(1年以上空いてしまいましたが…)今年携わった相続に数次相続事案があったので、これについて書きたいと思います。

 

1.数次相続とは

数次相続とは、相続が発生(一次相続)しその被相続人の遺産分割協議前に相続人が死亡(二次相続)してしまった状態をいいます(一次と二次が続けて発生しているので「数次」)。

遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりませんが、相続人の一人が死亡しているので、その者の相続人(二次相続の相続人)が代わりに一次相続の遺産分割協議に参加することとなります。

 

例えば父が7月に死亡し、その遺産分割協議が成立する前の9月に母が死亡してしまった場合です。

ただ、この場合は父と母の相続人が同一(子Aと子B)ですから比較的スムーズに進められると思います。

父相続(一次相続)の相続人は母、子A、子Bですが、母は亡くなっているので父が遺した相続財産のうち母の取得分はどうするかということを含めて子Aと子Bで遺産分割協議を行います。

母相続(二次相続)の相続人も子Aと子Bですから、母の相続財産の遺産分割協議も同時並行で行うこととなります。

 

 

少し面倒になるのが、子Aが死亡した場合です。

子Aの相続人はAの妻と孫Cなので、この二人が一次相続の遺産分割協議に参加することとなります。

普段会わない(!?)者同士でそういう話をしなければなりませんし、参加者が増えるということはそれだけ時間もかかります。

相続税の申告を考えると、死亡後10ヶ月以内に遺産分割を終わらせたいところです。

 

一方、子Aの相続(二次相続)にかかる遺産分割協議はAの妻と孫Cで行います。

 

父の遺産分割協議前に子が死亡することはレアケースかもしれませんが、短期間のうちに両親が続けて亡くなるということは想定されうることです。

 

2.相続税の計算への影響

父→母に発生した数次相続の遺産分割協議と相続税の計算への影響を検討してみます。

 

先に「母の取得分はどうするかということを含めて子Aと子Bで遺産分割協議を行う」と書きましたが、母が取得したとすると当然それは母の相続財産に含まれるので、二次相続における相続税の負担が増えることになります。

一次相続において母が取得した財産によって、一次相続と二次相続を通じた全体の相続税額に違いが生じるため注意が必要です。

 

以前のブログにも書いた(2018年12月8日)とおり、相続税の計算において配偶者は優遇されているため、取得した財産のうち一定金額までは相続税はかかりません。

この特例を最大限適用するのであれば「とりあえず配偶者が取得」となるのですが、これでは二次相続で子に多額の相続税がかかりトータルで損をするケースがあります。

 

父(一次相続)の相続財産が1億円、母(二次相続)には固有財産5,000万円あるとして、以下の2つのケースを考えます。

 

<ケース1> 一次相続で母と子が法定相続分で取得(母が5,000万円、子が2,500万円ずつ)

 

                                       

                           

<ケース2> 一次相続では母は財産を取得せず、子Aと子Bが5,000万円ずつ取得

 

<ケース1>と<ケース2>では、トータルでの税負担が375万円も違ってきます。

一次相続だけを見ると母が取得した<ケース1>の方が有利となっていますが、母の相続財産が5,000万円から

1億円に増えてしまった結果、(配偶者特例を適用しても)二次相続の負担が重くなってしまうのがその理由です。

このケースの場合は、一次相続の相続財産は子Aと子Bで取得することとし、二次相続の相続財産を母の固有財産のみとして遺産分割を行うことが有利となります。

 

逆に母の固有財産がゼロの場合には、一次相続では一定金額まで母が取得した方が有利となります。

 

ケースバイケースなので、このような検討をしながら一次相続と二次相続の遺産分割協議を同時に進めていくわけですが、これは数次相続という特殊な話に限ったことではありません。

通常、一次相続の数年後には二次相続が発生し、一次相続で母が取得した財産の多くが二次相続の相続財産を形成すると考えられるからです。

トータルでの相続税額の負担を軽くするためには「とりあえず配偶者」とするのではなく、二次相続の相続税も試算した上で一次相続の遺産分割を行わなければなりません。

 

(二次相続の負担を考慮すると、一次相続で子が取得しておいた方が

全体の相続税額が減ることもあるので慎重な判断が必要)