アクロバットをやっていると

"いったい何になりたいの?"

と、理由を求められることがよくあります。

"そういう役しかこなくなるよ"
"怪我したら大変なことになるからやめな"

と、忠告を受けることすらあります。

これ案外言われること多くて。

しかも言う人は絶対
"やってない人"。

幼くピュアだった私は
いろいろ理由つけて
その人達に納得してもらおうと
したりしていましたが

でも納得してもらうことなんてなく
ほんと根本的なことで

やりたいからやる
自分に必要だと思ってるからやる

そういうことなんだなと最近よく思う。

ただ
なぜ始めたかというのには理由があって

【悔しかったから】
これに尽きます。

2017年に青年座に入団し
一発目にいただいた
とあるオーディション

条件:150cm以下の俳優

だったんです。

これはきた!!
ついに私が有利なものかもしれない!!

調子に乗った。
そう思った。

でも、行ってみたら
何十人も小柄の俳優が揃っていて
144cmの私ですら
"中の下"くらいの身長だった。

今までどこ行っても1番小さかったから
世間の広さに驚いた。

その役に必要だったのは
・ダンス
・歌
・アクロバット

演技審査は、なかったんです。

私はズタボロでした。
技術面で何も太刀打ちできなかった。

普通、でもない。
そんな土俵にすらいない。
下手、なんです。
なってない、んです。

どれもこれも、ダメだった。

最後の最後に
アクロバットできる人?
と質問されて

やらないよりマシだ!と、
泣け無しのロンダードを披露した直後

「ロンバクバク宙やります」

と言って
さも当たり前かのように飛び回って
涼しい顔で披露していた人がいた。

誰が見ても
あぁこの人だなって
なったと思う。

そしてもちろん受かってた。

かっこよかった
いつかお会いしたいし
あなたに憧れました
と今も言いたい。

そのとき思ったんです。

私のような身体的特徴だと
演技力だけでは勝負できないシーンが
多いのではないか。

現実を理解して、
それで、習い始めた。

これは大きなキッカケで
まぁその前から興味はあって
青年座研究所の同期とかと
ちょこちょこ習いには行ってたんだけど。

〈チビな私に必要なスキルだ〉
と思えたのは、この経験からです。

いつだって悔しい思いが原動力となる人間。

あのとき思い知れたのはいい経験だった。

あぁ、いつか、あの役を、やりたいな。

橋本菜摘