イケイケシリコンバレーの銀行が破綻

先週金曜日アメリカの金融業界を揺るがすニュースが入ってきました。カリフォルニアのシリコンバレーバンクが急遽債務不履行、事実上の経営破綻をしたというニュースです。

 

この銀行は名前の通り、シリコンバレーのテック企業やスタートアップ企業向けのビジネス(お金を貸したり、預金を預かったりする)が中心で、一般のアメリカ市民にはあまり縁のない特殊な銀行でした。この銀行が資金繰りに行き詰まり、急遽破綻となったわけです。

 

先週末は預金者がお金を引き出すことができず、イエレン財務長官が「救済しないわよ」と発言したことで一時大パニックを引き起こし株価はこの銀行だけでなく全体的に暴落。

その後、シリコンバレーバンクの預金は全額保護される、預金者はちゃんと銀行に預けていたお金を引き出せるから安心しなさいと政府が発表して少し市場は落ち着きましたが。

 

大丈夫、大丈夫というアメリカ政府のコメントをそのまま信じられない危うさがある・・・と私は警戒しています。

 

シリコンバレーバンクの規模は大きくないけれど

シリコンバレーバンクの破綻は「アメリカ金融市場2008年のワシントン・ミューチュアルに次ぐ市場2番目に大きな破綻」だとアメリカのニュースでは大騒ぎしています。シリコンバレーバンクはアメリカで16番目に大きな銀行だと。

 

しかし。2番目といっても、16番目といってもですね、シリコンバレーバンクの資産規模は破綻前で約2,120億ドル(約23兆円)。比較的小~中の金融機関であります。米国大手の金融機関はシリコンバレーの10倍くらいの資産規模があります。米国最大手銀行のJPモルガンの資産規模は約3.3兆ドル(約363兆円)。だからイエレン財務長官が言うとおり、シリコンバレーバンクの破綻によってアメリカの銀行全体が危機になるとか、第二のリーマンショックが来るとか、そういうことはないと思っています。

そこは冷静でいていいと思っています。

 

では何が危ないなあと思っているかというと・・・。

 

シリコンバレーのハイテク企業の資金ぐりは大丈夫か?

シリコンバレーバンクの顧客は、シリコンバレーのハイテク企業、スタートアップ企業だったということです。デジタル時代の申し子、革新的な技術を自分達が生み出していくのだというイケイケな感じの企業向けに融資したり、お金を預かっていた銀行だったので、このシリコンバレーバンクの経営破綻の裏には、実は融資先のシリコンバレー企業の業績がよくないのではないかという疑いが浮上してくるわけです。融資した資金をちゃんと回収できているのか!?と。

 

コロナウィルス蔓延の3年間、飛ぶ鳥を落とす勢いだったシリコンバレー企業の株価は、もう今までのように上がらず、むしろ下落する危険があるのではないかという、アメリカの株式で資産運用する者にとっては警戒信号がともった感じです。

 

他の銀行は大丈夫なのか?

それから、シリコンバレーバンクと似たような他の銀行は大丈夫なのか!?ドミノ倒しになるのでは!?という危機感があります。カリフォルニアにあってシリコンバレーのテック企業向けの小中規模銀行としては、First Republic Bankと PacWest Bankがあります。この2つの銀行の株価は先週金曜日30%を超える大暴落になっています。JPモルガンみたいな大手銀行は大丈夫だろうけれど、融資先がハイテク企業に特化しているこういう銀行は、一回の波で呑まれてしまうリスクがあります。シリコンバレーバンクに続き、類似銀行の破綻が続くと、アメリカ金融業界全体の株価は悪影響を受けるし、これらの銀行からお金を借りているハイテク企業の資金繰りがどうなるのか心配なところです。

 

先週末はニューヨークのシグニチャーバンクも破綻したけれど、ここは仮想取引通貨ビジネスの企業相手の銀行だったので、ハイテク企業とはまたちょっと違うけれど。仮装通貨最大手のFTXの詐欺のような経営破綻を皮切りに、仮想取引通貨ビジネスの危うさが浮き彫りになった形ですね。

 

 

 

たった2日で破綻したシリコンバレーバンクのナゾ

それから、私が一番アヤシイと思うのが。シリコンバレーバンクが先週木曜日、金曜日とたった2日間で破綻した点です。木曜日にはこの銀行から預金を引き出した方がよいとウワサが広まり、預金者が列をなし、銀行はキャッシュを作るために、損を承知で資産(多くを債券に投資していた)を売却して現金化しなければならず、今債券を売却するなんて損を拡大するようなものですから、損失が拡大。破綻へ一直線になったのですが。

 

「誰が」預金を引き出した方がいいと言い出したのか?それはいつか?インサイダーしか知りえない情報を、預金者の一部がアンフェアに早く入手したのか?ここらへんはかなり怪しい。これから規制当局の調査が入るのではないかと思います。もしもシリコンバレーバンクの経営陣や情報管理に問題があったとすると、何年も続く裁判にもなりかねない。

 

アメリカ金融市場最大の破綻とされているワシントン・ミューチュアルの場合、そもそもはサブプライムローンの破綻が原因でしたが2006年~2008年にかけて経営の行き詰まりが表に出てきてじわじわと危機感が広がり、2008年9月11日のリーマンショックでとどめを刺されて経営破綻しています。ワシントン・ミューチュアルの資産規模は当時約3070億ドル(約33.8兆円)。シリコンバレーバンクよりちょっとだけ大きかった。そのワシントン・ミューチュアルは約2年かけて経営行き詰まり、破綻しました。シリコンバレーバンクは2日です。

リーマンショックを経て、アメリカの銀行の資本強化や規制強化がなされたというのに、シリコンバレーバンクはたった2日で破綻しました。イエレン財務長官は「アメリカの銀行をきちんと監視していて現在の規制に何の問題もない」と言っていますが。いや、これ、なんか、おかしいでしょ。

 

というわけで、私はシリコンバレーバンクの悪影響はアメリカの小中銀行(特にハイテク企業向け特化)と、そういう銀行から融資を受けているハイテク企業に出てくるのではないかと心配しています。

 

シリコンバレーバンク破綻からの教訓

今回しみじみ思ったのは。一つの企業や、一つの業種だけにお金を集中して入れてはいけないということ。

やはり分散は資産運用の基本中の基本であるということ。

 

そして、やっぱり、イケイケどんどんの株価上昇には警戒すべきであり、売り時を逃してはいけない。祭りに巻き込まれて我を忘れて、最初に決めた自分の売却ルール(買った時から20%価格が上昇したら、まだ上がるかも?と欲をかかずに、潔く売却する)を忘れてはいけないと、あらためて資産運用の基本を守ることの大切さを痛感した次第です。

お金の運用は「足るを知る」、これが一番大事だと思っています。