これまで「健康に良い」ともてはやされてきた健康食品を摂取した結果、死者まで出してしまった今回の紅麹問題。

 問題が発覚したのは、小林製薬が3月に行った記者会見で、紅麹商品を摂取した消費者の中に腎疾患などが出ていると公表したことでした。

 

 紅麹とは、穀類を紅麹菌で発酵させたもので、昔から発酵食品などに利用されてきました。しかし紅麹菌の中には、シトリニンというカビ毒を生成し、腎疾患を引き起こす株があり、ヨーロッパでは過去に健康被害が出たため、現在は規制対象となっています。

小林製薬は、シトリニンを生成する菌を使用していないと述べていますが、その後の調査で、同社の工場から有毒物質を生む青カビが検出されたことが明らかになりました。

 

 

 実は、日本ではサプリメントに関する法的定義付けがありません。簡単にいうと、サプリとは食品です。

 サプリを含め、健康食品には、保健機能食品制度があります。栄養食品等の機能に関する表示についてのルールを定めたものです。

 

 現在、健康機能食品には3種類あります。特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の3つです。

 

 特定保健用食品とは、消費者庁長官が許可した食品で、通常は「トクホ」の名前で呼ばれています。申請し、審査に通れば、その食品の摂取によって期待できる機能を記載することができます。

 

 栄養機能食品とは、1日に必要なビタミン、ミネラルなどの不足分を補うことを目的とした食品のこと。1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が、国が定めた基準を満たし、かつ決められた表示法を守っている食品に対して、「栄養機能食品」と記載することができます。

 届出等は必要なく、製造業者が自社の責任において表示します。

 

 機能性表示食品とは、事業者の責任において、安全性と科学的根拠に基づいた効能を記載した食品のこと。「お腹の調子を整えます」など、食品の機能性を表示することができ、生鮮食品なども対象になります。

 届出が必要ですが、個別認可を受けたものではありません。

 

 問題の紅麹は、この機能性表示食品でした。つまり届出を出しただけで、公的機関などの検査を受けたものではないわけです。

 

 2015年に後発でスタートした機能性表示食品は、当初300億円だった市場規模が、20年にはトクホを抜き、23年には6865億円(推計)に達したと見られています。

 反対に、トクホの市場規模は、2015年に3700億円だったのが、23年には2600億円まで縮小しています。

 

 認可が必要なトクホでも問題を抱えているのに、さらに緩い基準の機能性表示食品を制度化した関係省庁。

 紅麹問題で、消費者はお金を失うばかりでなく、健康まで失うという、最悪の結末になりました。こうしたリスクがある商品を野に放った政府の責任は、軽くないと思います。

 

 老後の資産設計と同じく、健康面においても、私たちは政府の言いなりになることを避け、自ら賢く選択していかないといけない時代に入ったと言えるのではないでしょうか。

 

俣野成敏

 

SIRTUIN CLINIC

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《参考文献》

日経新聞Web版:2024年3月26日、28日、29日、デイリー新潮:2024年5月10日他