どんなに時間が止まってほしいと願っても、時間は止まってくれない。

6月19日、検査結果が伝えられる日がやって来た。

足がすくむ。

足が重い。

足を前に進めることが怖い。

何度も立ち止まる。

駅まで10分ちょっとの道を何分かけたのだろう。

電車とバスを乗り継ぎ、がんセンターへ。

 

待合室で呼ばれるまでの間、じっとしていることができない。

何回も帰りたくなる。

呼び出しのブザーが鳴って、診察室へ。

医師から「お一人ですか?」と聞かれる。

「はい、一人です」と答えるのが精いっぱい。

「そうですか」と言われた後で、がんを宣告される。

よくマンガなどで「がんです」と言われたあとで、ガーンとなるシーンがあるが、その通りだと思った。

医師が告げた病名は「上咽頭がん」。

「ここにがんがあります」と指をさされた画像の場所は、右鼻と右耳の間から口にかけての位置。

今日時間があるかを聞かれたので、今日はあると返答。

「転移があるかどうか、あるいはこのがんが転移によってのがんかどうかを調べます。今日はこれから造影剤を使ってCT検査、後日当院でもMRIの検査をします」と。

「今後の予定ですが」と医師が続ける。

「患部が脳に近いので、手術はしません。上咽頭がんは手術をしないのが一般的です。来月から数回入院してもらって、抗がん剤と放射能治療をします。7割はたすかります」

この時「今後転移などが起きるかもしれない。今回の治療がどんなに長くなっても、このがんでは死なない」と、はっきりと自分の頭の中に浮かんできた。

根拠は、ない。