IT化に関して、これまで遅れていると言われてきた日本ですが、最近はChat GPTが流行ったり、自動配送用ロボットが街を走り始めたりするなど、いよいよ社会の変化が顕著になってきているように感じます。

 

 ITは、私たちの生活を便利にしてくれる一方、心配されるのが「人間の仕事の多くがAIなどに代替えされる」ようになることです。今、この文章をお読みの方の中にも「いずれ自分の仕事はなくなるのではないだろうか…」と不安を抱いている人もいるでしょう。

 そうなった時に、果たしてどれくらいの人があなたを助けてくれるでしょうか。

 

 いざという時に助けてくれる人のことを、世間では“人脈”と呼んだりします。

 でも、よく考えてみれば、自分が困った時に助けてくれる人なんて、そんな都合の良い話があるのでしょうか。

 そもそも、人脈とは何なのか。人脈という言葉の真の意味を理解する上で、参考になる事例をお話ししたいと思います。

 

 私の知り合いの、ある経営者は「相手が感じた価値に対して、自分はいつも若干、目減りした額を受け取るようにしている」と言います。「相手に得をさせていれば、人間関係は絶対に切れない」とも言います。

 

 知り合いは、業界では名前を知られていて、しばしば「講演会に来て話をして欲しい」といった依頼が舞い込むものの、ほとんど受けていないそうです。時には、かなりの金額を提示されることもあるそうですが、「もらう額以上の価値を出せるかどうか分からないから受けない。相手に損をさせるかもしれないから」というのです。

 

 ビジネスをする上で、「相手に得をさせる」という考え方は、非常に重要です。要するに、自分が得をしたいと思ったら、先に相手を得させる必要がある、ということです。

 

 その知り合いは、何社か社外取締役も引き受けているのですが、報酬は一切、もらっていないと言います。一方、社外取締役を引き受けてもらっている会社の社長は、知り合いに対してすごく感謝をしていて、「何かこの恩を返す機会はないか」と、常に気にかけてくれているそうです。

 この会社の社長こそが、知り合いにとっての人脈です。つまり、人脈とは自分に何かをしてくれる人のことではなく、自分が何かをしてあげられる人のことなのです。

 

 当然ながら、自分が何かをしてあげられる相手は限られています。

 相手が何を求めていて、それに対して自分に何ができるのかがわかっていなければ、貢献などできませんから、自分が貢献できる相手とは今、あなたの知り合いの中にいる、ということになります。

 たとえ、今のあなたに人脈と呼べるような人が1人もいなかったとしても、やろうと思えば、今この時から、人脈づくりを開始することができるのです。

 

 ただし、自分が貢献すべき相手とは、こちらの貢献を理解してくれる人でなければなりません。中には、意味もわからず、ただ「この人、良い人だな」くらいにしか思わない人もいますので、ご注意ください。

 つまり、貢献する相手は選ばなければならないということです。

 

俣野成敏


 

★本日のお話はここから↓

『転職・再就職1年目の働き方』

https://www.amazon.co.jp/dp/4839974810/