以下の取引について、個人Aはどのような課税を受けるでしょうか。

 

1.法人Bが個人A(Bとは無関係)に現金1,000万円を贈与した

2.個人Aが1,000万円で取得した土地(時価3,000万円)を法人Bに贈与した(譲渡費用等はないものとする)

 

1.所得税(一時所得)が課税される

  ※贈与税は個人間の贈与の場合に課されるものです(前回のブログ参照)

 

2.譲渡所得2,000万円が発生し所得税が課税される

  (Bの当該土地の取得価額は3,000万円となる)

 

2.について

(1)みなし譲渡

個人が法人に対して土地等の資産の贈与もしくは遺贈または時価の1/2未満での譲渡をした場合には、その時点で個人がその資産を時価により譲渡したものとみなされます(所得税法59条1項1号、所得税法施行令169条)。

 

無償の譲渡(贈与)であっても譲渡者(A)に譲渡所得が発生するのが原則ですが、納税者の資金力等に配慮してこの時点ではAに対して課税は行わず、贈与を受けた相手方がその資産を売却等したときに、Aの保有期間中の値上がり益も含めて課税をするというのが前回のお話でした。

個人間での譲渡であれば所得税の規定(所得税法)だけで処理、課税をすることができますが、相手方が法人の場合には、その法人には法人税の規定(法人税法)が適用されます(所得税の枠を飛び越えてしまいます)。

個人であるAの保有期間に対応する値上がり益には所得税が課税されるべきで、その所得税相当額を法人であるBに対して課税することは難しいので、AからBに資産が移ったときに、Aに時価課税をしてここで譲渡所得の清算をすることとしました。

 

個人間の贈与であれば、前回の取得費の引継ぎの規定が適用されてAは課税されませんが、贈与の相手方が法人の場合、このみなし譲渡の規定により課税されるということです(個人⇔法人間取引は注意!)。

 

上記の例では、個人が法人に土地を贈与しているので、(対価、収入金額はゼロですが)Aは時価の3,000万円で譲渡したものとみなされ、Aに2,000万円(3,000万円-1,000万円)の譲渡所得が発生します。

※仮にその土地の所有期間が5年以内であれば、単純計算で2,000万円×30%=600万円の所得税(それに住民

  税180万円)が課税されてしまいます。

 

このみなし譲渡の適用範囲を贈与(無償)に限定してしまうと、1円や10円での譲渡(低額譲渡)とすることで回避ができてしまうので、「時価の1/2未満での譲渡」も適用対象としています。

(2)時価

贈与は無償の譲渡(タダ)なので分かりやすいですが、問題は「時価の1/2未満」にいう「時価」はどのように捉えればよいのでしょう。

みなし譲渡の適用を受けないようにするためには、上記の例では1,500万円以上でBに譲渡しなければなりませんが、この時価3,000万円というのは自分で算出しなければなりません。

 

売主と買主で合意した価額が「時価」であると言えますが、ここに売り急ぎや買い急ぎがある場合には、正常な取引価額と一致しないことが考えられます。

(本当は3,000万円の価値がある土地でも、売主が一刻も早く資金を必要としている場合、多少の値下げも容認するかもしれません)

 

そこで、土地の場合であれば、次の①から③が公的な価格として公表されています。

①公示価格(基準地価)

②路線価

③固定資産税評価額

 

①公示価格は国土交通省が毎年発表していて、標準地について不動産鑑定士の鑑定評価を基に土地鑑定委

  員会が正常な価格を判定し公示するもので、一般の土地取引の指標とされるものです。

  令和2年地価公示では26,000地点で実施されており、全ての土地の公示価格が公示されているわけではあ

  りません(地価公示(国土交通省HP))。

 (基準地価は都道府県が毎年発表していて公示価格を補完しています)

 

②路線価は国税庁が毎年発表していて相続税、贈与税の計算の際に使われます。

  この路線価は公示価格の約80%の価格水準として決定されているので、これを0.8で割り戻せば公示価格に近

  い価格を求めることはできます。

 

③固定資産税評価額は市町村が毎年発表していて、固定資産税等の計算の際に使われます。

  この固定資産税評価額公示価格の約70%の価格水準として決定されているので、これを0.7で割り戻せば公示

  価格に近い価格を求めることはできます。

 

厳密に時価を求めるのであれば鑑定評価が確実ではありますが、時間やコストもかかってしまうので、実務ではよく②、③を使って時価の目安を把握するようにしています(あくまで簡便的な方法ではありますが…)。

 

参考:時価より低い価額で売ったとき(国税庁HP タックスアンサーNo.3217)