確定申告の時期ということもあり、以下のような質問を受けました。

 

「普段の源泉徴収を誤って行っていたとしても、本人が確定申告して精算すれば結果は同じではないか」

 

例えば、①正しい源泉徴収税額は800であるが、支払者(会社)が500しか源泉徴収していなかった場合に、納税者本人が確定申告で確定税額1,500から源泉500を差し引いた1,000を納付する。

②正しい800が源泉徴収されていて、確定申告で700(1,500-800)を納付する。

 

①と②いずれの場合も、納税者は源泉徴収税額と申告所得税額を合わせて1,500納付しています。

結果的に正しい税額が納付されているのだから、本人に確定申告さえしてもらえば月々の源泉徴収を誤っていたとしても問題ないのではという疑問ですが、源泉徴収税額の過不足を確定申告で精算すること(①)は認められていません。

 

これが争われたのが最高裁平成4年2月18日判決(民集46巻2号77頁)です。給与等の支払者が誤った金額で源泉徴収を行いましたが、受給者はその(誤った)税額を控除して所得税の確定申告を行い、還付を受けたという事案です。

 

所得税法120条1項5号(現行4号)に規定する「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、(誤って源泉徴収された金額を含む)実際に源泉徴収された金額をいうのか、それとも正当に源泉徴収された又はされるべき税額をいうのかが争点とされました。

 

当該判決では、

(1)源泉所得税の納税義務と申告所得税の納税義務とは別個のものとして成立、確定する。

(2)源泉所得税と申告所得税との各租税債務の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者のみで、受給者との間には直接の法律関係を生じないものとされていることからすれば、同規定は算出所得税額から正しく源泉徴収された税額を控除するものである。

(3)算出所得税の計算に当たり、源泉所得税の徴収・納付における過不足の精算を行うことは、所得税法の予定するところではない。

として、同規定にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは所得税及び租税特別措置法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するとしました。

 

つまり、誤って源泉徴収をして(されて)しまった場合には、源泉徴収義務者(給与等支払者)と受給者の間で過不足額の精算を行い、受給者はその是正された正しい税額を確定申告書に記載しなければいけません。

 

この結論には賛否両論あるものの、このような取り扱いとなっています。

 

ただ、確定申告書に記載されたその源泉徴収税額が、同規定に基づく「正当に徴収をされた又はされるべき所得税の額」であるかの確認が困難なことも多いので、実際は確定申告で精算が行われてしまっている場合もあるのでは!?とも感じています。