いつもは9時過ぎまで寝ている2人ですが、今日はもう電車の中です。
今回の旅の目的地は都会より電車で2時間、とある田舎の遊園地です。
『ごしゅじん!わっち遊園地行ったことない!4歳児!!』
というけーちゃんの発言がきっかけでした。
乗り換えで適当に朝食を済ませ、見渡す限りの大自然の中を電車で進みます。
けーちゃんは初めての旅行に心を躍らせそわそわと、青年さんは暇そうにスマホゲーをポチポチと。
『ごしゅじん!かまえー!かまえー!ガブガブ』
「ちょっとだけ待ってくれ、今ティガレックスが瀕死だ」
『男の人ってやっぱ狩猟民族の血が流れているのね…ピスピス』
遊園地の最寄りの駅で降りた2人はタクシーを捕まえ、目的地を告げました。
曲がりくねったアップダウンのある細道を運転手さんは慣れた手つきで駆け抜けます。
20分弱もすると大きな観覧車が見えてきました。
けーちゃんはにこにこ顔でした。
入園チケットとフリーパスを購入し、正門をくぐると大きな花壇と、ようこその文字が書かれた看板が2人を出迎えました。
「せっかくだから写真でも撮ろうか!」
『ダメ!浮気の証拠になっちゃう!!』
…ということで交渉の結果、けーちゃん単独で、しかも顔は写さないという条件付きで記念撮影をしました。
結果、そこに映っていたのはフードですっぽり顔を隠し、イカみたいなシルエットの黒ずくめの女の子でした。
記念撮影(?)を終え、周りを見渡したけーちゃんはある物を見つけ走り出しました。観覧車でしょうか?ジェットコースターでしょうか?はたまた別の乗り物でしょうか。
『青年しゃん!わっちこれやりたい!』
けーちゃんが指した指の先は真実の口でした。
説明しておきますと、ローマのあの有名な真実の口の見た目をしていて、100円入れて口の中に手を入れるとなんか適当に占われて適当な結果が紙で出てくるやつです。
(やっぱこういう所は4歳児なんだなぁ)
と暖かく見守る青年さん。
どうやらけーちゃんの結果が出たようです。
コロン
印刷された結果《肉欲に流されやすい》
『wwwwww』
「テラビッチwwwwww」
『青年さんもやってみてよ!!』
「いいぞ。まぁけーちゃんとは違って立派な結果が出ると思うけどなwww」
コロン
印刷された結果《肉欲に流されやすい》
「」
『私たちずぶずぶでどろどろの爛れた関係だねっ!』
その後2人は園内を散策しました。
『見て見て青年さん!男の子2人組だよ!!ホモォ┌(┌^o^)┐だよ!!』
「お、ホントだ┌(┌^o^)┐ホモォかな?」
『尾行してみよ!』
「やめなさいw」
『ジェットコースターってたのしいね!』
「」
『たまひゅんってなる!!』
「」
『もう1回乗ろ?』
「4回目は1人でどうぞ…」
『わお、高いねぇ。一面の森ですねえ』
「田舎ですからねぇ」
『そろそろてっぺんだね!』
「あー、けーちゃんや」
『?』
「観覧車にはルールがあってな」
「1番上に来たらカップルはキスしないとダメなんだ」
『あ、てっぺん……んっ』
日が傾き始め、2人は遊園地を後にしました。
けーちゃんは海外アーティストのジャケット写真風歩き方の練習をしながら、青年さんはティガレックスを狩りながら帰りのバスを待ちました。
バスはこれまた田舎を走り、2人を次の目的地であるペンションへと運びました。
ペンションに着き、宿泊手続きを行うと同時に家族風呂を予約しました。
数多ある宿泊施設の中から青年さんがこのペンションを選んだ理由、それが家族風呂の存在でした。男のロマンらしいです、知りませんけど…。
部屋で晩御飯を食べ終え、食後の休憩をしていると
『あ、コンタクトの洗浄セット忘れた。ちと買ってくる』
「お、一緒に行くか?」
『いや、1人で行ってくるよ。コンビニの場所も分かるし』
「了解、実況よろ」
ピロリン
『けーちゃんです、1人で寂しくありませんか?どうぞ』
「まだ出てって10秒です寂しくないです、どうぞ」
『オナニーしてませんか?どうぞ』
「してねーよ、どうぞ」
こんな感じのいつものLINEのやり取りもこれで最後と思うと感慨深いものですね。
無事帰ってきたけーちゃんと、青年さんは家族風呂へと向かいます。
狭い脱衣所を抜けると、2人で入るには十分な大きさの湯船がお出迎えです。
けーちゃんは初めての大きなお風呂に大はしゃぎです。人目がないのでバタ足で縦横無尽です。
青年さんは水面に浮かぶ大きな桃を見ながら
(ムードが…ロマンがバシャバシャと音を立てて崩れていく…)
とか考えていました。やはりゲスいですねこの人。
家族風呂。
もし、けーちゃんが副人格でなければ…
彼女の人格に対して、彼女の体があれば…
2人は間違いなく家族になっていたでしょうね。
きっと未来永劫仲睦まじい素敵な夫婦になっていたことでしょう。
ドラマや映画なら、最後のシーンで突如光に包まれたけーちゃんの身体が分身して、けーちゃんも主ちゃんもそれぞれの幸せを手にしましたとさ、とでもなるのでしょうが現実は残酷です。別れの時はもうすぐそこまで迫っていました。
お風呂から戻ると和室の真ん中に布団が敷かれていました。大きなお部屋に大きなお布団でしたが、2人はくっ付いて眠りについたのでした。
3/24日曜日
朝です。
朝食です。
バイキングです。
宿泊した時の楽しみの一つですね。
たくさんの種類の料理の中からけーちゃんはサラダやお洒落な料理を盛り付けました。青年さんのプレートは茶色で埋め尽くされていました。
青年さんは料理を撮るふりをしてけーちゃんもこっそり撮影しようとしましたが、上着の襟元を引っ張りあげてまたしてもけーちゃんは顔を隠してしまいました。
某クリニックのCM画像になってしまいました。
ペンションを出発した2人は近くの有名な神社へと足を運びました。
日曜ということもあり中々の混雑でした。
鯉に餌をあげようとするものの野生のハトの襲撃に遭ったり、長い階段と長い行列でけーちゃんの足がぷるぷるしたり、ほのぼのとした時間を過ごすことが出来ました。
最後に2人はお参りをして神社を後にしました。
2人は神様に何をお願いしたんでしょうね。
きっとけーちゃんが、青年さんが、主ちゃんが、皆が幸せになるようにお互いが祈ったのではないでしょうか。
そして2人は旅行を終え、青年さんの家へと帰宅しました。
この時既に2人に残された時間は24時間を切っていました。
───
さて皆さん、ついに青年と彼女の3ヶ月間は次章にて終わりを迎えます。ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございます。
しかし、慣れぬ語り手故に少々私は疲れてしまいました。
ですのでそうですね…皆さんには最終章は青年さんの目線で物語をご覧頂こうと思います。
次回、最終章 人生の終わらせ方
2人の物語の…けーちゃんの人生の最後を、皆様是非見届けてください。