最近、投資の世界では、現物資産に注目が集まっています。

 

 現物資産の代表といえば“金”ですが、世界3大投資家の1人とされるウォーレン・バフェット氏は、金投資に否定的なことで有名です。氏は、以前このような言葉を述べています。

 

「あなたが金を1オンス買ったとして、100年たっても1オンスのままです」

 

(『カリスマ投資家の教え』川上穣著 日経ビジネス人文庫)

 

 同書によれば、バフェット氏は金に嫌悪感に近い感情を抱いていた、とあります。「金は、それ自体は何も富を生み出さないから」だと言うのです。

 

 たとえば株式投資などの場合、投資先の企業がよいサービスを開発することで、ユーザーに価値を提供でき、株価も上がる可能性があります。

 それに対して、金は「有事の金」と言われる通り、社会に不安定要素が多くなってくると、価格が上がる傾向があります。

 

 もともと、現代社会で使われているお金には、ほとんど価値がありません。万一、国が混乱するような事態に陥った場合、自分の資産がただの紙切れになってしまう可能性もあります。

 それに備えようという人々の防衛本能が、“有事の金”に走らせるのでしょう。

 

 元来、投資を行う方法には、大きく分けて2つあります。

 1つ目は、「成長しているものに投資をする」こと。2つ目は、「希少性のあるものに投資をする」ことです。

 

 金投資の基本は、稀少性が高まるにつれて価格が上がっていくことです。私たち一般人が金投資を検討するのも、この値上がり益を期待してのことでしょう。

 けれども、金投資の真の価値はそこにあるのではありません。金は、「100年たっても1オンスが1オンスのままである」ことにこそ価値があるのです。

 

・金は金融資産と違い、持っているだけでは増えない

・その代わり、価値が減りにくい

・世界的にどこへ行っても価値がほぼ一定している

 

 金は「増やすこと」ではなく、「減らさないこと」が、投資をする主な目的です。ですから、趣味で集めている人や愛好家を除くと、金投資はあまり一般向けとは言えません。金は、“攻める”よりも“守り”が主体の投資法なのです。

 

 実は、金を毛嫌いしていると言われてきたバフェット氏が一時期、「金投資を始めた」とネットで話題になったことがあります。

 2020年8月、バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが、カナダの大手鉱山採掘会社のバリック・ゴールド株を取得していることが明らかになったのです(金投資と言っても、鉱山会社への投資です)。

 

 これによって、他の金鉱株も一斉に値上がりしたそうですが、バフェット氏自身は、数ヶ月後には全て売却しています。

 バフェット氏が鉱山株を買ったのは、コロナという非常時だったからなのか、金の値上がりを見越した購入だったのかはわかりませんが、時には自分の常識を疑うということも、必要なのかもしれません。

 

俣野成敏


 

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《参考文献》

PRESIDENT Online:2020年8月20日、トウシル:2022年8月23日、他