1. なぜ今「つくば市の人口動向」を見るのか

 日本全体では人口減少が当たり前になり、「何となく人が減ってきたよね」という会話も珍しくなくなりました。ところが、同じ茨城県南を見ていると、少し違う景色が見えてきます。
 その代表が、つくば市です。つくば市の人口は現在、ざっくり言えば26万人前後。今も増加傾向が続いていて、「人口が増えている地方都市」としてよく名前が挙がります。(つくば市の行政区別人口表

 一方で、同じ生活圏にある土浦市・牛久市・石岡市などは、長い目で見ると横ばいから減少の流れにあります。普段の生活では同じスーパーに行ったり、同じ道路を使ったりしているのに、人口グラフだけ見るとつくば市だけ違う動きをしている、というのが現状です。

 さらに視野を広げると、千葉県市原市や福島県福島市のように、人口規模がつくば市とほぼ同じ「26万人クラス」の都市があります。ところが、こちらは全体としては少しずつ人口が減っている方向にあります。(全国市町村人口ランキング
 同じくらいの大きさなのに、「つくばは増える」「市原・福島は減る」「県南の周辺市町村は横ばい〜減少」という三つのパターンが同時に存在しているわけです。

 この記事では、石岡市に住む立場から、

  • つくば市の人口動向の特徴
  • 周辺市町村(土浦・牛久・石岡など)との違い
  • 同規模都市である市原市・福島市との違い

を整理しながら、「なぜつくば市だけ人口の動きが違って見えるのか」を考えてみます。はっきりした結論を出すというよりも、データや日常の感覚を手がかりに、いくつかの可能性を探るイメージで読んでいただければと思います。


2. データで見る:つくば市と周辺市町村・同規模都市のちがい

 まず、つくば市の人口推移をざっくり振り返ってみます。研究学園都市として整備が進んだ1980年代以降、つくば市は長期的に一貫して人口が増えてきました。最近の統計でも、しばらくは増加傾向が続き、その後ようやく減少に転じるといった見通しが示されています。日本全体がすでに「減るフェーズ」に入っていることを考えると、「ピークが後ろにずれている都市」と言えそうです。

 これに対して、周辺市町村の人口推移は違う線を描いています。

  • 土浦市:1990年代頃にピーク、その後は緩やかな減少傾向
  • 牛久市:しばらく増え続けた後、近年は微減に転じている(牛久市の人口について
  • 石岡市:長期的には明確な減少と高齢化が進行中(牛久市の人口変化の考察
  • 阿見町:一時期は横ばいに近かったが、大学や商業施設の影響もあって、最近はわずかに増加傾向

 数字を並べると、「つくば市だけがはっきりとした増加トレンド」「周辺市町村は横ばい〜減少」という構図が見えてきます。

 もう一歩踏み込んで、年齢構成に目を向けると、その違いはさらに分かりやすくなります。つくば市は子どもと働き盛り世代の割合が比較的高く、高齢化率は県平均より低い水準にとどまっています。一方、土浦市や牛久市、石岡市は高齢化率が3割前後、あるいはそれ以上の水準まで上がっており、「人口は似たような規模でも、年齢構成はかなり違う」という印象です。

 では、市原市と福島市はどうでしょうか。こちらもおおよそ26万人クラスの都市ですが、

  • 総人口は、ここ数年は“じわじわ減る”方向
  • 出生数より死亡数が多く、自然減が続いている
  • 若い世代の県外流出も影響している

といった状況が続いています。(福島市の人口の現在
 同じ26万人台でも、「増え続けているつくば」「減少局面にある市原・福島」「横ばい〜減少の周辺市町村」と、三者三様のパターンになっていることが分かります。


3. つくば市だけ人口が増え続けている背景

 では、なぜつくば市だけ人口が増え続けているのでしょうか。
 ポイントになりそうなのは、次の三つです。

3-1. つくばエクスプレスと計画的なまちづくり

 まずは、交通と都市基盤です。つくばエクスプレス(TX)が開業したことで、秋葉原〜つくば間が最短45分前後で結ばれるようになりました。首都圏から見ると「東京まで通勤できる郊外」としての魅力が一気に高まり、研究学園駅周辺などでは区画整理と住宅供給が計画的に進んできました。

 石岡から見ても、その変化ははっきり感じます。10年前と比べて、研究学園駅周辺のマンションや戸建ては明らかに増えましたし、週末に車で行くと、駐車場の県外ナンバーも目立ちます。「都内勤務だけど、子育てはつくばで」と考える世帯にとって、TX沿線の新興住宅地は選択肢の一つになっているように思えます。

3-2. 研究・教育機関による「人の出入り」

 二つ目は、仕事と学びの場の集積です。つくば市には国の研究機関、大学、企業の研究所などが集中しています。研究者や技術者、大学院生など、専門職や学生が全国・世界から集まり、一定期間をつくばで過ごします。

 この人たちは、数年単位で入れ替わっていく側面がありますが、そのうちの一部はつくばや周辺市町村に定住します。結果として、「若い世代が常に流入し、その一部が残っていく」という循環が生まれていると考えられます。
 同じ26万人クラスでも、工業都市としての市原市、県庁所在地としての福島市と比べると、「研究・教育都市」という性格の違いが、人口構造に影響している可能性はありそうです。

3-3. 暮らしやすさ・子育て環境の評価

 三つ目は、暮らしやすさと子育て環境です。
 石岡から休日につくばへ出かけると、ショッピングモールや公園、飲食店、クリニックなどがコンパクトにまとまっている印象があります。車さえあれば、買い物から病院、子どもの遊び場まで、だいたい市内で完結できてしまいます。

 また、保育園・幼稚園・学童保育の数や、子育て支援に関する取り組みも、周辺市町村と比べて選択肢が多いと感じる家庭も多いのではないでしょうか。
 「東京ほど忙しくはないけれど、田舎すぎるわけでもない」「車社会だけど、最低限の都市的な便利さはある」というバランスが、子育て世代にとって魅力的に映っている可能性があります。

 こうした要素が重なり合うことで、つくば市では「自然増がほぼゼロ〜わずかにマイナスでも、社会増がそれを上回る」という状態が続いていると考えられます。ただし、出生数そのものは全国と同じように減ってきているため、いつまでも同じペースで増え続けるとは限りません。将来的には、市原市や福島市が経験しているような「自然減が社会増を上回る段階」に、つくば市も近づいていく可能性があります。


4. 石岡から見える、県南エリアのこれから

 石岡で暮らしていると、ここ数年で「つくばに行く用事」が確実に増えています。買い物はつくばの大型店、専門的な病院もつくば、子どもの進学先候補にもつくばの学校が入ってくる——そんな家庭は少なくないはずです。
 感覚的には、「つくば市の人口が増えている」というより、「県南一帯の生活が、つくば中心にまとまりつつある」と表現したほうがしっくりくる場面もあります。

 一方で、土浦市や牛久市など、いったん人口減少に入った都市が、ある年にはわずかですが増加に転じるケースも出てきています。TXや高速道路網の整備が進み、居住地と通勤・通学先の組み合わせが多様になった結果、「つくばだけが特別」という時期から、「つくばを軸にした広域の暮らし方」に変わりつつあるのかもしれません。

 では、この先どうなるでしょうか。
 千葉県市原市や福島市の状況を見ると、「中規模都市でも、人口減少が当たり前の時代」にすでに入っています。そう考えると、「つくば市だけはこのままずっと増え続ける」と楽観するのは慎重であったほうがよさそうです。むしろ、

  • つくば市が将来、人口減少に転じたとき
  • 周辺市町村との役割分担をどう考えるか
  • つくば都市圏として、どんな形で支え合っていくか

といった視点が、県南全体のテーマになっていくのではないかと感じます。

 石岡に住む身としては、「つくばに頼る部分は頼りながらも、石岡にしかない良さをどう伸ばすか」が重要だと思っています。祭りや歴史ある街並み、フルーツ栽培など、人口が減っても簡単には消えない魅力が各地にあります。
 つくば市の人口増加をただうらやむのではなく、

  • 何が違うのか
  • 何を学べるのか
  • 逆に、つくばにはないものを自分たちは持っているのか

を考えるきっかけにしていくことが、結果として県南エリア全体の「しなやかさ」につながるのではないでしょうか。

 はっきりした答えは出ませんが、つくば市・周辺市町村・市原市・福島市の人口動向を並べて眺めてみることで、「地方都市のこれから」を考えるヒントは少し見えてくるように思います。