こんにちは。俣野成敏(またのなるとし)です。
すでにギグワーカーが定着している欧米では、「配達員は労働者」という見方が一般化しつつあるものの、法整備は順調には進んでいません。
欧米ともに、ギグワーカーを保護しようとする勢力と、それを阻止しようとする勢力が拮抗しており、最終法案が固まるまでには、二転三転する可能性があります。
一方、日本でも2022年11月末に、東京都労働委員会が、フードデリバリーの運営会社であるウーバージャパンなどに対し、配達員らの労働組合との団体交渉に応じるよう命令を下しました。
委員会は、組合側の訴えを認めて、「配達員は労働組合法上の労働者に当たる」との判断を示したわけですが、それに対してウーバー側は、翌月、中央労働委員会に再審査を申し立てました。
今後、裁判になれば、最終決着するまで数年はかかる見通しです。
ウーバー、労働委員会の判断に再審査申し立て
https://www.tokyo-np.co.jp/article/218799
ウーバー側は、東京都労働委員会が「パートナー(配達員)方の独立した働き方を考慮していない」とコメント。
実際、委員会の決定後、ウーバーイーツユニオンの組合員や支援者たちは歓迎する意を表明した一方、一部の配達員の間で「今後は働き方の自由度に制限がかかるのではないか」と危惧する声が挙がっていたのも事実です。
ギグワーカーは、既存の統計では実態が掴みにくく、2022年に一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会による調査結果が発表されたりするなど、最近になって、ようやく実像が見えてきました。
見えてきたギグワーカーの実態
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD063GT0W2A400C2000000/
調査結果によると、ギグワークに従事している人の平均稼動時間や収入、年齢などには一定の傾向がなく、個々人の都合に合わせて自由に働く時間や場所を選択している様子が伺えます。
明らかになったのは、配達員をしている人たちが、必ずしも労働法上の保護を求めている人ばかりではなかったことでした。
特に今後、問題になりそうなのが税法上の扱いです。
2022年10月、国税庁は副業を事業所得として認める基準を「本業年収の10%以上の売り上げがあれば、基本的に事業として認める」という通達を発表しました。
フードデリバリーの配達員は、従来は個人事業主という扱いでした。その立場を活かして、本業で得た給与所得と副業の事業所得を損益通算することが可能でした。
しかし今後、配達員は労働者という扱いになれば、本業との損益通算ができなくなってしまう可能性があるのです。
果たして、ギグワーカーは個人事業主なのか、それとも従業員なのか。依然として答えは出ていません。
日本を含めた各国で、これだけ意見が紛糾しているのは、ギグワーカーが、これまでの働き方の枠に収まらないからなのでしょう。
ギグワークは新しい業界だけに、今後も紆余曲折があるのは避けられません。いずれにせよ、現場の人たちが働きやすい環境になるまでには、もうしばらく時間がかかるようです。
ありがとうございました。
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『俣野成敏の「サラリーマンを『副業』にしよう」実践編』
https://www.mag2.com/m/0001673621
《参考文献》
朝日新聞デジタル:2022年1月29日、JERTOビジネス短信(米国):2022年10月13日、日経新聞Web版:2022年11月25日、東洋経済ONLINE:2023年1月1日、毎日新聞デジタル:2023年6月11日、他