近年、サプリ業界で、長寿遺伝子の活性化に関与しているとされるNMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)が、注目を集めています。

 NMNは、体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質に変換されます。このNADが、長寿遺伝子とも言われるサーチュイン遺伝子が生成するタンパク質(サーチュイン蛋白)を動かすためです。

 

 サーチュインが必要としているNADは、もともと体内に存在している物質ですが、様々な理由で加齢とともに失われていきます。最近では、NADの減少が老化を促進させ、様々な病気につながっているのではないかと考えられるようになってきました。

 

 だったら、人々が「不足しているNADを補ってやれば、老化を止められるのではないか?」と考えるのも当然でしょう。それがブームに拍車をかける一因にもなっているわけですが、ことはそう単純ではありません。

 

 そもそも、私たちの身体は日々、様々なストレスにさらされています。細菌やウイルス以外にも、紫外線や放射線などの環境要因、公害や汚染された食べ物などの人為的要因、喫煙や暴飲暴食など身体に悪い生活習慣、等々。

 

 また人間の身体は、呼吸によって取り込んだ酸素を活用し、エネルギーを作り出しています。しかし、もともと酸素は生物にとっては毒物であり、取り込むと大量の活性酸素を生み出します。

 活性酸素は、私たちの身体を酸化させ、動脈硬化やがん、糖尿病などといった病気を引き起こす要因になっていると考えられるのです。

 

 こうした内と外からの絶え間ない攻撃によって、体内の細胞やDNAが損傷を受け続けると、やがて遺伝子が変化し、正常なタンパク質を生成できなくなります。DNAのコピーミスや、修復しきれない細胞などが体内に蓄積されると、やがて細胞が正常な機能を果たせなくなり、機能不全、つまり老化へと至るのです。

 

 いくらNADだけを補充していても、日々、受けているストレスや活性酸素への対処で、サーチュイン蛋白が手一杯になっていては、十分な効果を発揮できません。その場合は、活性酸素を除去する水素商品などと併用することをお勧めいたします。

 

 一番の問題は、NMNブームによって商品が氾濫し過ぎていて、消費者は「どれを買えばいいのかわからない」状態に陥っていることです。NMNに限らず、きちんと成分が入っている商品を選択できる選別眼を持つことが非常に重要なのは、言うまでもありません。

 

 消費者の対処法としては、まずは商品の裏を見て、どのような成分が入っているのか、原材料名のところをしっかりと確認することです。通常、成分が多い順に表記されていますから、最初に果糖ブドウ糖液糖などが明記されているような商品は、「そもそもサプリと言えるのか?」を疑問視しなければなりません。

 

 次に、パンフレットをよく読んだり、その会社のHPを見たりして、信頼できる会社なのかどうかを確認することです。できればクリニック併設など、実体があるところのほうがいいかもしれません。

 また、ネット通販で安く買えるような商品は、避けたほうが無難でしょう。

 

俣野成敏

 

SIRTUIN CLINIC

https://www.sirtuin-clinic.com/


 

《参考文献》

『LIFE SPAN(ライフスパン)老いなき世界』(デビッド・A・シンクレア他著、2020年、東洋経済新報社)、『なぜ水素で細胞から若返るのか 抗酸化作用とアンチエイジング』(辻直樹著、2016年、PHP研究所)、他