60年代後半から70年代、歌謡界をリードした筒美氏のオーケストレーションを継承しつつ、コンボ・バンド・アレンジな楽曲を、70年代中盤にかけて提供したのは、前にブログで紹介した「馬飼野康二」氏と「穂口雄右」氏。
穂口氏は作曲家としては短期間であったが、馬飼野氏は「Arashi」や「関ジャ二∞」など、平成に入っても活躍中である。馬飼野氏といえば西城秀樹さんのイメージが強いが、(実際にはそう歌ってないけど )「♪あの頃は~”ハッ!”」で御なじみの和田アキ子さんに書いた
「古い日記」
(作詞:安井かずみ 作、編曲:馬飼野康二 74年3月発売 )
71年の大ヒットCHASEの「黒い炎」の厚いブラスセクションとBoobie Brothersの「Long Tarin Runnin'」のおいしいとこをとった感じで、さすがイントロのインパクトが凄い。ディストーション系のギター、「ス、チーチー!」とハイハットワークが決まるドラム、
バックは筒美さん第2期で御なじみの、Gt:水谷さん、矢島さん、B:武部さん、Dr:田中さんであろう。(続いてのシングル、なかにし礼さん作詞の「晴れのち曇り」も、「フガ・フガ・・フンニャーアー」のイントロがユニーク)
同じ「安井=馬飼野コンビ」の
「夏のせいかしら」(74年6月発売)
(作詞:安井かずみ 作、編曲:馬飼野康二 歌:夏木マリ)
お色気路線変更の「絹の靴下」で再デビューし、人気を不動のものにした「夏木マリ」さん。最近でも歌手として、味のある女優さんとしてご活躍中である。
この曲「どうにもとまらない」を早回転させたのかと思うほどのアッパーなド派手イントロ、ティンパニーを使うあたりは「激しい恋」に似ているかな。
キメの「♪恋をー、しそーぉー、夏の、せいかしーら~」のインパクトが強すぎで、若干前後のAメロとサビが沈んでしまう感があるが、ボトルネックで攻めてくるツイン・ギター、ピッキング(武部さんかな?)の硬めの音のべースもきまっている。74年頃にはベースのピッキング奏法のレコードもかなり少なくなり、ベーシストのバッキング・ミュージシャンも世代交代といったところがあるのだろうか。
残念ながら、2枚のシングルは「激しい恋」ほど、大ヒットとはならなかったのだが、馬飼野流ぶ厚なブラス・サウンドが十二分に楽しめる2枚である。
(文中一部敬称略)