以下の三つの取引について、それぞれ課税関係はどうなるでしょうか。
1.個人Aが個人Bへ現金1,000万円を贈与した
2.個人Aが1,000万円で取得した土地(時価3,000万円)を個人Bに3,000万円で売却した(譲渡費用等はないもの
とする、以下同じ)
3.(1)個人Aが1,000万円で取得した土地(時価3,000万円)を個人Bに贈与し、
(2)その後Bは同土地を個人Cに5,000万円で売却した
1.Aへの課税はなく、Bに1,000万円を課税標準とした贈与税が課税される
2.Aに2,000万円(3,000万円-1,000万円)の譲渡所得が発生し、所得税が課税される
Bへの課税はない
3.(1)Aへの課税はなく、Bに3,000万円を課税標準とした贈与税が課税される。
(2)Bに4,000万円(5,000万円-1,000万円)の譲渡所得が発生し、所得税が課税される
Cへの課税はない
3について
無償の譲渡(贈与)であっても譲渡者(A)に譲渡所得2,000万円(時価3,000万円-1,000万円)が発生するというのが判例の考え方ですが、Aには一銭もお金が入ってきていません。
ここに課税をされても支払えない可能性が高く納税者の納得を得難いことから、この時点でのAへの課税は留保(課税の繰延べ)することとされています。
そして、Aから贈与を受けたBがその取得した資産を売却等したときに、それまで留保されていたAに対する譲渡益相当額(値上がり益)も含めてBに課税をすることとしました(所得税法60条1項1号)。
(Bが売却等するまで課税が繰り延べられます)
※最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(民集第29巻5号641頁)
「譲渡所得の発生には、必ずしも当該資産の譲渡が有償であることを要しない。したがつて、所得税法33条1項にいう「資産の譲渡」とは、有償無償を問わず資産を移転させるいつさいの行為をいうものと解すべきである。」
※最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決(集民第216号279頁)
「贈与等にあっては、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化しないため、その時点における譲渡所得課税について納税者の納得を得難いことから、これを留保し、その後受贈者等が資産を譲渡することによってその増加益が具体的に顕在化した時点において、これを清算して課税することとしたものである。…受贈者の譲渡所得の金額の計算においては、贈与者が当該資産を取得するのに要した費用が引き継がれ、課税を繰り延べられた贈与者の資産の保有期間に係る増加益も含めて受贈者に課税される…」
Aの土地の取得費、保有期間をBに引き継がせることでこれが可能となります。
BがCに同土地を5,000万円で売却した場合、初めにAが取得したときの1,000万円を取得費として譲渡所得を計算することで、Aの保有期間中の値上がり益も含めてBに課税ができるという仕組みになっています。
親などから贈与、相続等により土地を取得してそれを売却した場合、譲渡所得を正しく計算するためには親がその土地を取得した当時の売買契約書等が必要になります。
親の取得費が分からなければ売却金額の5%相当額を取得費とするため、譲渡所得が高く計算されてしまうかもしれません。
