こんにちは。俣野成敏(またのなるとし)です。

 

 令和5年3月に可決・成立した所得税法等の一部を改正する法律によって、超富裕層に対する課税が強化されました。いわゆる“1億円の壁”を崩す是正策の第一弾で、年収30億円を超えるような超富裕層を対象に、基準所得税額を超えた分に対して、22.5%の税率が課されます。

 

 1億円の壁というのは、申告納税者の負担率を比べた場合、年間所得が1億円を超える人のほうが、割合的に税率が低くなっている問題のことを指します。

 

高額所得者の税優遇「1億円の壁」が課題

https://www.sankei.com/article/20221004-XYGI6QVSONKH7OO6V2MPJYEG74/

 

 現在、給与所得は所得に応じて税率が変わる累進課税方式なのに対して、金融所得への課税は20.315%と一律です。税率20%は「年収330万円の人と同じ税率だから不公平だ」というわけです。

 

 労働所得と金融所得を比べた場合、資産を多く所有している人ほど、金融所得の割合が高くなるのが一般的です。これは経済理論的にも仕方がないと思いますが、金融所得に対する課税を強化しようとする動きは以前からありました。

 今回は見送られたとはいえ、借金が増え続けている日本では、いずれまた金融所得増税の話は出てくるでしょう。

 

 もともと「お金持ちから税金を取る」というのは、政治家にとっては大義名分を得やすいスローガンですが、実際は大きなリスクを伴います。

 特に金融所得への課税強化は、政府自身が今、「貯蓄から投資へ」という流れをつくり出そうとしている流れに逆行しています。

 

 金融所得への増税は、人々の投資意欲を減退させたり、起業家の排出を抑制したり、優秀な人材の海外流出を招く可能性もあります。

 安易な増税は、結果的により大きな損失につながることが危惧されるのです。

 

 実のところ、政府とて、そうしたデメリットはわかっているはずです。それにも関わらず、増税を推し進めたい理由とは何でしょうか。

 

 たとえば資産所得倍増プランの一環として、NISAの拡充や恒久化が決定しました。

 仮に今後、金融所得への税率が引き上げられた場合、税制優遇が行われているNISAやiDecoの魅力が増すことになるのは確かでしょう。

 

 また日銀が長年、金融緩和政策を行ない、マイナス金利を適用していることから、金融機関の経営が苦しくなっています。

 もしかするとNISAの拡充は、金融機関に売上を増やす機会を提供するための国策なのかもしれません。

 

 金融所得に対する増税は、富裕層よりも、むしろ年金生活者など、低所得者層へのダメージのほうが大きくなる可能性もあります。

 

 実は、上場株式等の配当所得は、源泉徴収だと20%の分離課税だけですが、確定申告を行うと、申告分離課税か総合課税かを選べるようになります。総合課税を選択することで、5%から45%の累進課税となり、さらに配当控除もあります。

 

 もし、収入が多くない方で、配当所得などを得ている人は、確定申告をしたほうがいいでしょう。自分の場合はどうなのか、1度調べてみることをお勧めいたします。


 

 ありがとうございました。


 

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『俣野成敏の「サラリーマンを『副業』にしよう」実践編』

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