最近、私は医師との交友関係も増えてきたのですが、彼らと話をしていると、「医師もやはりビジネスパーソンだな」と感じることが度々あります。

 

 医師は立場上、時には患者を前に、かなり厳しいお話をしなければならないこともあります。そのような時、どういった点に気をつけているのかと、知り合いの医師に聞いてみたところ、「全てマニュアル化されている」のだと言います。

 

 ルール化されているとはいえ、実際に患者にどのように伝えるのかは、医師の采配に任されています。知り合いの医師は、「患者の思考の枠が広がるよう、意識しながら声がけするようにしている」と話していました。

 

 それは、ビジネス用語でいう「具体と抽象(抽象度の上げ下げ)」の考え方にも通じていると思います。

 

 具体と抽象は、例えばいくつかある選択肢を検討する時などにも使われます。目の前の選択肢を比較する際、ミクロ的には細かい違いがあっても、マクロ的に視点を広げてみると、その違いは、実は大同小異に過ぎないと気づくことがあります。

 この方法は、「もっと他の手立てはないのか?」と視点を切り替える際などに有効です。

 

 私は仕事柄、お金に関する相談をしばしば受けるのですが、時々「NISAは普通の投資信託よりもお得ですか?」といった質問をしてくる人がいます。

 

 確かに、NISAは国が推奨している金融商品ですし、税金面での優遇もあります。1個1個の商品を見れば、「こっちのほうが利率が良い」「あっちには○○企業の株も入っている」といった違いはあるでしょう。

 とはいえ、それらは「日本で販売されている商品」という意味では同じですから、基本はどれを買っても大差ない、ということがわかるわけです。

 

 具体と抽象の上げ下げがうまくコントロールできる人は、問題解決能力も高い傾向にあります。応用力がある、と言い換えても良いかもしれません。

 

 通常、抽象度の上げ下げができるようになるのは、自分の中の情報量が爆発した時だと言われています。貯まった情報を脳が処理し、そこに自身の経験などが加わることによって、「これとこれは、実は同じものだ」といった気づきを得ます。

 

 知り合いの医師は、「意識的・無意識的に関わらず、医師は皆、“視点の上げ下げ”を、患者との会話の中で使っていると思う」と話していました。

 彼に、《具体と抽象を会話に取り入れる際のコツ》を聞いてみたところ、以下の方法を教えてくれました。

 

1、先にミクロの視点で問題を追求する

2、核心に迫る質問をする

 

 例えば、患者がどこかが痛いと言ったら、最初は問診で「いつから痛いのか」「どの辺が痛いのか」「いつ痛くなるのか」などと細かく聞きます。

 まずは原因を特定し、その後「それによって何に困っていますか?」といった、今までとは少し視点をずらした質問をします。すると、相手の意識の奥に潜んでいた本音がチラッと顔を出すのだそうです。

 

 よかったら、部下の本音を聞き出す時や、顧客との会話などに、ぜひ使ってみていただけたらと思います。

 

俣野成敏


 

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