※この記事は未亡人の妄想小説です

 

前回↓

 

 

 

 

夫を思い出しながらしている事は

多分翔は知らない。

 

 

気付いてるかもしれないけど

私から話した事はない。

 

 

翔の手の感触は夫と少し似ている。

 

その手に触れられると

自然と夫を思い出してしまう。

 

 

私は愛する人に抱きしめては貰えない。

 

私の愛する人も私に触れる事はできない。

 

 

だからといって

その温もりをお金で買って

どうにもならない気持ちを満たしている私を

夫はどう思っているのだろう。

 

だけどそれを確かめる術もない。

 

 

だから私は

自分の都合の良い解釈をするしかない。

そうやって自己解決していくしかない。

 

 

夫がこの世にいれば。

 

こんな想いしなくていいのに・・・。

 

 

 

カフェオレが減っていく。

 

母親に戻る時間が迫る。

 

帰らないと・・・。

 

 

「・・・よし!」

 

気合を少し入れてから店を出た。

 

 

 

店を出ると計ったかのように翔からLINEが届いた。

 

 

「里奈さん、今日もありがとう。何かあったら連絡してね!いつでも待ってるから。」

 

 

これはマニュアルなんだろうな・・・と思いながら

「ありがとう!」のスタンプを送る。

 

もう母親へ戻る時間だ・・・。

 

 

 

思わず空を見上げる。

 

私の愛する人はこの世には居ない。

 

私の恋人は空の上。

 

その人だけが私の、恋人。

 

 

 

~ 完 ~