軽減税率制度の実施に伴い、仕入税額控除の要件として区分記載請求書等保存方式が導入されましたが、これは、事業者の準備等に配慮した令和5年9月30日までの経過措置で、令和5年10月1日からは適格請求書等保存形式(以下「インボイス制度」といいます)が導入されます。

 

インボイス制度の下では、「帳簿」及び税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等の保存が仕入税額控除の要件となります。

※適格請求書とは、「売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事

  項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。

 

                               - 出典:国税庁『消費税軽減税率制度の手引き』 P61 -

 

区分記載請求書等の記載事項に「①登録番号」、「④適用税率」、「⑤税率ごとに区分した消費税額等」(左図の下線部分)が追加されます。

 

適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に申請書を提出して登録を受ける必要があり、消費税の納税義務を負っている課税事業者でなければこの登録を受けることはできません。

 

※消費税の納税義務の免除

  基準期間(※1)の課税売上高(※2)が1,000万円以下の事業者は、原則として消費税の納税義務が免除されま

  す(以下、「免税事業者」といいます)。

  ※1 原則として、個人事業者は前々年、法人事業者は前々期

  ※2 消費税が課税される取引の売上金額等(税抜)

 

つまり、小規模事業者等の消費税の納税義務がない免税事業者は適格請求書発行事業者となれないため、適格請求書等を発行できないということになります。

 

適格請求書等を保存することが仕入税額控除の要件なのですから、その取引の相手方は免税事業者からの仕入につき仕入税額控除ができないことを意味します。

 

(8%のままになっていますが)前回の「消費税のしくみ」図を再掲します。

 

                                       -出典:国税庁ホームページ「消費税のしくみ」-

 

小売業者は2,400円の消費税を納める必要がありました。

(消費税の納税義務がある課税事業者は、5,600円の控除をするために仕入税額控除の要件が大切というのが前回のお話です)

 

ここで、小売業者の仕入先である卸売業者が免税事業者であったとします。

 

先に述べたとおり、インボイス制度が施行されると免税事業者は適格請求書等を発行できないので、小売業者は卸売業者に支払った5,600円を控除することができません。

(小売業者は、消費税8,000円の納付をしなければならなくなります)

 

一方で、卸売業者は免税事業者なので、小売業者から預かった消費税5,600円と製造業者へ支払った消費税

4,000円の差額1,600円の納税義務がありません。

 

納税義務が免除された消費税の分だけ免税事業者が利益を得ていることから、この1,600円を「益税」と言ったりしますが、財務省の試算では、免税事業者全体の益税は3,500億円程度にも上るそうです(第186回国会参議院決算委員会会議録第6号7頁(国会会議録検索システム))

 

インボイス制度の下では、取引先は仕入税額控除ができない免税事業者との取引は避けると想定されるので、免税事業者は課税事業者を選択する必要が出てきます。

(消費税の納税義務の免除は小規模事業者の特権のようなものなので、自ら選択して課税事業者になることは可能です)

 

課税事業者を選択することで消費税の納税義務が生じますから、先の卸売業者は1,600円を納税する必要があります。

 

益税の問題は消費税導入当初からの課題と言われてきました。

インボイス制度の導入により、この問題の解消に繋がるかもしれませんが、これまで消費税を納めていなかった免税事業者には影響の大きい改正となります(令和11年9月30日までは一定の経過措置は設けられています)。

 

参考:適格請求書等保存形式(国税庁 タックスアンサー No.6498)