ドビュッシー『シランクス』


武満徹『エア』


武満徹のフルート独奏曲は、3曲ある。フルーティストのオーレル・ニコレの依頼で作曲された『声(ヴォイス)』(1971年)、彫刻家イサム・ノグチの死を悼んで作曲された『巡り―イサム・ノグチの追憶に―』(1989年)、そしてオーレル・ニコレの70歳の誕生日を記念して作られた『エア』(1995年)である。『エア』は、武満の最後の作品になった。

私にとって、『エア』は、長いつきあいで、楽譜が出版された直後から音楽を読み取ろうとし続けてきた。英語教室の教材作りが一息ついて楽器を取り出しても、この作品を音にするには時間がかかったのは、この作品が求める美しい音を出す勇気がなかったからである。去年の夏、自分の音を客観的に聴いてみようと思い立ってから、ようやく取りかかって、何度かはYouTubeに上げてみたものの、所有している録音機材が自動的に弱音を大きくしてしまうことに大きく失望して頓挫してしまった。

モーツァルトの音楽に一定期間に集中して取り組むことは、自分の音を磨き上げたり、技術を向上させることにとても良い。2月を中心に、フルート四重奏曲を全部YouTubeに上げてから、今度は独奏作品をやりたくなったので、再び、武満作品に取りかかってみた。録音し始めると、教室の外の雑音が、武満作品には特に耐え難いほどうるさい。邦人作家の現代作品には良くあることだが、休符による間や、弱音が極めて重要なので、考えた末、初めて、編集することにしてみた。とは言っても、複雑なことはできないので、雑音を避けて録音した楽器の演奏部分を切り取っては繋げる作業。

楽譜からは、弱音の色々な表現が伝わってくるのだが、今回は、それを録音に残すことまでは、余りこだわらないことにした。録音を聴いてみると、演奏した時とは違ったイメージだったり、音が割れていたりするので、出来上がった中から、比較的良いものを繋ぎ合わせてみた。そもそも、YouTubeの音自体は、余り良くなく、実際の演奏の参考にしかならないのだから。

『巡り』は、旅人であったノグチが、幾つかの地点を巡りながら変化する様子を作品にしたと作曲家が語っている。多重奏法を求めている箇所が幾つかあるが、今回、納得できるまでには間に至らなかった。本来、その部分は、尺八のような音をフルートで演奏するように書かれたと考えられる。フルートの近代奏法が、かえってフルートらしさになっているとも言える。

『エア』(Air)の頭文字は、曲の出だしのAの音と共通しているという説がある。表情を付けやすい、フルートでは出しやすい音である。演奏者自身に豊かな響きを求める独奏曲、ドビュッシーの『シランクス』からの影響があったのだろうか?同じようなものを要求しているように思う。和楽器の音をフルートで代用する場面がある『巡り』とは違って、とことんフルートの魅力を引き出す作品だと私は考える。

縦線が無い『巡り』とは違って、『エア』には縦線があることが、リズム感を生み出していて、それが前に進む力にもなっていると思う。武満には「風」がタイトルに入っている作品がある。武満にとって、自然の一部である風は、重要だったはずだ。この作品でも、色々な風が吹いているのを、フルート奏者が息を使って表現するものだと私は考える。

『エア』は7分と書かれていて、私の演奏は6分45秒なので許容範囲内か?初めて試みた部分的な撮り直しで、テンポの検討もできた。


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