先日、栃木県小山市出身の写真作家、糸井潤さんの個展「Cantos Familia-光が紡ぐ散文詩」に行ってきました。
場所は、栃木県小山市の市立車屋美術館。この美術館は、元は地元の豪商であった、小川家の住宅や蔵(国の有形文化財として登録されている)で、その建物がそのまま展示スペースとして使われています。
特に、この主屋は釘を一本も使用していない宮大工による建築ということで、一見の価値があると思います。
さて、展示されていた糸井氏の作品「Cantos Familia」ですが、自信の辛い体験から撮り始められた森の写真でした。
でもその写真には、心を波立たせるものは何もなく、美しい植物と光と影で静かに満たされているような気がしました。
『地面に落ちている光を拾い歩いた』との作家の言葉の通り、あるときは昆虫、あるときは動物となるような、縮尺感覚の揺れの中、光を追うように館の中を歩く自分がいました。
「Cantos Familia」とは、ラテン語で「家族の歌」を意味するそう。
フィンランドの森、小山市の森、小山市自宅周辺の近景を写した写真群、作家にとってこれらの写真が3小節からなる家族との対話だそうです。
そして、肥料蔵の中に展示された「Kaamos(カーモス)」シリーズ。
「Kaamos」とは白夜と対をなす現象「極夜」のフィンランド語だそう。朝になっても太陽が昇ってこず、昼に少しだけ明るくなるんだそうです(知らなんだ)。自然光で満ちた「Cantos Familia」とは逆の、うっすらとした人工光が少しだけの写真3点。朝焼けかと思う空も、町の灯りの色とのこと。
マイナス何十度の世界。薄暗い蔵の中、絞った照明の中で、雪の粒がきらきらときらめく景色は絶品でした。
さらに、主屋の中にも過去の作品や映像などがあり、文字通り糸井氏の世界を堪能させていただきました。
何よりも館員の方が皆親切で、定員いっぱいだったワークショップに入れてくれたり、額装の違いやプリントの違いを説明してくれたり、小雨で雨を貸してくれたり、ボランティアのおじさんが小川家の歴史を説明してくれたり、本当にアットホームな美術館で、時間があっという間に過ぎてしまいました。
「Cantos Familia-光が紡ぐ散文詩」は、6月17日(日)まで。
お見逃しなく
「Cantos Familia 光が紡ぐ散文詩 糸井潤展」
http://www.city.oyama.tochigi.jp/kyoikuiinkai/kurumayabizyutukan/tenrankai/kaisaityuu/20120421.html
小山市立車屋美術館
http://www.city.oyama.tochigi.jp/kyoikuiinkai/kurumayabizyutukan/annai/gaiyou.html
小川家住宅
http://www.city.oyama.tochigi.jp/kyoikuiinkai/kurumayabizyutukan/annai/juutaku.html