副業や個人事業主にとっては逆風ともいうべき、消費税のインボイス制度(適格請求書)が始まりました。事前に予想されていたことではありますが、今、現場はかなり混乱している模様です。

 

 私の知り合いの中に、ネットオークションで中古品の代理出品をしている人がいます。この方のように、特に仕入れが発生するビジネスの場合、消費税の扱いによって利益が大きく変わってきます。

 ご本人曰く、「税理士や税務署の職員でさえ見解が分かれている有様で、一時的にサービスを中止しています」とのことでした。

 

 これまで、年間売り上げが1000万円以下の事業者に関しては、免税事業者として、消費税の納税が免除されてきました。しかし今後は、課税事業者が発行したインボイス番号が付与された請求書しか、税務署で認められなくなります。

 免税事業者がインボイス番号を取得するためには、課税事業者になる必要があります。そのためには、消費税を納めなければなりません。

 免税事業者と取引している企業は、以後、取引の際に発生する消費税を経費として計上できなくなります。世間では、「この機に免税事業者切りが始まるのではないか」と危惧されてきました。

 

 インボイス制度の導入に当たっては、今後6年間の経過措置が設けられています。たとえ取引相手が免税事業者であっても、取引企業は、最初の3年間は仕入れ税額の80%を、次の3年間は50%を控除することが可能です。

 

インボイス制度実施に当たっての経過措置について

https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/invoice/invoice15b.pdf

 

 しかし7年目からは、何の控除もなくなりますので、免税事業者は、それまでに何らかの対策を取る必要があります。

 

 今、この文章をお読みの方の中には、すでに副業を始めている人も多いかと思います。もし、免税事業者のままであっても、当面、仕事が切られるようなことがないのであれば、最初の3年間は、免税事業者のまま様子を見る、というのも一つの方法です。

 しかし万一、免税事業者のままでは仕事がなくなってしまうようであれば、課税事業者になることを考えなければなりません。その場合、国がいろいろな支援策を用意していますので、そちらを活用するといいでしょう。

 

インボイス制度支援措置

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/invoice/index.html

 

 インボイス制度は、世界的な電子化の流れの中の一環ですから、日本でも、最終的にはこの制度が定着していくと思われます。ですから免税事業者は、経過措置の間に、消費税を支払っても存続できるよう、ビジネスを組み直すことが重要です。

 

「ビジネスを組み直す」方法としては、たとえば事業を多角化する、といったことが考えられます。

 個人的には、取引を切られないビジネスをしていくことが大事だと考えています。「替えのきかない人材になる」というのは、私が独立した当初からお伝えしてきたことでもあります。

 

 今、副業をされている方は、ぜひこのピンチを逆手に取って、さらなる高みを目指していただきたいと思います。

 

俣野成敏


 

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