扶養控除の場合、納税者の扶養対象となる家族
(扶養親族)の合計所得金額が38万円以下である
必要があります。
例えば、扶養対象の母親が年金をもらいながら、
パートで働いているとします。
この場合、他に収入がなければ年金所得
(=雑所得)とパートの給料から発生する給与所得の
合計所得金額が対象になります。
そして、これは裏を返すと扶養対象となる家族
(扶養親族)の所得金額を計算しないと扶養控除の
対象か否かを判断できないということです。
そこで、簡単に所得の計算について
おさらいしておきましょう。
1.収入(実際の収入金額)から所得(課税標準)を算出
一般的に損益通算と呼び、所得の種類毎に計算します。
▼計算式
所得(課税標準)=収入-[損益通算の控除額(※1)]
※1 所得の種類により異なり、その収入を得るための
費用、損失、一定の控除額など
2.所得(課税標準)から所得控除額を引き課税所得算出
いわゆる所得控除で、分離課税以外の所得の所得
(課税標準)の合算額に対して行われます。
▼計算式
課税所得=所得(課税標準)-所得控除(※2)
※2 医療費控除、配偶者控除、扶養控除など
この後、税額控除などがありますが、
趣旨がずれるので省略します。
扶養控除の対象か否かを判断するのは、
上記1の算出結果、所得(課税標準)の合算額を
もとにして判断します。
65歳以上の場合、年金収入が120万円以下であれば、
年金所得はゼロとなります。
従って、158万円で年金所得は38万円となります。
これは扶養親族を判断する所得の上限になるので、
他に収入がなければこの金額までなら
所得額上は扶養親族と判断できます。
ところが、父親が亡くなって母親(65歳以上)が
遺族厚生年金をもらっていたとします。
年額200万円。
一方、自分自身で貰っている老齢基礎年金は
年額30万円。
しかし、遺族厚生年金は非課税所得なので、
これに対する税金をこの母親が払う必要はありません。
老齢基礎年金の分も120万円以下なので所得ゼロ。
では、この母親は扶養親族になるのでしょうか?
そして・・・
ヒカゼイショトクってどいういう位置づけなんでしょう?
実は、非課税所得は税務上そもそも所得に計上されません。
最初から無かったものとして扱われます。
なので、最初に書いたおさらいにゼロ段階として
以下の項目が追加されます。
-----------------------------------
0.非課税所得は以降の計算に含めない。
-----------------------------------
という訳で、遺族厚生年金を200万円貰っていても
他の条件さえ整っていれば扶養親族になるし
扶養控除の対象にもなります。
計算以前の話なので、非課税所得の規定は
所得税法以外にもいくつかの法律で定義されています。
所得税法で言うと第9条。
その他には国民年金法、厚生年金法、国民健康保険法、
健康保険法、その他の法律で規定されています。
逆に言うと、これらの法律を根拠に支給される収入は
非課税である可能性が高い訳です。
特に国民健康保険法、健康保険法で支給される
収入については全額非課税です。
支給の趣旨からして当然ですよね。
これらは、税務を生業としている人の間では常識。
即答レベルの話です。
ただ、あまりにも当然過ぎて素人向けの説明が
極めて少ないように感じたので
こんな記事を書いてみました。
学びの冒険者 原口直敏