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青年と彼女の3ヶ月間

とある青年と彼女が過ごした、たった3ヶ月間の幸せな時間。

彼女の人生とその価値。

生きる理由とその終わらせ方。

「もしもし…?何かあったかいー?」


どう対応していいか分からない青年は極力いつも通りの口調でそう応えました。


そう、いつも通り。


これから始まる話もいつも通り…お互いの好意を確かめ合う幸せな話であることを願うかのように。


しかし、その願いは叶いませんでした。




『こんばんは…初めまして…彼女です』




それはいつもの天真爛漫なトーンではなく、ネガティブな印象を与える低い声でした。


そして彼女は言葉を続けました。


『彼女…と言っても、貴方が仲良くしている彼女ではありません』






『私は解離性同一性障害です』









解離性同一性障害…より馴染みのある言い方をすると多重人格ですね。


彼女はさらに言葉を続けました。




『貴方が仲良くしている彼女は…私の副人格です』


副人格…彼女の場合を例に挙げると、この暗い人格が本当の彼女で、青年と仲良しの明るい人格は何かのきっかけで"作られた"2つ目の人格ということです。





『最近、色々不思議なことが立て続けに起きていたんです』

『気付くと数時間の記憶が飛んでいたり、いつの間にか知らない土地にいたり』

『特に木曜日と土曜日は決まって記憶が飛ぶんです』



土曜日…彼女が青年と会う日です。



『薄々勘づいてはいたんです、もしかして解離性同一性障害なんじゃないかって』


『そしたら先程、部屋の中である物を見つけて確信しました。…風俗店のマニュアルでした』





『そして、悪いなとは思ったのですが青年さんとのLINEの会話を見させてもらいました』


『とても仲が良さそうでしたので、貴方には伝えた方が良いかと思って電話させて頂きました』




ここまでの説明を青年は全て素直に受け入れました。


普通に進学し、普通に就職し、平凡な人生を歩んできた青年にとってはとても奇怪な話でした。

しかし、非モテの権化である青年が出会って数週間であれほどの恋仲(未満)になれたのです。その時点で十分奇怪なのですから、今更副人格だと言われても受け入れられない道理はありませんでした。


『多分彼女、青年さんのこと好きですよ』


流石主人格、副人格のことは何となく分かるのね…というか多分誰でも分かりますね、あんなクソ甘LINEしてたんですから。


『私のことは気にせず、彼女と仲良くしてあげてください。彼女、仲の良いお友達いなさそうですから寂しいんだと思います』



自分が1番大変なのに、副人格さんのこと気遣える主人格さん…優しい心の持ち主さんですね。



『あの…えっちとかも別にしてもらってもいいですから』



いきなり何を言うのでしょうかこの主人格さんは。



『あ、でも私、肌が色黒なので…好みじゃなかったらすみません』



謝るポイントがさっぱり分かりませんよ主人格さん



「大丈夫、もう知ってるから」



久々に喋ったかと思ったら何言ってんですかコイツ。普通にセクハラですよ普通に、最低。こんなんだから非モテなんですよ。あーあ、主人格さんも閉口してるじゃないですか…







その後は小一時間、主人格の生い立ちを聞いたり、青年が副人格の様子を主人格に伝えたりして通話を終えました。



静寂が青年に冷静を取り戻させました。



青年は(ネガティブな割に話は弾んだな)とかいうズレた感想と共に、明日からどういう対応すべきかを考えましたが、いくら考えても答えは出ず、そのまま思考は闇へと沈んでいきました。




━━━━━━━補足━━━━━━━

彼女(副人格):今回出番無し。寝てます。


彼女(主人格):ネガティブオーラ。モヒカンアイコンの元凶。礼儀正しい。今後出番は無し。


青年:騙されやすい。どんな話でも無条件で信じる。人を疑うことを知らない。まだ見せ場無し。