最近、1コイン1000万円を突破したビットコイン。この1月には、アメリカでビットコインETF(現物)が承認されるなど、ますます市場が盛り上がりを見せています。

 

 以前、ネットを騒がせた「副業300万円問題」を経て、所定の条件をクリアすれば、副業を事業所得として認める見解が国税庁から発表されたのが2022年のこと。その後、それに合わせる形で条件を満たした場合に限り、暗号資産も一応、事業所得として認められることとなりました。

 

 とはいえ、今でも、国税が基本的に暗号資産取引を雑所得として扱う姿勢に変わりはありません。

 令和4年12月22日にQ &Aの形で公開された「暗号資産に関する税務上の取り扱いについて(情報)」の中で、暗号資産を事業所得として区分する場合として挙げた条件が、以下の2点です。

 

1、その年の暗号資産に係る収入金額が300万円を超える場合

2、暗号資産に係る帳簿書類の保存がある場合

 

※もともと事業者が事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際に暗号資産で決済した場合等も、その暗号資産は事業所得に区分されます。

 

 ご覧のように、「たとえ暗号資産取引の収入合計が300万円を超えても、帳簿がない場合は雑所得に区分される」というのが彼らの回答です。

 

 この条件のポイントは、暗号資産が事業所得と判断される300万円の枠が“収益”ではなく“収入”とある点にあります。要は、たとえ売却損が1億円出たとしても、暗号資産の売却価格(=売上=収入)が300万円以上あればいい、ということになります。

 

 実は、副業300万円問題が発生する前から、国税庁は暗号資産を事業所得として認める場合についての条件も公表していました(「暗号資産に関する税務上の取り扱いについて(情報)」(令和3年12月22日等))。

 しかし、その内容が「暗号資産取引による収入で生計を立てていることが客観的に明らかであること」という、非常に曖昧なものであったことから、立証は困難であるとして、暗号資産は雑所得に区分されるのが一般的だと考えられてきました。

 それが令和4年版で、より一歩踏み込んだ内容に改められたわけです。

 

 実際に今後、暗号資産取引を事業所得として認めてもらいやすくなったのかというと、現実的にはかなり難しいでしょう。暗号資産の複雑な取引の全てを記帳するのは困難を伴う上に、事業として申告すれば、「専用の設備を備えているか」「専門的知識や経験を有しているか」等々、事業としての実態を問われることになります。

 

 とはいえ、「暗号資産で生計を立てているかどうか」といったあやふやな基準だった頃と比べれば、一歩前進したと言えるのは確かでしょう。今後、暗号資産取引で損益通算を使える可能性が出てきたのは間違いありません。

 暗号資産業界自体も日々、進化を続けていますから、ぜひこれからの改正に期待したいところです。

 

俣野成敏


 

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