本日の公演もありがとうございました。
私は昼のみ出演でしたが、
お陰様で夜公演も終演したようです。

今日は昼公演のときに機材トラブルが発生し
2幕の開演が1時間も大幅に押しました。

その時の裏側のことを忘れたくないなと思い
ブログを書きたくなりました。

そのとき緊急会議が開かれ、
それぞれの立場から
最適案を必死に絞り出していました。
私は遠目に見つめるしかなかったけど
きっといろんな意見があったと思います。

俳優の私たちにできるのは、
始まりますと言われたらいつでも
すぐに出られるよう
糸を切らさず準備することだなと、
闇の衣装に身を包みながら
固唾を飲んで状況を見守っていました。

正直、いろんな思いが巡りました。
だって、
お客様にはそれぞれいろんな事情がある。

1時間も待たせてなお続行することは
果たして正しいことなのだろうか。

急な、やむを得ない事態ではなく、
完全な演出ができずに公演するということは
お客様の満足度としてどうなるんだろうか。

客席の温まっていた空気は冷えきったり
もはや敵対すらされていたりしないだろうか。

それぞれの立場でいろんな思いがあるけれど
俳優として、一個人としては、
こんな風に思ったり、
共演者と話し合ったりしてました。

そして、方針が決定した。

”舞台を続行する”

それなら覚悟決めてやるしかない。
できることは、シンプルなこと。

それぞれのセクションが、すべきことをする。

どうかもう一度この世界に没入してほしい

ある人は場を和ませようと愉快になり
ある人はおもむろにストレッチをはじめ
ある人はただ1人で集中し
ある人はいつも通りに徹し
ある人は出番がなくとも見守り

いろんな振る舞いがあるけれど
みんなそれぞれの集中の仕方で再開を待った。

舞台に立ってお客様に見てもらうのは俳優だけど
それぞれのセクションがみんな覚悟決めて
2幕に取りかかるのが分かる。

1時間も押してしまうと
ヘアメイクさんはマチソワ間の
メンテナンスの時間がなくなる。
ご飯食べられない、一休みできない、
でも何よりもウィッグのメンテナンスに
かける時間の確保を1番に心配して。

俳優には「怪我だけはないようにね」と
言葉をかけてくれながら
チャキチャキ仕事している。

衣裳さんもニコニコして決して慌ててない。
その場ですべきことはいつも通りもう
全部しっかりやってるから。
薄着で待機する演者が
寒くないだろうかと気にしてくれてる。

フライングチームはいつも舞台のはるか上で
作業している人がたくさんいて
つまり袖にいる私たちには普段見えない。

その方がみんな降りてきていて
こんなにもたくさんの人によって
動いているカンパニーなのかと
改めて思ったりしながら
必死で現状を説明し合ってるのを見る。

対応を求められ走り回る製作さん。
幕の裏側で急遽の段取りを組んで
稽古する演出助手の方。

ただでさえ3時間40分の舞台が伸びると
それぞれの充電がもたない、早々に決断し、
個人のマイクの電池を変えに
回ってくれる音響さん。

いつもと違う動きになると
自動で決まってる照明を使えないところは
手持ちのピンスポットで必死に追いかけて
照らし続けてくれる照明さん。

いつでも動く準備をして
指示が来たら即座に飾り変えたり
細かな情報を近くにいる人に
渡してくれたりする演出部さん。

見えないけれど、イレギュラーの対応に
緊急で追われているのではと
容易に想像できる劇場さん。

他にもいろんなセクションの方が公演のために
「自分がすべきこと」を全うしようと
マンパワー出していた。

”お客様は大丈夫かな”

常にそのことが心配だけど
とにかく、やるしかない。

だって今日という日に
この舞台に来ることを選んでくれた。
残念ながら最後まで見られなかった人もいる。
でも今もずっと待ってくれている人もいる。

そして、2幕開演。
いつも以上の熱量の高さを
袖にいてもビンビン感じた。
そしてお客様。積極的に笑ってくれてる。

「ほんとにあったかいね」

近くにいる人と言い合う。
ほんとに有難かった。

最後まで怪我なく、安全に、終演。

カーテンコール、ほんとにドキドキしました。
呑気なこと言うなと思われそうですが、
あまりにも温かい拍手に感激しました。

そして、言いたい。藤木直人さん。
ご自身の言葉で、我々を代表して、
お客様に想いを伝えてくださったこと、
感謝でいっぱいです。

後ろから大きな背中を見て
胸がいっぱいになりました。

本当に、ありがとうございました。

状況を思い出して、いろんなことを考えて、
忘れたくないな、忘れてはいけないなと、
気づけばとりとめもない文章を書いてました。

いち俳優の、個人的な、日記です。
多めに見て読んでもらえたら嬉しいです。

本日の公演も本当にありがとうございました。

終わってから
皆さんどう思っただろうと
気になってたくさんエゴサしました。

最後まで見られなかった方も、やはりいた。
残念な思いさせて ごめんなさい。

お疲れ様と、好意的な言葉を使って
感想を述べてくれる人もいた。
支えられています、ありがとうございます。

素直に不満を口にしてくれてる人もいた、
そうだよなと思う。受け止めよう。
それでも今日来てくれたこと、
本当にありがとうございました。

ロングランやっているけど
当たり前のように毎日できるわけじゃない、
本当に複雑な技術でもって
魔法の世界を作り上げている。

日々に感謝してこれからも公演します。

いつもありがとうございます。

どうぞこれからもよろしくお願いします。

橋本菜摘