石岡市に住んでいると、笠間市は「陶炎祭でにぎわうまち」「笠間稲荷にお参りに行くまち」という、明るいイメージが強いと思います。私自身、石岡から国道355号を北に走って笠間に向かうことがよくありますが、今でも道路沿いには飲食チェーンやホームセンターが並び、住宅地には新しく見える家もぽつぽつ増えています。ぱっと見た限りでは、「人口が急に減って大変なことになっている」という印象はあまりありません。
ところが、人口の統計を見ると、笠間市はここ20〜30年ほど、確かに減少が続いています。ピークだった頃より全体としては一割前後少なくなり、高齢化も進んでいます。
結論から言うと、笠間市の人口減少は周辺市町村と比べて特別に速いわけではないものの、「静かに、しかし着実に進んでいるタイプ」だと捉えるのが近そうです。
この記事では、石岡市民という立場から、笠間市を
- 茨城県内の周辺市町村(石岡市・小美玉市・かすみがうら市など)
- 人口規模が近い秋田県大仙市・福岡県行橋市
と比べながら、
- 笠間市の人口減少は速いのか遅いのか
- なぜ「急激な変化」が起きていないように見えるのか
を、データと生活感の両方から考えてみます。
笠間市の人口減少と「違和感」
数字と肌感覚のズレ
まず、笠間市の人口の流れをざっくり振り返ってみます(数字はイメージとしての整理です)。
- 1990年前後:およそ8万人前後で、ほぼ横ばい
- 2000年代:8万人台から少しずつ減少に転じる
- 直近:7万人台前半へとゆるやかに減少
グラフにすると、急角度ではないものの、右肩下がりの線になるはずです。
1年ごとの変化で見ると数百人〜千人前後のマイナスが積み重なり、「気がついたらピークよりだいぶ減っていた」というタイプの人口減少です。
年齢構成に目を向けると、65歳以上の高齢者の割合は3割を超え、子どもの数や働き盛り世代は少しずつ減っています。一方で、世帯数は大きくは減っておらず、高齢の単身世帯や夫婦のみ世帯が増えている状況が想像できます。(笠間市の最新の人口と構成)
しかし、実際に笠間を歩いてみると、たとえば市街地のスーパーやドラッグストアにはそれなりに人がいて、陶炎祭の季節になれば駐車場探しに困るほどのにぎわいがあります。石岡側から来るときも、10年前と比べて「道がガラガラになった」というほどの変化は感じません。
- 数字:確かに減少
- 風景:そこまで劇的には変わっていない
このズレが、「人口は減っているのに、急激な変化は起きていないように見える」という感覚につながっているように思います。
データで見る笠間市の人口減少
周辺市町村・大仙市・行橋市との位置づけ
次に、笠間市が「全体の中でどのあたりにいるのか」をざっくり押さえるために、周辺市町村と、同規模の自治体を並べてみます。
周辺市町村との比較:みんな静かに減っている
茨城県央〜県南エリアを見渡すと、笠間市と似た規模の市がいくつかあります。
- 石岡市:人口およそ7万人弱で、ここ20年ほどはじわじわ減少(石岡市の人口考察)
- 小美玉市:人口5万人弱で、微減〜横ばいに近い動き(小美玉市の人口実状)
- かすみがうら市:人口4万人弱で、なだらかな減少傾向(かすみがうら市の人口の減少について)
どの市も「派手に増えるわけでも、急に激減するわけでもない」という意味では、笠間市とよく似ています。
このエリア全体が、静かな右肩下がりのカーブを描いていて、笠間だけが飛び抜けて悪いわけではありません。
石岡市から見ていても、
- 駅前や中心市街地の空き店舗はじわじわ増えている
- 一方で、郊外のロードサイド店舗や住宅地にはそれなりに人がいる
という「ゆるやかな変化」が続いており、笠間と同じ空気感を感じます。
つまり、「静かな人口減少」は笠間だけの現象ではなく、県央〜県南の中規模都市に共通する状態と言えそうです。
大仙市・行橋市との比較:同じ7万人でも三者三様
全国に視野を広げると、笠間市と同じく人口7万人前後のまちとして、秋田県大仙市と福岡県行橋市がよく挙げられます。(全国市町村人口ランキング)
-
秋田県大仙市
- 旧大曲市などが合併してできた市で、農業と「大曲の花火」で知られるまち。
- ここ10〜20年で人口ははっきりと減少し、減り方も笠間市よりやや急なカーブだとされています。(大仙市の人口について)
-
福岡県行橋市
- 北九州・福岡都市圏の一角にあり、通勤圏としての性格が強いまち。
- 人口は長い目で見ると横ばい〜微増の時期もあり、減少ペースは比較的緩やかです。
同じ「7万人クラス」のまちでも、
- 笠間市:ゆっくりと減少
- 大仙市:もっとはっきりと減少
- 行橋市:横ばい〜微増に近い動き
と、人口のカーブは三者三様です。
これは、立地条件(都市圏との距離)、産業の中身、交通の利便性などが違うためで、笠間市の人口減少が「日本全体の中でどの程度の速さなのか」を考えるうえで、参考になる対比です。
なぜ笠間市では「急激な人口減少」が起きていないように見えるのか
では、なぜ笠間市では、人口が減っているにもかかわらず、「一気にまちがしぼんだ」という印象になっていないのでしょうか。ここからは、いくつかの理由を仮説として挙げてみます。
1. 立地と生活圏が「ほどほどに便利」
笠間市は、水戸・友部方面と石岡・つくば方面の中間あたりに位置しています。高速道路のインターチェンジや幹線道路にも出やすく、
- 水戸・ひたちなか方面へ通勤する人
- 石岡・土浦・つくば方面へ動く人
どちらのパターンも一定数いると考えられます。
石岡から車で走っていると、
- 距離的に「遠すぎる」感じはしない
- かといって「完全なベッドタウン」と言い切れるほど都市圏に近いわけでもない
という、絶妙に中庸なポジションにいることが分かります。
この「ほどほどに便利」な立地が、若い世代の一斉流出を防ぎつつ、爆発的な人口流入も生まない、という現在の状況につながっているのかもしれません。
2. 観光・文化による「外からのにぎわい」
笠間と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、笠間焼や笠間稲荷神社、陶炎祭などの観光・文化です。陶炎祭の時期になると、県外ナンバーの車が増え、普段は静かな場所も一気に人であふれます。
地元の人口が減っていても、
- イベントや連休には観光客でにぎわう
- メディアやSNSに定期的に登場する
という状態が続いていると、「完全に元気がなくなったまち」というイメージにはなりにくいものです。
大仙市のように農業中心で観光色が比較的薄い地域と比べると、外から人が流入する機会が多いことが、「まだ賑わっている」という印象を支えているとも考えられます。
3. 住宅・地価が「現実的なライン」にある
石岡で暮らしていて、笠間の住宅地を見て回ると、「まだ一戸建てを建てる現実味があるまち」という印象を受けます。首都圏のベッドタウンのように地価が跳ね上がっているわけでもなく、かといって過疎地のように極端に安いわけでもありません。
この「ほどほどの地価」は、
- 親の家を建て替えて同じ地域に住み続ける
- 実家の近くに家を建てて暮らす
といった選択肢を支えています。結果として、若い世代や子育て世代が一定数地元に残り、人口は減っていても、子どもの姿が完全に消えるわけではない状況が続いているのではないでしょうか。
4. 産業が一本足ではなく、ショックが分散している
笠間市の産業は、農業・陶芸・観光・小売・サービス業など、複数の柱に分かれています。特定の大工場や大企業に依存しているわけではなく、さまざまな業種が少しずつ雇用を支えています。
この構造は、
- 大きな工場が撤退して、一気に数千人単位で人口が減る
といったショックを和らげる役割を果たしていると考えられます。その一方で、石岡市や小美玉市、かすみがうら市も同じように「決定的な巨大産業がない」ため、地域全体がゆっくりと痩せていく構図も共有しています。
急激な人口減少を招くような“ひとつの大きな失敗”は起きていないが、静かに体力が落ちている。
これが、今の笠間市の姿を表しているのかもしれません。
静かな人口減少の先にあるもの
笠間市・石岡市が今考えておきたいこと
ここまで見てきたように、笠間市は人口7万人前後の中規模都市で、秋田県大仙市・福岡県行橋市と同じクラスに位置付けられます。ただし、人口のカーブはそれぞれ違い、
- 大仙市:はっきりとした人口減少
- 行橋市:都市圏との結びつきで横ばい〜微増の時期もある
- 笠間市:その中間で、「静かに減っている」状態
という、三者三様になっています。
茨城県内に目を戻すと、石岡市・小美玉市・かすみがうら市も、笠間市と同じように緩やかな右肩下がりを描いています。笠間だけが特別なのではなく、「県央〜県南の多くのまちが同じ船に乗っている」というほうが、実態に近そうです。
やっかいなのは、この静かさです。
商店街が一気にシャッター街になるわけでもなく、学校が突然なくなるわけでもない。そのため、生活者としては「なんとなく減っている気はするけれど、まだ大丈夫だろう」と感じやすい状況が続きます。
一方で、将来の推計では、笠間市や石岡市のような地方都市の多くが、2040〜2050年ごろにはピーク時の半分前後まで人口が減る可能性も指摘されています。
そう考えると、今の「まだ大きな変化は見えにくい」状態は、次の一手を考えるための猶予期間とも言えます。
笠間市・石岡市が今から考えておきたいテーマとしては、例えばこんなものが挙げられます。
- 移住者や二拠点生活の受け皿として、どんな暮らし方を提案できるか
- 子育て世代にとって「住み続けたい」「戻ってきたい」と思える環境をどう整えるか
- 高齢化が進んでも、買い物や通院に困らないコンパクトなまちの姿をどう描くか
大仙市のように、より人口減少が進んだ地域の取り組みから「先に起きる課題」を学ぶこともできますし、行橋市のように都市圏と結びつくまちから「人を呼び込む視点」を参考にすることもできそうです。
「急激な変化がないから、まだ何もしなくていい」のか。
「急激な変化がない今のうちに、次の一手を打つべき」なのか。
答えは簡単ではありません。ただ一つ言えるのは、笠間市の人口グラフはすでに静かに傾き始めていて、その傾きは石岡市を含む周辺のまちとも共有されているということです。
その静かな傾きに、私たちがいつ、どう向き合うのか。そこに、この地域の10年後・20年後がかかっているように感じています。
