通常、投資とは資金力が大きいほうが有利なのは事実です。

 たとえば、「年利10%」と聞くと高リターン率ですが、その商品に200万円を投じた場合、リターンは20万円にしかなりません。しかし、同じ銘柄に2000万円投じれば、200万円が得られます。

 

 ところが資金が大き過ぎるのも、実は問題になります。世界3大投資家の一人と言われるウォーレン・バフェット氏も、以前、このような発言をしています。

 

「分厚いサイフは、より高いリターンの妨げになる」

(『カリスマ投資家の教え』川上穣著 日経ビジネス人文庫)

 

 ここで言っている“分厚いサイフ”とは、「資金力が大きい」ことのたとえです。

 どうして、資金が大きいとリターンの妨げになるのでしょうか。

 

 そもそも、生まれたてのベンチャー企業と上場企業のどちらが高い利益率を狙いやすいのかというと、ベンチャー企業です。一般に資金が小さいほうが、利益率は高くなります。

 一方、金額が増えやすいのは大企業です。金額が大きくなると、お金が増えやすくなる代わりに率を上げにくくなる、というわけです。

 

 現在、バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、世界時価総額ランキングでトップ10に入る大企業です。会社が大きくなれば、関係者もその分多くなり、新しいことに挑戦しづらくなります。

 規模が大きくなることによる弊害は他にもあり、たとえば「投資先そのものが少なくなっていく」とことが挙げられます。規模が大きければ、その分、市場に与えるインパクトも大きくなるため、身動きがしづらくなるのです。

 

 2019年、バフェット氏はネット通販大手・Amazonの株式を取得したことを、初めて明かしました。

 市場では、「割高なアマゾン株をなぜ今になって」購入するのかと、いろいろな憶測が飛び交いました。しかしバフェット氏にとって、Amazonのような大企業であれば、資金が入れやすかったのは確かでしょう。

 

 最近のバフェット氏は、日本の商社株を購入し、保有比率も上げてきています。氏が投資をしている5大商社の時価総額は、2023年11月までの9ヶ月間で9兆円も膨らみました。

 

 なぜ、バフェット氏が日本の商社に目をつけたのか、さまざまな説が語られていますが、今や巨大なコングロマリット(複合企業)へと成長したバークシャー・ハサウェイが、彼らとの協業も視野に入れている、という話もあります。

 結局、バークシャーが巨大になり過ぎた現在は、なかなか資金の入れ先が見つからず、2023年の自社株買いは約92億ドルに達し、手元資金も2023年末で1676億4100万ドルにまで膨らんでいます。

 

 かつて、バフェット氏は身内だけの小さなパートナーシップから事業を始め、投資への深い知識をフル活用することで、驚異的なリターンを上げてきました。

 

 大事なのは、現状に基づいた戦略を採ることです。過去の成功体験にこだわっていては、状況が変化した際に対処できなくなってしまいます。

 今でも変化を続けているバフェット氏から、私たちが学ぶべき点は非常に多いと言えるのではないでしょうか。

 

俣野成敏


 

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https://www.mag2.com/m/0001673621

 

 

《参考文献》

日経新聞Web版:2024年2月25日、Bloomberg:2024年2月25日、東洋経済ONLINE:2023年1月14日、他