『フランスの作曲家によるフルート作品集』"Flute Music by French Composers for Flute and Piano"(G. Schrmer)に取り組んでいる。全音楽譜出版社の『演奏会用フルート名曲集 ゴールデン・エージ(マルセル・モイーズ 編/高橋利夫 監修)』全3巻全曲をYouTubeに投稿した中に2曲が含まれているので、その続きである。これらの作品集に収められている作品は、フルーティストにとって、極めて重要と私は考えているので、私自身がどう捉えているかを表明しておきたいと思っている。

この作品集には、パリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)のフルート科の生徒が卒業するに当たって行われるコンクールの為に作曲された作品が収められている。1893年にフルート科を引き継いだポール・タファネル(Paul Taffanel 1844 - 1908)が、1895年にヨアヒム・アンデルセン(Joachim Andersen 1847-1909)に作曲依頼した時の手紙に書かれた内容を、以前、以下の記事で紹介した。


フォーレ ファンタジー Op. 79 解説
https://ameblo.jp/nativemarutakan/entry-12849228380.html


私自身の翻訳を含む部分を、以下に引用する。


1895年にヨアヒム・アンデルセン(Joachim Andersen 1847-1909)が受け取った依頼には、次のように書かれている。

"The piece should be short: 5 or 6 minutes at most. I will leave the form of it entirely up to you; whether an Andante followed by an Allegro, or a single movement, but it needs to contain the wherewithal to test the examinees on matters of phrasing, expression, tone control, and virtuosity. The accompaniment should be for piano."

「曲は短かい方が良い。最長で5分か6分。どのような形にするのかは、お任せします。アンダンテの後にアレグロが続くのか、あるいは単一楽章なのか。しかしながら、受験者を試すために、次のような課題を含むことが求められます。フレージング、表現力、音色のコントロール、ヴィルトゥオジティ(技巧)について。伴奏はピアノであること。」

アンデルセンは、このタファネルからの依頼を受けて、フルートと管弦楽またはピアノのための演奏会用小品第2番 Op. 61 (Deuxième Morceau de Concert pour Flûte et Orchestre ou Piano (Deuxième Morceaux de Concert))を作曲した。タファネルは、フルートと管弦楽またはピアノのための演奏会用小品(第1番) Op. 3 (Concertstück für Flöte mit Begleitung des Orchesters oder des Pianoforte (Koncertstykke))を高く評価していたという。



今回、録音したのは、ビュッセルのプレリュードとスケルツォ。

アンリ・ビュッセル 作曲
Composed by Henri Büsser

プレリュードとスケルツォ 作品35
Prelude et Scherzo, Op. 35

プレリュード(前奏)部分



全曲は、再生リストからおきき下さい。最後の部分は、9月1日17時に公開予定。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLfFfASVQuagoApx3VLKRn5rMz21ahfuOZ

録音して、自分の演奏を確認している間に、他のYouTubeチャンネルに投稿されている、この曲の幾つかの演奏を聴いて感じたのは、他の何人かのフルーティスト達がプレリュードの最中に長い休符を入れている違和感である。

第11小節目には八分休符しかなく、第12小節目に入る前に、それ以上に長い休符を勝手に入れることは、作曲場の工夫を大きく損なうものだと私は考える。

プレリュードとスケルツォの全曲を貫いているのは3だ。

変ホ長調のプレリュード(前奏)には、第37小節から始まる陽気なスケルツォの最初に、初めて変ホ長調の主和音が現れるまで、主和音が書かれていない。非常に不安定な雰囲気があるのはそのためだ。それ故に、Très vif (quasi presto)「快活でほとんどPresto並みの速さで」と指示がある、3拍子の舞踏的なスケルツォに入った瞬間に、大きな安定感を感じる。

ビュッセル(Büsser)の綴りが、ドイツ語のウムラウトが入っている事から分かるように、この作曲家は、ドイツ系フランス人だ。アンリ・ビュッセル( Henri Büsser 1872 - 1973)が、101歳という長生きした中でのキャリアで、パリ音楽院での作曲家の教師として評判が高かったという。 プレリュードとスケルツォの前奏部分には、作曲家の教師として、恐らくは教材に使ったと思われる、ドイツの作曲家、ベートーヴェンの交響曲第1番第1楽章の序奏からの影響が強く反映されていると私は考える。同じように、ハ長調の主和音が、なかなか登場しない巧妙な工夫が凝らされているからである。

前奏は、2回、フルートの上行と下行が繰り返されて、3回目の上行で、上がった音の緊張感を保ちながらUn peu lentに入る。

最初は、ホ長調で3小節かけてフルートの旋律が上行し、4小節目で、サブドミナントのピアノの和音とともに、エネルギーが爆発するかのように下行する。この上行の過程には、突然、ハ短調を思わせるhの音が、聞き手に意外性を与える。

2回目も、3小節かけてのフルートの旋律が上行ではあるが、イ長調に転調しており、頂上に至って奏でられるピアノの和音は、さらに緊張感所あるドミナントであり、フルートの強弱も、mfからfへと上がって、より爆発のエネルギーが大きくなっている。

その過程を踏んでの3回目は、ト長調のドミナント和音とともに、フルートは、ト長調の属音を強調するかのようなトリルを、3小節にわたって、3つのオクターブ違いの音で演奏する。小節毎に1オクターブの上行スケールを挟みながら、緊張感は否応なく高まる。その緊張感を保ったまま、ト短調のUn peu lentに入るのが、作曲家の意図したことだと、私には読み取れる。

よって、Un peu lentに入る前に、まるで全く違う要素の音楽が始まるかのような大きな休符を勝手に作って、緊張感を削ぐことは、作曲家の意図に反すると思う。

一回目と2回目が、4小節単位、3回目が上行形だけながら3小節しかないのも考慮に入れるべきだ。

「少し遅く」Un peu lentのメトロノーム記号は、84なので、一見、冒頭の72と矛盾するかのように見える。しかしながら、6分の4拍子の小節を、2分音符3つと捉えると、「少し遅く」なった3拍子になって、全く矛盾しない。この部分を、Un peu lentが何の拍を単位にして作曲家が言っているかを考えずに、作曲家のメトロノーム表示よりも著しく遅く演奏するのも、楽譜がきちんと読めているとは言えない。






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