副業で事業を始めようと思った時に、多くの方が迷うのが「個人事業主として開業届を出すか?」「それとも、法人を立ち上げて会社を興すべきか?」という問いではないでしょうか。

 この問いの答えは、その人がどのような事業をやろうとしているのか、または今までの経験、置かれている状況などによっても変わります。

 

 答えを述べる前に、まずは副業を始める際、「上手くいく事業とはどのようなものか?」というポイントを述べておきましょう。それは、以下の3つです。

 

1、なるべく小資本で始める

2、個人事業主である間は、原則として借り入れはしない

3、独立を意識しつつも、事業が軌道に乗るまでは会社を辞めない

 

 事業を軌道に乗せるコツとは、「小さく始めて大きく育てる」こと。やってみてダメでも軌道修正ができるよう、最初のうちは特に意識したほうがいいでしょう。

 

 実はサラリーマンであっても、個人事業主と法人の、どちらも設立は可能です。今では副業を禁止している企業も少なくなっているとはいえ、もし、会社に副業していることを知られたくない場合は、家族を代表にして法人を立てるという方法も考えられます。

 

 では、冒頭の問いに対する答えを述べると、ほとんどの人は、個人事業主からスタートしたほうが有利になることが多いでしょう。サラリーマンとの掛け持ちをしている間は、特にそうです。

 私が、個人事業主から始めることをお勧めする一番の理由は、サラリーマン所得との“損益通算”ができることです。

 

 損益通算とは、簡単に言うと、税法上、決められた4つの所得によって生じた損失を、一定の順序に従って各種所得金額から控除できる、という制度のこと。

 もともと税法上では、所得を10に分けていますが、そのうちの4つの所得、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」で出た赤字は、他の所得との相殺が可能です。

 

 ただし、損益通算を認めてもらうためには、2つの条件があります。

 

1、税務署に副業を事業として認められること

2、個人事業主であること(法人でないこと)

 

 1に関しては、現在、「帳簿(複式簿記)の記帳・保存」「本業収入の10%以上の副業収入があること」「赤字が3年以上続いていないこと(少なくとも改善の努力をしていること)」の3つをクリアしている必要があります。

 

 2に関して、法人を設立してしまえば、サラリーマン所得との損益通算はできなくなります。サラリーマンは雇われている立場ですが、法人を設立すれば、あなたがその法人の責任者になるからです。

 

 サラリーマンで副業を始める人が増加するに従い、副業を取り巻く税金のルールも明確化してきています。かつては副業収入が1000万円を超えることが目安の1つとされていましたが、現在は上記の通り、黒字が3年以上続いた時が、法人を検討する目安になると考えてもいいかもしれません。

 

俣野成敏


 

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