ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ、New York Community Bancorp (NYCB)というアメリカの地方銀行の株価が急落していて、第二のシリコンバレーバンクか!?と今年に入ってからアメリカの株式市場をざわざわさせていました(なにせ、株価が今年に入り80%近く下落していましたから・・・年初は10ドルあった株価が、2月に入って2ドル以下に下落していました・・・)。

先週複数の投資会社から10億ドルの資金提供を受け、CEOも辞任して、株価は持ち直し、少し回復しました。
しかし、安心はできない・・・。
 

昨年もちょうど今頃、シリコンバレーやシグニチャーバンクの実質的な経営破綻(でも米国政府が介入し、預金者のお金は守られ、その後大手銀行が救済したのですが)の後、アメリカの中小規模の地方銀行の中にはけっこう財務状態がまずい銀行あるのではないか?という疑惑はずっとくすぶっていました。

 

 

 

 

今回NYCBがその危うさを露呈し、アメリカの地方銀行は大丈夫なんか!?疑惑が再浮上したわけです。
 

NYBCと、シリコンバレー、シグニチャーバンクの失敗の要因がよく似ています。一時は世間にもてはやされた敏腕CEO(と言われた人)が強気経営でぶいぶいいっていたワンマンであったこと、預金者から集めたお金を投資した先で大損を出したこと。そして経営監視機能が弱かったこと。この3つは共通点です。
 

今回NYCBが大損出した主な原因は、商業用不動産への融資が焦げ付いていること。1月にこの銀行「it was dramatically raising the allowance for potential loan losses on its balance sheet, with its exposure to commercial real estate being a potential issue.」と、「商業用不動産への融資で問題が起きる可能性があるかもしれないんだよね」という思わせぶりな、でも実際まずいことになるかもカミングアウトをし、そこから株価が急落していたのですが。

先週、格付機関にジャンクボンド級に格下げされた後、NYCBは「it had “identified material weaknesses in the company’s internal controls related to internal loan review」(内部の融資検査に関する内部監査で重大な弱点を特定した)という回りくどい言葉で「ぶっちゃけ、まずいんですよ」という経営の失策を認めるコメントを出したのでした。


商業用不動産への投資や融資は、NYBCだけでなく、実はアメリカの多くの地方銀行が盛んに行ってきたものなのです。しかし、コロナショックを受け、テレワークが進み、オフィススペースなどのニーズが減って、アメリカの商業用不動産市場は低迷してしまい、融資は焦げ付いているらしい・・・。NYBCの問題は、他の地方銀行も抱えているのではないか・・・という疑念がぷすぷす言っています。


アメリカの銀行の監視機関であるFRB(日本でいえば日銀と金融庁の機能の一部を持っているようなもの)は、いったい何やっとるのじゃ??銀行の経営状態の監視がうまくいっていないのではないか??と、シリコンバレーバンクの破綻の時もFRBは結構責められましたが。今回のNYBCの経営破綻になりそう事件でも、FRBのチェック機能は働いてないのではないか!?という批判&懸念の声が上がっています。
アメリカの金融業界といえば、世界最高の金融業界といえるし、その監視システムも最高のはずなのですが・・・。どうも、ゆるゆるな感じしますよね・・・。


一方、銀行を使う預金者に対しては、シリコンバレーバンクの時と同じく、預金は全額保護されるということで、預金者側にパニックはなく。地方銀行の利用者が減っているということもないそうなのです。いや、むしろ増えているそうなのです。アメリカではJPモルガンなどの大手銀行は一般市民を相手にしてくれないので、一般市民はサービスのよい地方銀行を好んで選ぶそうなのです。しかも、アメリカでは預金者一人あたり25万ドルまでの預金は銀行が破綻しても保護されることになっていて、日本円でいえば3500万円くらいまでは保護されるので、たいていの預金者はそんな大金を貯金していないから、銀行が破綻して預金が戻ってこなかったらどうしよう?という心配にならないそうです。

それに、大手銀行はどんどん実際の店舗を閉鎖する傾向にあり、特に地方ではそうなので、実店舗がある地方銀行を使うという人が多いそうです。

また、シリコンバレーバンクの時のように、上限25万ドルまでの預金保護というルールになっていても、実際に銀行が破綻となったら金融パニックが起きるのを防ぐために、政府が介入して、全額預金保護になるのが通常ということで、「銀行がつぶれたら預金がどうなっちゃうの!?」という心配をする人はあまりいないと。
ここらへんが、アメリカ人のおおらかさというか、大胆さというか・・・。私としては、そうは言っても心配だから、格付けの高い、絶対つぶれないだろうと思われる財閥系の大手銀行に、預金を分けて預けて、中小銀行にお金を預けるのは避けていますが。アメリカ人としては、何かあっても預金は保護されるのだから、それならサービスがよく身近な銀行がいいじゃん~と、地方銀行を選ぶ傾向にあるそうです。
う~ん、私のメタリティとだいぶ違うなあ・・・。
 

NYBCと同じような問題を内包しているアメリカの地方銀行は他にもあると思われ。商業用不動産市場が回復しない限り(回復する見込みは立ちにくいのだけど)、そういうところへ融資した地方銀行の第二のNYBC化が心配なところです。
あまりこういう事が続くと、金融不安が出てきて、株式市場の暴落のきっかけになるかもしれないので。そしてアメリカの株式市場が暴落すれれば、日本も、アジアも、ヨーロッパも、みな株式市場は急落すると思うので。ただでさえ順調すぎる値上がりを続けている今年の株式市場。警戒が必要だと思い始めています。

 

コップになみなみと満杯近くまで水が注がれている状況。これが今の株式市場の状況だと私は思っていますので。ここに一個の小さな小石がぽちゃっと落ちただけでも、水がコップから溢れて、どーっと水が外に出る、場合によってはコップが倒れる・・・つまり資金が逃げ出し株価の急落につながる・・・そんな状態に、今の世界の株式市場が置かれているような危うさを感じます。

そして、アメリカの地方銀行の相次ぐ破綻は、この小さな小石になるリスクがあるのではないかと。

 

保有している日経平均株価のインデックスファンドの売り時を、そろそろ考える頃かと、売りタイミングを計っているところです。このインデックスファンドは、既に投資のマイルール、ある程度上昇したら売却するというルールを超えて上昇しているので、売却して、利益を確定させようと思っています。

アメリカ株のインデックスファンドで運用しているiDECO(イデコという確定拠出年金)は、使うのはまだ遠い先なので、このままにしておくけれど。

ちょっと今の株式市場の状態は注意が必要と思っていて、国内外の経済ニュースはこまめにチェックしている私です。