薬剤師なつねの優しい薬のはなし

薬剤師なつねの優しい薬のはなし

現役薬剤師。病院→調剤薬局を経験。
薬の疑問を、できるだけやさしく書いてます。

「飲んだカプセルがそのまま便に出てきました。薬はちゃんと効いているのでしょうか?」

 

「鉄剤を飲み始めたら、真っ黒な便が出て驚きました。」

 

これは実際に患者さんからいただいたご相談です。

 

薬局では、便の色や形、便秘や下痢など

便に関する相談を受ける機会が少なくありません。

 

便は健康状態を知る大切なサインのひとつです。

 

そのため、薬を飲み始めて急に便に変化が現れると

不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、薬を飲むことで起こる便の変化について

薬剤師の視点からわかりやすく解説します。

 

 

▶便の変化は副作用?

 

薬を飲み始めて便に変化があると

「副作用なのでは?」と心配になることがありますよね。

 

しかし薬による便の変化には、副作用によるものだけでなく、

薬の成分や剤形が影響しているものもあります。

 

例えば、次のように分けることができます。

 

・副作用によるもの

→ 下痢、便秘など

 

・薬の成分や剤形によるもの

→ 便の色の変化、カプセルや錠剤の殻がそのまま便に出る など

 

副作用としてみられる便の変化では、下痢や便秘が代表的です。

 

腸の動きに影響する薬や抗菌薬、糖尿病の薬などでは

下痢や便秘が起こることがあります。

 

また、一見関係がなさそうに思える痛み止めでも

便秘を引き起こすことがあります。

 

副作用が強い場合には薬の変更が検討されることもありますが、

治療上変更が難しい場合には

下痢や便秘の症状を和らげる薬が併用されることもあります。

 

 

 

▶成分が影響している便とは?

 

では実際に、どのような薬で便の色や形が変わるのでしょうか。

患者さんから相談を受けることが多い代表的な例をご紹介します。

 

【鉄剤】

貧血の方や鉄の値が低い方に処方されるお薬です。

服用することで鉄の成分が酸化して

便が黒くなることがあります。

 

黒色便自体はめずらしいことではないのですが、

消化管出血などで起こる黒色便と見分けがつきにくいため、

腹痛などの症状を伴う場合や

鉄剤を飲んでいないのに黒色便が出た場合は

すぐに主治医に相談してください。

 

鉄剤による黒色便なのか、消化管出血による黒色便なのかは

診察や必要に応じた検査によって判断されます。

自己判断せず、気になる症状がある場合は医療機関を受診しましょう。

 

【徐放性製剤】

体の中で有効成分がゆっくり放出されるように設計されている薬があります。

これを徐放性製剤といいます。

 

徐放性製剤にはさまざまな種類があります。

薬の表面から少しずつ薬が放出されるものや

錠剤の内部に網目状の構造をもち、ゆっくり薬が放出されるものなどがあります。

 

このような徐放性製剤は

カプセルや錠剤の殻がそのまま便に出てしまうことがあります。

 

見た目は薬がそのまま出てきたように見えても

有効成分はすでに放出され、体内に吸収されている場合がほとんどです。

そのため「薬が効いていない」というわけではありません。

 

このように殻だけが便に出る現象は

「ゴーストピル」と呼ばれることがあります。

 

【抗菌薬(セフジニル)】

急性気管支炎、膀胱炎などで使用されることがあるセフジニル(セフゾン)という抗菌薬は

鉄剤や鉄分を含む製品と一緒に服用すると

便が赤っぽく見えることがあります。

 

血便のように見えて驚くことがありますが

薬による変化である場合もあります。

 

ただし、腹痛や大量の出血が疑われる場合には

自己判断せず医療機関を受診しましょう。

 

 


▶まとめ

 

今回は、薬を服用することで起こる便の変化についてご紹介しました。

 

成分や薬の構造が影響している場合は

心配のない場合が多いですが

色の変化は他の症状の出現と見分けがつきにくいもあります。

 

激しい腹痛や血便、黒色便が続くなど気になる症状がある場合は

自己判断せず医療機関へ相談しましょう。

 

心配なことがあれば、いつでも薬剤師にもご相談くださいね。