1ヶ月ほど前、
わたしのクサクサしおれた気持ちに
そっと寄り添ってくれた
ありがたい出来事がありました。
後日談です。
置き手紙に大きな勇気をもらったわたしは
数日後、出産祝いの申請をしようと決意、
自転車で支援センターまで行ってきた。
今年は春の訪れが早くて、3月のうちにソメイヨシノは満開を迎え、インフルエンザの流行をひきずったまま、
いっきに花粉が、しかもいつもよりたくさん飛んだせいで、あちらこちらで、はくしょんはくしょん。
いっきに花粉が、しかもいつもよりたくさん飛んだせいで、あちらこちらで、はくしょんはくしょん。
すでにソメイヨシノは花を落として緑の葉を広げた頃。
濃いピンクのくしゅくしゅした桜の花びら、、、
あれは八重桜なのかな、ふさふさと枝についてピンク色の応援ポンポンのよう。
ゆるやかにポンポンから花びらが
はらはら、はらはら、はらはら。
午前の光の中、すっきり青く晴れた空を背にして
たえまなく花びらが散るさまは素晴らしく、
夢か真か、はたまた演歌のステージ装置か。
夢か真か、はたまた演歌のステージ装置か。
そんな並木道を自転車こぎこぎ。
彼女が所属するセンターまでこぎこぎ。
そうそう、このタイプの桜。
この写真は豊洲なので場所は関係ないのだけど。なんていう桜なんだろう。
初めて訪れたこども支援センターの門をくぐり、ガラス扉をあける。
左側にある受付口で担当のかたのお名前告げると、外出して不在だという。
左側にある受付口で担当のかたのお名前告げると、外出して不在だという。
そうかー、出直そうかな。。
到着してほんの1分に満たないあいだに、わたしはもう、もう帰りたくなってしまった。
心の中の勇気ゲージ、もともとちょびっとしかなかったから。一瞬で尽きるね。
「ちょっと待っててくださいね、別の担当を連れてきます」
スリッパの女性が、
「ちょっと待っててくださいね、別の担当を連れてきます」
スリッパの女性が、
廊下の先へぱたぱた早歩きしてく。
ぱっと振り返って聞いてくれた。
「あっ、よかったら、この建物の中を見ますか?」
ここはこども支援センター。
ここはこども支援センター。
こどもを預けたり、
こどもを遊ばせるための施設だ。
こどもがいる場所、いれる場所。
とてもじゃないけれど、中を見学するなんて
わたしには無理だった。
とてもじゃないけれど、中を見学するなんて
わたしには無理だった。
「いえ、いえ、結構です」
スリッパの女性がそっと気遣わしげなふうに
わたしをそっと伺う。
「でも、、、じゃあ、ちょっと待ってくださいね。お祝いの品物の担当者を呼びますからね」
そう言って廊下の先へ姿を消した。
戻りを待っていたのは数分だったと思う。
ぼんやり、周りを見渡す。
玄関の下駄箱をながめたり、
廊下の床の木目を目で追ったり。
玄関のガラス戸から、
やわらかい春の太陽が差し込んでる。
今日はなんて晴れた、
なんて気持ち良い天気なんだろう。
ここは、なんて優しい雰囲気なんだろう。
ガラスを通る太陽の光は
棒立ちになったわたしの体を、
この場所の空気を、
そぅっと温める。
ここに来るまで、こんなに温かい雰囲気が待ってるだなんて思ってなくて、わたしはすっかり面食らってしまった。
特別何かを言われたわけでもなんでもない。
なのに、ただただ、空気が暖かかっただけ、なのに、自分で訪れたくせに、なぜか不意打ちのようなショックを受けてしまった。
ただの玄関先なのに
わたしは、もう限界だった。
立ち尽くし、涙があふれてしまった。
なんで泣くのか。
ここのやさしい雰囲気に甘えたいのか。
わたしは、ここのひとに「かわいそうに」とでも慰めてもらいたいのか。
もうダメだ。撤収だ。帰ろう。
「ごめんなさい、また来ます」
窓口のむこうにいる職員のかたに告げると、とても驚いた顔をして、ひきとめてくれた。
でも、でも、でも、もう今日は無理。胸の中にワーッとこみあげてきてしまって。無理。
「もっと強くなってからきます」
それだけ言って逃げ帰った。
こんな、なんでもないのに。
来ただけで雰囲気に負けてしまうなんて
予想外だった。
同じ道を、住宅地を、自転車で走り抜けて、
ピンクの桜並木のなかを。
花びらどころか、
ちいさな虫にビチッと顔面アタックされながら
涙と鼻水でぐっしゃぐしゃにして
一目散に家へ帰った。
ティッシュもハンカチも持ってない。
鼻水をずーーっ、ずーーっ、
と自転車こぎこぎ、一生懸命すすった。
まーま、よしよし。はるのくつしただよー
あんなとこで泣いたりして
心配してもらいたいのか、
なんなの、なんでなの。
家に帰ってからぐるぐる考えた。
たぶん。
たぶんわたしは、あの場所のおだやかに温かい雰囲気に触れたとき、自分やなつみのことを、やさしく受け入れてもらえるような気がして、許してもらえるような気がして、うっかり安心してしまったんだ。
家に帰ってからぐるぐる考えた。
たぶん。
たぶんわたしは、あの場所のおだやかに温かい雰囲気に触れたとき、自分やなつみのことを、やさしく受け入れてもらえるような気がして、許してもらえるような気がして、うっかり安心してしまったんだ。
だから、泣いてしまったんだとおもう。
1時間ほどして電話がきた。
1時間ほどして電話がきた。
外出から戻り、ことのあらましを聞いたそうだ。
お恥ずかしい。
お騒がせしてしまった、
ご心配かけてすみません。
やっぱりお品は遠慮します。
そう伝えたところ、
その方はまた手を尽くしてくれた。
やっぱりお品は遠慮します。
そう伝えたところ、
その方はまた手を尽くしてくれた。
上司にかけあい、調整してくれた。
さらに後日、
いくつかのサンプルを手にして
もう一度、私の家に訪れてくれた。
ひつじさんのオルゴール、
人形のオルゴール、など。
かわいい。
紐を引っ張ってゼンマイをまくと
澄んだきれいな音でオルゴールの曲が流れた。
これ、これにします。
色はピンクがいいかな。
サンプルのひとつを選んだ。
夫が気に入ってる曲を奏でてくれる子にした。
訪問しておいて玄関先で泣いて逃げて。
どんだけかまってちゃんなんだよ、と
あの時のことは、いまでも反省しかない。
時間をさいてなんども家まで来てくれたことも
ありがたいやら、申し訳ないやら。
仕事増やしてすみません。
そして、届きました。
かわいい子。
「うーん、広い場所っていいわねー」
うち、狭いけど?
「ダンボールより広いわ。はー、のびる」
自由学園のアトリエでつくられたかわいい子。
ブラームスの子守唄が流れます。
ポロンちゃん
「アンタがのっかってる箱のなか、
ニューカマーがいるわね?」
くまちゃん
「なつみにお届け」
くまちゃん
「なつみにお届け」
ポロンちゃん
「アタシの美声にかなうかしら!
協奏曲できるかしらね。
なつみが帰ってきたらやりましょう演奏会」
ポロンちゃん、、、それいいアイディアだね。
なつみが帰ってきたらやりましょう演奏会」
ポロンちゃん、、、それいいアイディアだね。