発目の銃声の間に僅か3秒程の間があるが、必死に駆け寄るSPの姿がない。静止画でもSPは2~3人?しか映っておらづ、背後を睨む警官も見当たらない。

 

 動画には、「医療関係者はゐませんか」「看護師はゐませんか」「AEDはありませんか」のような音声が入るが、そんな準備もしていなかったのか。

 

 ニュースをチェックしてゐるうちに新宿駅に着いたので北口の階段を上ると、読売新聞の号外を配ってゐた。「安倍元首相銃撃か」と大書が踊るその号外に、手を伸ばしたのは私だけだった。

 

 もはや人々から忘れ去られているのか、哀れな安倍晋三氏。もっと生きてゐてほしかった。私たちの批判に答えてもらひたかった。

 

今日はここまで。

 

(2022年7月9日 第171号お終ひ)