相続や遺贈によって財産を取得した相続人に対しては相続税が課税されます。

 

また、土地や建物などの不動産を譲渡した場合には、その譲渡者に対して譲渡所得が発生し所得税が課税されます。

 

例えば、相続税を納付するため、相続した財産(土地)を売却して納税資金を捻出した場合、土地の相続については相続税が課税され、それを売却したことに伴う所得は(被相続人の保有期間中の値上がり益も含めて)譲渡所得として所得税が課税されます。

(「譲渡所得(取得費の引継ぎ)」ブログ 事例3は贈与でしたが、相続(限定承認を除く)の場合であっても同様になります)

 

 

時価3,000万円が相続税の課税対象、取得費の引継ぎ規定によって4,000万円が所得税の課税対象になりますが、被相続人(A)の保有期間中の値上がり益2,000万円については既に相続税で課税されており、売却時の相続人(B)の譲渡所得4,000万円は課税されすぎ(二重課税)では!?という指摘が従来からありました。

 

この点について争われたのが東京地裁平成25年6月20日判決で、被相続人の保有期間中の値上がり益に相当する部分については所得税法9条1項15号(現行16号)により非課税であるというのが納税者の主張でしたが、裁判所は実質的に同一の経済的価値に対する相続税と所得税との二重課税が行われているとまではいえないと判断しました。

 

東京地裁平成25年6月20日判決(税務訴訟資料 第263号-114(順号12238))

「相続税の課税対象が、相続人が相続により取得した財産の経済的価値であるのに対して、上記譲渡所得に対する所得税の課税対象となる被相続人の保有期間中の増加益は、被相続人の保有期間中にその意思によらない外部的条件の変化に基因する資産の値上がり益として抽象的に発生し蓄積された資産の増加益(被相続人がその資産を譲渡していれば被相続人に帰属すべき所得)が相続人によるその資産の譲渡により実現したものであるから、当該資産の譲渡により相続人に帰属する所得に所得税を課したとしても、実質的に同一の経済的価値に対する相続税と所得税との二重課税が行われることとなるとまでいうことはできない。」

 

相続税は、相続人が財産を取得し富が増加したいうことに着目して課されるものであり(偶然資産を手に入れた不労所得的性質が強い)、譲渡所得課税は資産を売却等したときにそれまでの保有期間における資産の値上がり益に対して課されるものなので、これらを同一の経済的価値に対する課税ということはできないということです。

 

また、所得税法60条1項1号の取得費の引継ぎ規定が存在していることからも、「被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益について、相続人が相続により取得した財産の経済的価値が相続人に対する相続税の課税対象となることとは別に、相続人に対する所得税の課税対象となることを予定しているものであるということができる」とされました。

 

とはいえ、相続税と所得税の課税が納税者の負担を重くしていることは事実なので、相続により取得した資産を、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの間に譲渡した場合には、取得費加算の特例の適用があるということは以前ブログに書きました(2018年10月23日参照)。 

相続という、いつ発生するか定かではない事由により財産を取得し多額の相続税を支払うこととなった場合、相続した財産を売却等して納税資金を捻出することもあり得ることから、その負担を軽減するというのがこの特例の趣旨でした。

(「3年を経過する日」に注意で、これを過ぎると適用は受けられません)

 

この特例は贈与により取得した財産を売却しても適用がありません。

贈与は贈与者と受贈者の契約により成立するので、贈与税の負担も考慮して贈与を実行する(事前に税額計算等の準備が可能)でしょうし、贈与でもらった財産をすぐに売却して贈与税を納めるのであれば、初めからそんな贈与はしないと思われます。