なつみは生まれてからずっと

今のところ

ベッドに横になって毎日を過ごしている。

 

 

 

 

 

最初はそりゃあもう戸惑ったし驚いたし

常識も希望もガラガラガッシャン!したけど


気づけば毎日愛おしんで、

そんな日々も一年が過ぎてた。







 

小さい子連れの親子さんや

おなかの大きな妊婦さんに

遭遇するたび悶絶してたのに、


風景として見過ごせるようになった。







 

「そのうち慣れます、大丈夫」

 

ブログのコメント欄で

そんなふうに言って

励ましてくれた先輩ママさんもいた。

 

たしかに慣れた。慣れたんだと思う。

 

 

 

 


なつみ以外の何かとなつみを比較すること、

わたし以外の誰かと自分を比較すること、


それらの無意味さと有害性を

とことん味わって来た。




 

毎日見るなつみがわたしにとっての全てで

それでいいじゃないか、と、


これも腑に落とすまでに時間がかかったが

いまはなんとか、なんとか

落とせてきてるところだと思う。

 





でも、

 

ぼんやりしてる目の前で、

ちんまりした手でお父さんの服を

ぎゅぅとつかむ男の子をみたり


スキップしながら電車に乗り込む

小さな女の子をみたりすると、


しばし無意識に観察したのち、

不思議な違和感にとらわれるのだ。






 

あ、そうか、

あれが普通なんだっけ、と。

 

 

 

 

 

なつみが笑うこと、走ること、

歌うこと、ママって呼ぶこと、

リコーダーをふくこと、

 

そういうのは全部、見つけ次第

わたしからちぎり取って空に放り投げた。

 

くっついたガムみたいにしつこかったけど

だいぶ取れたと思ってた。

 

なのに、まだあるんだね。

 

 







 

大好きだから、苦しい。






エゴをぜーーーんぶ取り払って

「この子のため」だけを

純粋に抽出できたらいいのに。


でも、もしそうできたら、

抽出後のビーカーに溜まる残滓は

どんな成分が混じってるんだろう。


怖いね。











 
 
トニー
「ママ、またなんかいってる」
 
くまくん
「あのひと悩むの趣味だから」
 
トニー
「言うねぇ」
 
くまくん
「うさぎちゃんが言ってた」
 
トニー
「聞かなかったことにしよう」
 
くまくん
「えっ、どうして」
 
 
 
 
なつみ
「ううぅん、ちぎりぱん・・・むにゃ」
 
くまくん
「なつみの足だね!」
 
トニー
「きみって」