ビジネスを行う上で、人は多くの場合、「リスクをいかに小さくするか?」と考えがちです。実際は、リスクとチャンスは表裏一体のものであるということに、気づいている人は多くありません。

 

 マネジメントの父と呼ばれるP・F・ドラッカー博士は、かつて書籍の中でこのように述べています。

 

「負わないことによるリスクの典型は、革新的機会に伴うものである。その古典的な例が、第二次世界大戦直後のGEの原子力発電への進出である。(中略)GEは、発電機の主メーカーとしては、万一原理力発電が実用化されたとき、自社が取り残されるなどというリスクは負うわけにはいかないと決断した」

(『創造する経営者』P・F・ドラッカー著、1995年、ダイヤモンド社)

 

「リスクは危険。避けるべきもの」と考えている人が多いのが実情ですが、もともと、リスクとは不確実性という意味です。つまり、成功するかどうかわからないことを言います。

 

 ドラッカー博士は、リスクは主に4種類あるとして、以下の4つを挙げています。

 

1、負うべきリスク(事業の本質に付随するリスク)

2、負えるリスク

3、負えないリスク

4、負わないことによるリスク

 

 1は、ビジネスを行う際、ついて回るリスクのこと。たいていのビジネスは、始めるに当たって先行投資が必要になります。

 2は、吸収できるリスクのこと。たとえ一時的に赤字が出たとしても、倒産しない限り、ビジネスは続けられます。

 3は、倒産するようなリスクのこと。このようなリスクは、チャレンジとはいわず、博打と同じです。

 4が、ドラッカー博士が先の名言で述べている内容に当たります。

 

 1から3のリスクに関しては、すでに多くの人が意識していることと思います。しかし4に関しては、ほとんどの人が見過ごしているのではないでしょうか。要は、「負わないことも、またリスク」なのです。

 

 大半の人は、リスクを負わないことで、危険を避けられたと考えます。しかし、その選択がどれだけのチャンスロスを起こしているのか?という点に注意しなければなりません。

 名言に事例として挙げられているGEが、長年、名を連ねていたダウ工業株30種平均の構成銘柄から外れたのは、2018年のこと。世界的な企業も安穏とはしていられない、ということです。

 

 もし、ここまで読んで「自分は今までリスクを避けてばかりいたな」と感じた人がいるのであれば、以後は、リスクの後ろに隠れているチャンスにも目を向けてみてはいかがでしょうか。特に、新しいことを始める際には、この視点が不可欠です。

 

「チャレンジすることで、どんなチャンスが待っているのか?」と考えることで、今まで見えていなかったモノも見えてくるようになるでしょう。リスクを天秤にかけるのは、チャンスをチャンスと捉えられるようになってからでも遅くはありません。

 

俣野成敏


 

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