電話の向こうの母の弾んだ声


何年振りだろう  


あんなにはしゃいだ声を聞くのは


私の友が 子供を連れて 訪ねてくれた


まるで自分の孫が来たように  喜ぶ母


そうよね


私たち兄妹のように仲が良かったものね


同じ歳で  同じ日に生まれて


いつも  一方的に


甘えていた


私が何をしても  許された


こんな歳になっても


当たり前のように  やっぱり甘えてる


いじわるしたことを  誤ったこともないのに


あなたの気持ちを考えたことなんて


一度もないのに


だから


ごめんねなんて  今でも言わないけど


ありがとうって


心から  ありがとうって


この歳になって


言えるよ


       友へ   友情をこめて


       ありがとう


ほんちょっぴりの勇気



コンプレックスを抱いていたのは



自分勝手な思い込み



一歩踏み出せば   返って来たのは



友のやさしさだった



変わりない声に



時は一気にさかのぼる



私を知っているからこその  彼女の言葉



ありがたい     言葉に  私の声が詰まる





そう


ちょっとのところに



友情のイルミネーションは瞬いていたんだ



気付こうとしなかっただけ



踏み出さなかっただけ







誰よりも  多くの哀しみ持ちながら



誰よりも  明るい君だから



こんなにも  やさしい



何よりも   大きな哀しみ持ちながら



何よりも   温かい君だから



誰もが   心   開く



何があっても   微笑みで   覆い隠すから



君の周りの哀しみは   



君に感染して



柔らかく   解けていく




だけど



僕だけ   知っているよ



何度   この世が春を迎えても



君の中の哀しみだけは



決して解けないことを



だから



いつも想っているんだ



届かないかもしれないけど



せめて   僕だけ



笑顔の中の   君の嘘を



つつんであげたい



解けることのない   氷の嘘に



僕がこごえてしまっても





せめて      



僕だけ・・



      今夜も  月を見ながら

君が小学校2年の春だった


車いす押して学校からの帰り道


いつものように冗談言い合ってたら


     お母さんは僕が知っている他のお母さんたちの中で


     一番幸せなお母さんやねって


えっ   どうして?


     だって  僕がちょっと足が開くようになったり


     一歩 歩けただけで踊るように喜ぶもん


     ひとつひとつは小さいことやけど


     お母さんは幸せの数では 他のどんなお母さんより 勝っとる


     ぼくのおかげやな~


幸せのそういう見方もあるんだな~って  教えてくれたね


寝たきりになるって言われてた君が


ネクタイして  友達に囲まれ  勉強いやや~と言いながらも


元気に高校にかよう


ここまでくるのに  どんなにたくさんの君のやさしさに支えられてきただろう


つらいことや  ぶつけようのない  どうしようもない怒りや  くやしさが


いっぱいいっぱいあったはずなのに


私の中に残っているのは  楽しいことばかり  うれしかったことばかり


君はわたしのために生まれてきてくれたんだね


     みんなより書くのが遅いから


     みんなよりた~くさんの時間費やして


     みんなより少ししかできないのに


     決して投げ出さない


子供は親の背中を見て育つと言うけれど


私は君の背中を見て生かされているよ 


車いすの  頼もしい  息子


ありがとう


いつか広い世界に送り出すとき


後悔しないよう


いつか素敵な女の子にとられるとき


素直にバトンタッチできるよう


そのときまで精一杯見守るよ 

私は待つのが嫌いです


待っている間  いけないことを考えます


ろくなことが  頭の中に浮かんできません


いっそ待つのをやめてしまいます


なかったことにしてしまいます


そんな人です





たとえば一本の木


そんなものもじっと見ていると


ストーリーは始まり  ころがり


ずっと忘れていた微熱にうかされる


1枚  2枚  3枚 …4枚  たった4枚のシーンが


ねむっていたはずなのに


瞳の裏によみがえる




苦しくならないうちに閉じましょう


アルバムのあるべきページにもどしましょう


ほんのひととき夢見たことだけ


やさしくつつんで




私は分かち合うことは嫌いです


あるのかないのかの どっちかです


やさしい人ではありません


自分が一番じゃないと許しません


そんな人です




だまされないようにしましょう


そんな私にだまされないようにしましょう